4.今までにない生活が続き、高まる承認欲求
自粛生活が続き、人々が抱える欲求は、これまでの「外的に満たされたい」という低次のものから、「心を満たしたい」という高次のものに変わってくる。「承認欲求」だ。
会社で上司に褒められることも、デートで可愛いねと言ってもらえることも、高級レストランでの写真をSNSに投稿してイイネをもらうこともできなくなると、「他者から認められたい、尊敬されたい」という承認欲求がムクムクと湧いてくる。
SNSには、今までとは異なる、承認欲求を満たすためのコンテンツが投稿されるようになる。
ここでユニークなのは、各SNSによってコンテンツが全くことなること。
お取り寄せした高級グルメや、韓国発の映えコーヒー「ダルゴナコーヒー」をはじめインスタ映えする手作りスイーツなどの写真が投稿されるInstagram。
コロナショックを受けた飲食店が生き抜く方法や、afterコロナに対応するために、今をどのように過ごせばいいのか?など、真面目な提言が飛び交うTwitter。
退屈なおうち時間をユニークにするために、食を使ったオモシロ動画を投稿するTikTok。
投稿内容はそれぞれ異なれど、承認欲求(あるいは尊厳欲求)に基づいたアクションが各SNSで見られるようになった。
5.自粛生活に徐々に慣れ、最後に求めるは自己実現欲求
人と会わない生活、自宅から一歩も出ずに過ごす自粛生活に慣れてくると、「自己実現欲求」が生まれてくる。
「他者に認められたい、評価されたい」というよりは、「自分が今できることを精一杯したい」「この機会を使って成長したい」という想いが高まってくるようになり、クリエイティビティ溢れる活動をはじめる人々が増えてくる。
料理をしたことのなかった人が自炊にチャレンジし始める。
ディズニーが公開したレシピでチュロスを作ってみる。
それまで行ったことのないパン作りに挑戦する。
など、様々な創作活動が始まるようになる。
この流れから、スーパーでは小麦粉やホットケーキミックス、バター、ドライイーストなど創作活動に必要な食材が次々と品切れになっていった。
海外では、トイレトペーパーの買占めをやめることを訴えるため、トイレトペーパーの形をしたケーキが作られたり、
Somebody suggested my wife should make a toilet paper cake.
So she did. pic.twitter.com/8aqoRRevMb
— Michael Harris (@MichaelH_PhD) April 1, 2020
コロナウィルスなんかに負けないぞ!という思いから、コロナウィルスの形をしたスイーツが作られるなど、
Photo: https://www.newindianexpress.com/
自分の可能性に挑戦し、自分の能力を活かした、様々な創作活動が行われるようになった。
このように、マズローの欲求五段階説に沿って、コロナ期間中に起こった様々な食トピック。
忘れてはならないのは、今私たちが自己実現欲求に励むことができるのも、安定的に食糧を生産し、運搬し、スーパーで販売してくださっている方達のお陰である、ということ。
安心・安全な生活を支えてくれている人々に感謝の気持ちを忘れず、この自粛生活を乗り越えていきたい。
文/小松佐保(Foody Style代表)