感染拡大するコロナウィルス。
外出自粛が続いており、頻繁に買物に行けないため、賞味期限の長い食品に対する需要が高まっている。
スーパーでは、冷凍食品やカップ麺、また大豆ミートをはじめとする「植物性肉」といった日持ちする商品が品薄状態となっている。
このような状況で注目されているのが、賞味期限の長いパンを作れる酵母種である「パネトーネ種」
通常パンの賞味期限は2~3日と短く、長期保存ができるパンと言えばカチカチの「乾パン」くらいであった。
しかし、パネトーネ種を使用すれば、ふわふわの状態のままパンを長期間保存することができるとあって、今注目されている。
保存期間を長くさせる酵母「パネトーネ種」とは?
イタリア北部のコモ地方の伝統的な自然発酵種であり、空気や気候など諸条件が揃った北イタリアの環境でしか生育できない酵母と乳酸菌が共生した希少な酵母である。
パネトーネ種に含まれる乳酸菌が、パン生地のpHを低下させ、汚染細菌の生育を防止することで、通常のパンの賞味期間よりはるかに長い保存が可能となる。
クリスマスの伝統菓子として親しまれている「パネトーネ」
日本ではあまり馴染みがないが、パネトーネはヨーロッパではクリスマスに食べるお菓子として昔から親しまれている。
バターがたっぷり入ったフワフワのパン生地に、レーズンやオレンジピール、レモン、ライムなどのドライフルーツが練り込まれたパネトーネ。
自然発酵させては生地を休ませるという工程を何度も繰り返して作るため、手間がかかるパンとしても知られている。
保存期間が長いパネトーネを、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間(アドベント)、毎日少しずつスライスしながら食べてクリスマスを迎える、という習慣がヨーロッパには存在している。
保存食として注目され始めたパネトーネ種
そして今「パネトーネ種」の保存期間の長さを活用して、賞味期限の長いパンを製造している企業として注目されている企業。それが「コモ」である。
保存料無添加にも関わらず、2~3か月も保存できる「コモ」のパンは、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により注文数が大幅に増加。一時注文の受付をストップしたほどだ。
コモではイタリアから空輸し、培養したパネトーネ種の酵母を使って、メロンパンやデニッシュチョコなど、様々な種類のパンを製造している。
バラエティ豊かなため、乾パンと異なり飽きることもない。
日本でもジワジワきているパネトーネブーム
日本では、クリスマスのパンと言えば「シュトーレン」が人気である。
しかし、最近「パネトーネブーム」もジワジワときている。
例えば、日本発のパネトーネ専門店「Less」
昨年恵比寿にオープンし、今では予約必須の人気店として注目されている。
この店で使用されているパネトーネ種は、ミラノで生まれたオーナーパティシエの生家であるパティスリーから受け継いだ50数年ものの種。
オレンジピールやヘーゼルナッツクリームが入った定番のパネトーネに加え、桜と苺など旬の食材を使った季節限定のパネトーネを販売している。
「LESS」という店名に込められているのは、「無駄なものは排除し、研ぎ澄ますことで、より本質的になる」という想い。
そのメッセージ通り、余計なものは一切入っていないパネトーネ。
手間のかかる工程を経て出来上がったパネトーネは、きめ細かく、やわらかい口どけ。
パネトーネ種の甘い匂いと、フレッシュな柑橘の匂いがミックスされた、シンプルだけれど深い味わいのパネトーネを楽しむことができる。
クリスマスの伝統菓子のみならず、保存食として定着するか?
新型コロナウィルスの影響で注目が集まるようになった「パネトーネ種」
クリスマスの伝統菓子だけでなく、保存食になるパンとして日本でも定着していくかもしれない。
文/小松佐保(Foody Style代表)