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中古レコード売買サイトでマト1のレコードを爆買いした後日談

2020.05.17

主にイギリスから続々と送られてきたレコード。

 久しぶりに、マト1中古レコードを一挙に買ったエピソードは、3月15日アップの記事で書いた。それぞれの購入価格が目論見通りならお買い得のはずだが、果たして? 後日談をお伝えしたい。

 まず前提として、購入先は全てDiscogsという中古レコード売買サイトだ。世界中のセラーが出品し、世界中のバイヤーが購入する。オークションではなく、販売価格(送料別)が明示されているが、アイテムによっては値下げ交渉も可能だ。送料はイギリスからなら2000円くらい、アメリカからなら3〜5000円ほど。アメリカからは追跡や保障等、より安全度が高い送付方法になるほど高くなるようだ。1枚の送料が2枚なら2倍とはならないので、収集初期はセラーの他の出品アイテムも調べて、複数枚注文することが多々あった。

 出品数豊富なDiscogsながら、困る点が2つある。1つはジャケットとレコードの、コンディション評価だ。評価は一般には高いグレードから、M(ミント=未使用品)、EX(エクセレント)、VG(ヴェリ・グッド)、G(グッド)、F(フェア)となり、EXやVGには+(プラス)や-(マイナス)をつけて、より詳細に表すことが多い。NM(ニアミント)というグレードが使われることもある。

 VGは和訳すると“とても良い”だが、中古レコードの世界ではVGは“よくない”を意味し、僕は原則VG+(概ね良し、と僕は解釈)以上を買う。ただしリアル店で検盤=目視できるなら別だが、ネットで買うならVG+は避けてEX-以上を買いたいところだ。とはいえこれらの評価はセラーの主観なので、“見解の相違”に泣くことも時にはある。

 さてDiscogsの評価には、なぜかEXというグレードがない。M→NM→VG+→VGと下がっていく。NMなら相応によく、VGならまず買うに値しない。間がVG+となるので、評価の幅がかなり広いのだ。このあたりは既購入者によるセラーへの評価を考慮し、“えいや”と思い切るしかないのだが……。

 もう1つの困る点は、出品アイテムの画像がないことだ。セラーによっては商品説明欄に、リクエストされれば画像を送ると明記している。そうでなくても、買い手側から画像送付を要求するという手もあるが、やり取りは英語だし面倒だ。片や、やはり僕が中古レコードをよく買うオークションサイトeBayのセラーの多くは、かなりの数の画像をアップしている。レコードの盤面は画像を見ても良し悪しはまずわからないが、ジャケットならその状態を把握できる。以上の2点が、Discogsの負の面だ。

 では3月15日の記事で紹介した順に、その“お買い得ぶり”を検証しよう。まずはレッド・ツェッペリンの2枚組ライブ『永遠の詩』から。以下、冒頭と文末に—————が入る文章は3月15日の記事の抜粋だ。

—————ツェッペリンのスタジオ盤はすべてマト1を所有するが、この2枚組ライブのマト1は持っていない。リアル店でよく見かけ、価格も5000円ほどで、いつでも買えると思っていた。だがeBayに約17000円の出品がある。なんでこんなに高いの? と調べた。『永遠の詩』は2枚組なので4面あり、すべての面がマト1なら1枚目表裏、2枚目表裏の順に“1111”となるが、これは存在しないようだ。実際は“1112”“2332”“1321”等が、マト1とされる。“1112”は数字を合計すると5で、合計4がない以上一番小さい合計数となる。よって稀少とされ高いのだろうと、勝手に推測した。17000円でも買う気になったが、商品説明を読むとやや針飛びするとある。となれば躊躇し、他に“1112”はないかとサイトを探しまくる。だが出品数は多いものの、ない。しかし! “1113”で2400円という掘り出し物を見つけて購入! 状態も概ね良しと評されている。—————

『永遠の詩』に貼られた謎のステッカー。これが何で、何故に持ち主が貼ったのか、想像もつかない。

 抜粋のように、Discogsのセラーによる評価はジャケットもレコードもVG+(概ね良し)だ。しかしジャケットに、謎のステッカーが貼ってある。改めて商品説明を読むと、注文時には気づかなかったが、確かに“sticker on ps”とある(psの意味、辞書を調べても不明だったが、paper sleeveの略語か?)。ジャケットにステッカーが貼られていることはたまにあるが、それはそのレコードに関連したステッカーだ。イギリス人にとっては、“居眠りおじさん”と『永遠の詩』に関連があるのだろうか? さらには一目瞭然の汚れや折れもある。これでVG+は盛りすぎ、せいぜいVGだろう。

 レコードは指紋ベタベタでやはりVGと思ったが、後にレコード洗浄機で洗ったら綺麗になりVG+には納得。ノイズもあまりなく、音質はいい。これで2400円なら文句は言うまい。

 次はピンク・フロイドの『ザ・ウォール』。まずは、抜粋から。

—————こちらも2枚組、そして『永遠の詩』以上に、“2232”“3312”“2332”“2413”“2342”他、マト1とされるものが多い。価格は状態概ね良しレベルで約5000円からと、高くはない。そんな中からDiscogsで、“2312”という合計数が小さい盤7500円也を見つけて買おうとした。しかし約200枚ある出品盤の説明を読むと、多くに“NO STICKER”という文字がある。何のことかと調べると、“バンド名とアルバム名を描いた同梱のステッカーは紛失”という意味だとわかった。調べを進めると、『ザ・ウォール』は合計数が小さくステッカー付きとなると、3万円級に跳ね上がるようだ。そこで思い当たった。悪状態でも合計数大でもいいから、とにかくステッカー付きはないものか? あった! “2333”で4000円! ジャケットは相当傷んでいるようだが気にしない。この二つを合体すれば“2312”でステッカー付き、11500円で3万円級購入となる。—————

アルバム名とアーチスト名は、ジャケットに印刷されていると思い込んでいた。このステッカー、同梱ではなく発売時は表ジャケットに貼られていたようだ。

 7500円盤は『永遠の詩』と同じセラーで、評価も同じVG+/VG+だが、こちらは納得のVG+。ジャケットも音も問題ない。4000円盤はセラーがジャケットVG、レコードVG+と評価したように、ジャケットはかなり薄汚れている。手で触ると何故か土がついてくる。触って手につくなら拭けば落ちるのではと軽く拭くと、案の定落ちる。そこでどうせステッカー目当てに買ったアイテム、ジャケットが破れてもいいと思い、水拭きもしてみた。すると茶色いシミまである程度取れつつ、ジャケットにダメージは生じない。結果的には、VG+と評してもいいレベルになった。それでも7500円盤の方が焼けは浅く、相対的には綺麗だ。よってステッカーのみを7500円盤に移し、目論見通り3万円級誕生、のはずだったが……。

右が7500円盤。右上にバーコードが。

 裏ジャケットを見ると、4000円盤にはないバーコードが7500円盤にはある。バーコード“なし”と“あり”では、どう考えても“なし”がより初期だ。“なし”のマトは2333、“あり”のマトは2312とより若く、理屈には合わないように思える。だが理屈では片付かないのがマト1の世界だ。バーコードなしジャケット&2312&ステッカーで、愛聴所蔵盤とすることにした。果たしてこれが3万円級なのかは不明だが、まあこれもよしとしよう。

 続いてはエマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革』と、ジェネシスの『フォクストロット』。

—————この勢いで、所有している盤まで買ってしまった。まずはエマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革』だ。僕のUK盤マト1のジャケット(アメリカ印刷)は、あちこちが折れていてずっといやだったので、2500円ほどの状態概ね良しを購入した。レコードを聴き比べて、音のいい方を状態概ね良しのジャケットに入れるつもりだ。そしてジェネシスの、『フォクストロット』UK盤マト1。所有盤のジャケット内側に若干のはげがあるものの、気になるレベルではない。だが状態概ね良しが約4700円であったのだ。日本で買えば1万円級、してやったり!—————

EX+級の『フォクストロット』。

 この2アイテムは同じセラーからの購入だ。『恐怖の頭脳改革』は、思っていたよりも良好なコンディションのジャケットが手に入った。しかしそれ以上に状態がよかったのが、『フォクストロット』。VG+どころか、EX+級だ。僕の所有盤ではげがある箇所は内側ジャケット左右面と思っていたが、改めてよく見ると外側表面裏面にもあった。つまり4面全てだ。外側のはげをイラストの白いタッチだと思い込んでいた。4700円でこんなにグレードアップできるとは大満足なり。

右上にはげのある『ファイアー&ウォーター』。

 そしてフリーの『ファイアー&ウォーター』。セラーの評価はVG+/VG+なのに、届いてみたらジャケット右上に目立つはげがあるではないか! これでVG+??? 改めて商品説明を読むと、“Cover VG/EX”とある。“表ジャケットはダメだけど裏ジャケットはいいよ、だから間を取ってVG+”とでも言いたいのか!? 音も予想通りよくないし、これは失敗だった。だが以下抜粋のように、ベスト盤はアナログでも音が凄い。

—————一般にフリーやバッド・カンパニー(つまり、ポール・ロジャース)は、音はよくないとされる。だが唯一、驚きの高音質録音盤がある。1991年にリリースされた『ザ・ベスト・オブ・フリー』で、CD時代ながらアナログ盤も出ている。実はこれ、名エンジニア、ボブ・クリアマウンテンによるリミックス作品だ。クリアマウンテンというくらいだから抜けのいいサウンドが特徴で、ブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザUSA』のミキサーだといえばピンとくる人もいるだろう。—————

『ザ・ベスト・オブ・フリー』。

 アナログ盤『ザ・ベスト・オブ・フリー』、やっぱりいい音だ。抜けが良く、歯切れがいい。オリジナルよりここまで音質が向上している再発モノを、僕は知らない。しかもM=新品未開封盤で約2000円だ。“音のいいフリー”を聴きたい人には絶対にお勧め。ただしセンスが良くてお化粧も上手な都会のお姉さんより、純朴で飾り気のない田舎の娘っ子に惹かれる人には過剰な洗練かもしれない。

 最後はドアーズの『ハートに火をつけて』だ。抜粋をどうぞ。

—————マト1の世界ではアメリカのアーチストはUS盤のマト1、イギリスのアーチストはUK盤のマト1がいい音というのが“常識”で、『ハートに火をつけて』もUS盤のほうが音はいいと確信している。だが稀少性ゆえか、アメリカのアーチストでもUK盤マト1のほうがかなり値の張る傾向がある。そんな盤を買うのはお金の無駄だと思っているが、状態概ね良しなら20000円級のUKモノラル盤マト1、約10000円也を見つけてしまった。いよいよアドレナリン出まくりなので、“この耳で比較試聴をせねば、USが勝るとは断定できない”、と自らの折伏に成功した。—————

共に左がUK盤モノラル、右がUS盤モノラル。

 このレコードもセラーの評価はVG+/VG+だ。1967年の作品なので、今回の購入レコードではもっとも古い。かなり古いレコードでは、ジャケットの痛み、レコードの傷やノイズは、多少なら致し方なしとされ、評価が甘くなる傾向にある。だがこの『ハートに火をつけて』のジャケット、多少の折れはあるもののEX級の当たりを引いたと思った。ところが再生すると、音が酷い。割れるというか、ビビるというか、濁っているというか、こんな酷い音は聴いたことがない。針飛びも生じる。VG+どころかGレベルだろうと針を見ると、埃がびっしり、タールのような塊まで付着している。尋常ならぬ汚れっぷりだ。

針が掻き出した汚れはゾッとするほどの量で、クリーナー液投入。

 レコード洗浄機を使いたいところだが、作業の都合およびコスト上10枚以上のまとめ洗いとしている。そこでまずは、レコードクリーナー液を不織布に垂らして盤を拭いた。すると不織布が茶色っぽくなる。約50年前に付いたタバコの煙のヤニだろう。数年前にも、この手のひどい汚れに遭遇したことがある。その時はクリーナー液&レコード洗浄機で、再生に問題なしの状態になった。

 幸い『ハートに火をつけて』もクリーナー液&レコード洗浄機を経て、論外の音ではなくなるどころか、経年相応レベルまで改善した。盤に目立つ傷もなく、こうなればEXと評していい。10000円で20000円級のEX/EXを手に入れたことになり、今回最大のお買い得となった。だがUS盤モノラルに比べると、音質は明らかに落ちる。音にフレッシュさがないし、低音が弱い。UK盤モノラルの所有は、あくまでもコレクターとしての自己満足に過ぎない。

 というわけで、久しぶりの一挙買いは取らぬ狸とはならず、概ねお買い得だった。しかしリタイアには痛い出費なので、あまり聴かない、あるいは買ったものの音があまり良くない所蔵盤を、20枚ほど買取店に売った。買取価格総額は、購入価格総額の3がけくらいだろうか? なんたる無駄遣いとも思うが、マイ・コレクションには4年前に6000円で買ったレコードが、今や相場は30000円なんてものもある。やがて本格オーディオなど使えない老人施設に入る際の頭金とすべく、『ハートに火をつけて』UK盤モノラルのようなレア盤は所蔵し続けるつもりだ。株は下がっても稀少レコードは値上がりするばかり、あと20年もすれば買値よりかなり高く売れると信じて。

文/斎藤好一(元DIME編集長)

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