「上司や同僚との人間関係がうまくいかない」「雑談や会議が大の苦手」などと悩んでいる人は少なくない。また、コロナ対策による在宅勤務で、「家で仕事をする方が性に合っている」と気付いたなら、もしかしてあなたは内向型の人間なのかもしれない。
会社勤めをやめ内向型コンサルタントへ
企業社会では外向型の人がもてはやされる傾向があるので、内向型の性格は欠点と受け取られがちだ。しかし、内向型の人の割合は約50%もいて、誰もが内向型と外向型の両面をもっており、優劣をつけることにあまり意味はない。むしろ内向型の性格を活かすことで、自分らしい人生を送れると指摘するのは、「内向型コンサルタント」の堤ゆかりさんだ。
フリーランスとして働く堤さんも内向型で、かつては会社勤めをしていた。しかし、適応障害による休職と2回の転職を経て、「組織で働かない」方向へと舵を切る。会社員時代の所得を超えた現在も、内向型を活かす働き方をさらに前進させるため、試行錯誤を重ねているという。
内向型であることを強みにして成功した堤さんだが、同じような気持ちで、組織に縛られない働き方を模索している人は多い。そうした人たちに向け、堤さんは書籍『もう内向型は組織で働かなくてもいい』(世界文化社)を上梓。内向型の人たちが、より自分に合った働き方を実現するための考え方を提案している。
組織で働くほうがメリットは多い場合も
堤さんは本書のなかで、「自分は内向型だから」と、一足飛びに会社を辞めてしまう冒険はすすめていない。オフィスに出勤しても「ひとりで進める仕事が多い」など、内向型に適した職場環境であるとか、異動希望が受け入れられやすい社風であれば、そこでの勤務を継続したほうがメリットは大きいからだ。
また、自分の適性にかなう企業への転職という手も考えられる。
「自分で仕事を生み出すのではなく、指示を受けて仕事に取り組むほうが性に合っている人もいます。そのような人にとっては、転職によって自身に合った環境で働けるチャンスもあるかもしれません」と、堤さんは述べる。
そして、今の職場で続投であれ、転職であれ、毎月給料が振り込まれるという安定感・安心感は、フリーランスにはないメリット。定収入へのこだわりが強いのであれば、組織内で生きる道が堅実だとも。
副業からのスタートのすすめ
堤さんが、検討した結果「組織で働かない」ことを選んだ人に、手始めとしてすすめるのが「副業」だ。
「まずは副業からスタートし、徐々に“雇用されない働き方”にシフトしていきましょう。回り道に聞こえるかもしれませんが、堅実で現実的なルートだといえます。少しずつ環境を変えていく方法であるだけに、“刺激に弱い内向型も順応しやすい”というメリットもあります」
副業には、「企業や個人事業主などのクライアントから、仕事を請け負う」と「オリジナルのサービスや商品を自分で考え、提案・集客する」の2パターンに分けられるという。堤さんは、初めての副業チャレンジで、挑戦しやすいのは前者だとし、そのための突破口として集客サイトやクラウドソーシングの活用を挙げる。
堤さん自身も、最初は副業からスタート。海外からアパレル商品を仕入れてネット販売する仕事だったという。また、堤さんの知人は、PowerPointで資料作成を代行やイベントの受付スタッフなどの副業を手がけ、勤務先で培った経験を外部で活かせる機会は案外多いことがわかる。
5つのステップで着実に仕事を見つける
自分の内向的な性格を活かせる仕事がピンとこないという人に対し、堤さんは5つのステップを踏んで、着実に仕事を見つける方法を本書で論じている。その5つのステップとは、以下のとおり。
1. 好きなこと(やってみたいこと)を考える
2. 役に立てること・求められることを探す
3. 内向型の強みを活かしてお試し体験する
4. 振り返る
5. 今後の計画を立てる
3.のお試し体験とは、手離れしやすい副業や単発のアルバイトを意味する。クラウドソーシングサイトやスキルシェアサイトを利用するのもいいし、自営業や副業をしている知人に「手伝える仕事がないか」と聞いてみるのもアリ。背伸びしすぎず「今の自分ができること」を小さくトライしていき、何が自分に合っているかを4.のステップで振り返る。最終的に5.のステップで、理想の未来像をイメージしつつ、直近にすべきことを具体的に考える。本書には、各ステップについて書き込み式のワークがあるので、それを埋めていきながら、理想の働き方を探そう。
「副業に挑戦したいが失敗するのが怖い」といった、内向型の性格ゆえの数々の悩みについても、堤さんは本書で懇切丁寧に打開策を指南する。それらは、同じ内向型の目線だからこそ説得力があり、とても役に立つ。組織で働かない生き方を考える人は、一読するとよいだろう。
堤ゆかりさん プロフィール
内向型コンサルタント・心理カウンセラー。自身が20年間コンプレックスを感じていた内向性を受け入れられるようになった経験と独自の分析力をもとに、Instagram・YouTube・Twitterなどで「内向型を直さず活かす生き方」を発信。内向型を活かす働き方を叶えるためのコンサルティングのほか、内向型コミュニティの主宰や講演などを行う。年間の個人コンサルティング・SNS相談実績は300件超で、内向型の気持ちに寄り添った提案に定評がある。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)