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『夏至(げし)』になると、夏の訪れを感じる人も多いでしょう。現在は派手なお祝いこそしないものの、夏至にまつわる風習や食べ物は全国各地に残っています。夏至らしい1日を過ごしたいなら、行事食を取り入れて旬の味を楽しんでみましょう。
夏至はいつで、どんな日?
現代では何気なく過ごす人も多い夏至ですが、古くは季節の移り変わりを知らせてくれる重要な日でした。今のような天気予報がなかった時代は、大切な農作物を育てる上で欠かせない存在だったとされています。
夏至っていつ?どんな意味がある?意味、由来、各国のイベントを解説
1年で最も昼が長い日
毎年6月21日ごろにある夏至は『日長きこと至る(きわまる)』という意味が込められた日です。その名の通り、1年で最も昼の時間が長くなる一方、夜の時間は短くなります。しかし、梅雨本番の時期とあって、冬よりも昼が短く感じることも少なくありません。
夏至は昼の太陽の高さが最も高くなる日でもあります。太陽の化身とされる『天照大神(あまてらすおおかみ)』という神が日本を最も長く照らしてくれる日だとされ、田植えをする目安としても役立てられてきました。
三重県伊勢市の二見興玉神社で行われる『夏至祭』は、日本で夏至に行われる祭事として有名です。
二十四節気の一つ
夏至は季節を表す『二十四節気(にじゅうしせっき)』の一つです。春夏秋冬からなる四季をそれぞれ六つに分け『節(せつ)』または『節気(せっき)』と『気』が交互にやってきます。
季節の変化に気付かせてくれる目印にもなっていたことから、天候や生き物の様子を表す名前が付けられているのも特徴です。
たとえば3月5日ごろにある『啓蟄(けいちつ)』は、開くという意味を持つ『啓』と、閉じこもることを指す『蟄』を合わせて、土の中で冬ごもりしていた虫や動物たちが外に出てくる時期を表しています。
夏至から11日目は半夏生
夏至から数えて11日目の7月2日~7月7日ごろは『半夏生(はんげしょう)』といって、農作業の重要な目安とされてきた歴史があります。半夏生に入る前に田植えを終わらせないと、秋の収穫量が減ると信じられてきたのです。
半夏生ならではの風習も各地で確認されています。一つが、田植えが終わると水田や神棚にお供え物をして、田の神を送る『さなぶり・さのぼり』という行事です。また、近畿地方の一部地域では、収穫した小麦と餅米で作った『半夏生餅』をさなぶり餅とも呼び、田の神に供える風習があります。
夏至には行事食を食べよう
日本に古くから伝わる『行事食』は味がおいしいだけでなく、願いや意味のこもった大切な料理です。今まで行事食に興味がなかった人も、家族の幸せを願って積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
行事食とはどんなもの?
行事食とは、季節のイベントやお祝いの日に食べる料理のことです。味を楽しむだけでなく、家族の幸せや健康を祈願するという意味合いもあります。
代表的な行事食といえば、正月に食べる『おせち料理』です。具材にもそれぞれ意味があり、新しい年への願いが込められています。栗きんとんは黄金色をしていることから「お金がたまるように」という願いを込めて、おせちの定番になっている具材です。
5月5日のこどもの日に食べる『かしわ餅』も、古くから伝わる行事食として親しまれています。新しい芽が出るまで古い葉が落ちない『かしわの木』のように、親から子、子から孫へと家族の命がつながっていくことを願って食べられてきました。
なぜ行事食を食べるの?
『旬』の食べ物を取り入れている場合が多いのも、行事食の特徴です。日本には『身土不二(しんどふじ)』といって、人間は土地とは切っても切れない関係にあるという考え方があります。昔の人はその土地でその季節に採れたもの食べて自然と調和し、家族の健康を祈願してきたのでしょう。
また、旬の食材を食べることにより、その時期の体が必要な栄養を取り込むことができるといわれています。
子どもへの『食育』としても、行事食はおすすめです。今の時代は多くの食べ物が1年を通して手に入るため、食事から季節を感じ取ることが少なくなっています。行事食を食べることは食べ物の旬を学ぶことにつながり、旬ならではのおいしさに気が付くきっかけにもなるでしょう。
夏至の食べ物といえば?
夏至に食べたいものといえば、夏との関わりが深い昔ながらの甘いお菓子や旬の野菜です。最寄りの和菓子店やスーパーに立ち寄って、夏本番間近の夏至にぴったりなメニューを考えてみてみましょう。
6月を意味する和菓子「水無月」
夏至といえば、蒸し暑さを感じ始める時期です。冷蔵庫がなかった時代は冷たいものを好きなときに食べることができなかったため、見た目などを工夫して涼しげな雰囲気を演出することがありました。
その代表的なお菓子が『水無月(みなづき)』です。氷をイメージした白色のういろうが三角形にカットされています。上には悪魔払いの意味を込めて、小豆がのっているのも特色です。暑い日も食べやすいことから、エネルギーを補給したいときにも重宝します。
おいしい夏野菜「冬瓜」
『冬瓜(とうがん)』は冬の瓜と書きますが、夏が旬の野菜です。同じ瓜でもキュウリより丸く、コロンとした形をしています。名前に冬が入っているのは「夏に収穫したものが冬までもつ」といわれるほど保存がきくからです。実際には冬までもちませんが、風通しのよい冷暗所に置いておけば2~3カ月は保存できます。
調理の際、皮を厚めにむくのがおいしく食べる秘訣です。冬瓜そのものには味があまりないことから、そぼろあんかけや含め煮など出汁のきいた料理に適しています。
旬のものを食べよう
夏至を迎えると、夏本番もいよいよ目前です。旬の夏野菜から力をもらって、暑い夏も元気に乗り切りましょう。
スーパーでも手に入れやすい夏野菜には、ゴーヤ・カボチャ・ナス・トマトなどが挙げられます。ゴーヤは暑さに強い野菜で、沖縄料理を代表する『ゴーヤチャンプルー』でも有名です。苦味が苦手なら、塩もみや下ゆですると食べやすくなります。
食欲がないときは、カボチャ・ナス・トマトを使った『夏野菜カレー』はいかがでしょうか。ジャガイモの代わりにカボチャを使うのがポイントです。牛肉ではなく鶏もも肉を使っても、おいしく食べられます。
関西では半夏生にタコを食べる風習がある
タコも古くから夏至に食べられてきた食材の一つです。タコは意外にも料理の幅が広く、簡単に作れるレシピも満載です。夏至には昔の人のようにタコ料理を食べて、英気を養ってもよいでしょう。
作物が根付くように願掛け
関西の一部の地域では、夏至にタコを食べる風習が残っています。一度吸い付いたら簡単には離れないタコの吸盤のごとく「田んぼに植えた苗の根がしっかり根付きますように」と願ったのが発端という説が有力です。
タコを使った料理といえば現在はたこ焼きが有名ですが、昔の人は夏至から半夏生にかけて『タコ飯』を食べていたとされています。タコ飯でパワーを付けて、田植え作業の疲れを癒やしていたのでしょう。
タコ飯は炊飯器でも簡単に作れます。炊飯器に米・ひと口大に切ったゆでダコ・調味料を入れたら水加減を調節して、あとは炊飯モードで炊くだけです。
夏至の時期はタコが旬
マダコの旬は6~7月で、夏至の時期に当てはまります。旬のマダコはとてもおいしく、割烹や寿司屋でもこぞって取り入れられています。自宅で手軽に調理して、旬の味を満喫してみましょう。
夏至は蒸し暑いことが多く、さっぱりしたものが食べたくなることも考えられます。そんなときはタコを使ったサラダがうってつけです。
まずは、食べやすい大きさにカットしたゆでダコ・水で戻したワカメ・レタスをお皿に盛りつけます。その上にポン酢・梅肉・白練りごまを混ぜた手作りドレッシングを回しかけたら完成です。
構成/編集部