コロナ禍の時勢を受けて、着々と日本に浸透するテレワーク。では、「ZOOM」「Microsoft Teams」など、様々なテレワークツールを生み出している「テレワーク先進国」のアメリカと比べて、日本にはどのような差や課題があるのだろうか?
そこで今回、J.D. パワーによる、日本とアメリカにおけるWEB会議システムの利用状況や利用者の評価などに関する二か国の比較調査が行われたので、その結果を紹介していきたい。
仕事で利用されているWEB会議システムについて
日本では①Zoom(30%)、②Skype(25%)、③MS Teams(16%)という結果に。
「Skype」と「MS Teams」はいずれもマイクロソフト社が提供するWEB会議システムで、二つを合わせると41%と最も多く、Zoom社がこれに続いている。
一方で、アメリカでは「Zoom」の利用率が48%と他と比べて突出して高く、マイクロソフト社が提供する「Skype」及び「MS Teams」を合わせた計21%に、大きく差をつけている。
WEB会議の利用端末について
WEB会議への接続端末は、日本もアメリカも「パソコン」が最も多く、日本が67%、アメリカが74%という結果に。次いで、スマートフォン、タブレットという結果になった。
マイク・スピーカーデバイスについては、日米ともに「ヘッドセット」の利用は25%程度に留まり、パソコンやスマホ等の端末本体の「内蔵マイク・スピーカー」を利用するユーザーが最も多く、日本が60%、アメリカが70%という結果になった。
会議接続や各機能利用の難しさについて
WEB会議への参加接続の難しさについて尋ねる調査が行われたところ、難しかったとの回答は日本では23%(「とても難しかった」、「やや難しかった」の合計)、対するアメリカでは9%だった(「とても難しかった」1%、「やや難しかった」8%)。
また、搭載機能(音声ミュート、画面共有等)の操作については、難しかったとの回答は20%(「とても難しかった」、「やや難しかった」の合計)、対するアメリカでは6%だった。
WEB会議システムを使い慣れているアメリカ人、不慣れな日本人といった印象。日米におけるユーザーのWEB会議操作に対する「慣れ」の違いが浮かび上がる結果となった。
日本の調査では、いつからWEB会議をよく利用するようになったかについて、尋ねるアンケートも実施された。
結果は、約6割(61%)が今年2月以降からという結果に。日本国内では1月下旬以降、IT企業を中心に在宅勤務がとられはじめ、2月初めには横浜港に寄港したクルーズ船内での感染が報道され始めた。それ以降、徐々に様々な業種の企業で在宅勤務が広がりつつある。
この結果は、今回の新型コロナウィルス感染拡大をきっかけに、WEB会議を本格的に利用し始めたユーザーが多いこと、そして今まであまり馴染みのなかったWEB会議システムの接続や機能操作にまだ難しさを感じているユーザーが多いことを示している。
WEB会議利用中の問題・不具合について
WEB会議システム利用中の問題・不具合の経験については、日本では「音声が聞き取りにくい」が29%と最も多く挙がった。続いて、「途中、接続が切れる」(19%)、「画面共有が遅延する・遅れる」(16%)、「音声が聞こえない/こちらの声が届かない」(14%)となっている。
アメリカと比較すると、日本では音声品質に関する指摘が多いという特徴が見受けられた。
今後のテレワーク制度やWEB会議の利用意向について
今後のテレワーク制度やWEB会議システムの利用意向について確認する調査が行われたところ、約8割が『コロナウィルスが収束した後も、テレワークや在宅勤務という働き方はあってもよい』と回答しており、大多数が事態が収束し普段通りの生活が戻った後でも、テレワーク制度の継続に肯定的であることがわかった。
また、約6割が『今後、社内会議はWEB会議でも問題ない』と回答しており、働き方や会議スタイルに対する意識変化が見受けられる。
■J.D. パワー ジャパン GBI部門 通信・テクノロジーインダストリー シニア・ディレクター 野本達郎氏のコメント
日本では、今回の新型コロナウィルス拡大に伴って多くの人がオンラインによる会議システムを日常的に利用し始めたことが伺えます。国土も広く、ホームベースドワークという働き方も多いアメリカと異なり、これを機にようやく多くのビジネスパーソンがWEB会議というものに“必要に迫られて”触れ始めたと言えるでしょう。接続や操作の難しさは普及拡大期に伴う事象と考えられ、今後ユーザーの使い慣れとともに解消が期待されます。
今回のコロナウィルス問題は、多くのビジネスパーソンが働き方や社内会議の在り方について再確認するきっかけとなったと考えます。今後はオンラインを使ったこのようなWEB会議導入も着実に増えていくと予想されます。
また、対面での会議さながらのリアルタイム性が重視されるWEB会議は少しの遅延や不具合もストレスになりがちです。トラブルやボトルネックの切り分け・要因特定が難しく、企業のIT管理者やエンドユーザーにも高いリテラシーが求められてしまいます。WEB会議製品の販売事業者にはこういった問題に対しても包括的にサポートできるようなサービスが期待されます。
※J.D. パワー調べ
<調査概要>
【日本】
■調査方法 :インターネット調査
■調査期間 :2020年4月17日~4月20日
■対象者 :1週間以内に仕事でWEB会議システムを利用した男女 477名
【アメリカ】
■調査方法 :インターネット調査
■調査期間 :2020年4月8日~4月9日
■対象者 :1週間以内に仕事でWEB会議システムを利用した男女 1,223名
出典元:株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパン
https://japan.jdpower.com
構成/こじへい