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やむを得ず株主総会を欠席する際、書面や電子投票で議決に参加したり委任状で代理人を指定したりすることで、権利を行使できます。会社によっては代理人への制限もあるので、確認が必要です。委任状を作成する際のポイントも押さえておきましょう。
株主は株主総会に出席する権利を持つ
株主は株主総会での決議に参加して、票を入れる権利を持っています。株主の票が会社の活動に反映されることから、ぜひとも行使したい権利の一つです。持ち株に応じて票数が変わるのも大きなポイントでしょう。
株主総会の目的は会社の基本的事項に関する決議を行うこと
株主総会の目的は、会社の『基本的事項』に関する意思決定を行うことです。基本的事項には、合併や解散といった会社の組織や事業の変更、取締役などの役員の選任・解任などが挙げられます。
株式の第三者有利発行など株主の利益に関することも決議されることから、会社と株主の双方にとって重要な場といえるでしょう。
株主総会は最低でも事業年度ごとに実施されます。定期的に開催される株主総会のほかに、必要に応じて『臨時株主総会』が開かれることも少なくありません。
株主は持ち株に応じて議決権が与えられる
『一株一議決権の原則』に従って、株主には株式1株ごとに一つの『議決権』が与えられます。ただし例外もあり、自己株式・相互保有株式・議決権制限株式などは議決権が認められません。
議決権とは、株主総会の決議に参加して票を入れる権利のことです。株主総会では決議される事項に対して、議決権を持つ人が『賛成』もしくは『反対』の票を入れます。
株式をたくさん持っている人の影響が大きくなる一方、1単元株でも株式を持っていれば決議に参加できる点も理解しておきましょう。
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株主総会を欠席する場合の対応
株主が株主総会に出席して意思決定を行うのが理想ですが、株主全員が出席できるとは限りません。そこで法律では、書面や電子投票で議決権を行使できる制度が定められています。代理人を立てて出席してもらうことも可能です。
書面または電子投票で議決に参加する
株主総会に出席しない株主も、書面によって議決権を行使できる『書面投票制度』があります。株主が1000人以上いる会社は書面投票制度を定めなくてはなりません。株主が1000人未満でも、自主的に定めている会社もあります。
2002年に誕生した『電子投票制度』も便利です。電子投票制度を導入している会社なら、電子メールなどの電磁的方法で議決権を行使できます。
電子投票制度によって個人株主も簡単に議決権を行使できるようになりましたが、導入していない会社もまだ多いのが現状です。
委任状を提出し代理人を立てる
株主総会に出席できない場合は、代理人に『代理権』を与えて出席してもらうのも手です。会社法では、株主総会に出席できない株主に対して、代理人を立てて参加する権利が保障されています。
ただし、株主側が会社の断りなく代理人を立てることはできません。株主または代理人が代理権を証明する書類の提出が必要です。書類には、委任状や『議決権代理行使書面』が挙げられます。会社によっては、電磁的方法による委任状も有効です。
委任状で指定する代理人の決め方
代理人を立てる際には、会社の定款などを確認した上で選定しましょう。代理人に制限を設けている会社も多いため、自己判断は禁物です。株主総会を欠席する際に、委任状を白紙で提出する人もいます。
制限がなければ誰でも指名できる
特に制限がない場合は、株主の判断で代理人を自由に決められます。誰でも指名できれば、家族や友人など身近な人に頼みやすく、株主にとっても便利です。「地方住まいで会場が遠いから、上京した友人に代理人になってもらおう」といったことも可能でしょう。
しかし、多くの会社は代理人の資格に制限を設けているため、注意が必要です。代理人を立てたいと考えているなら、事前に会社の定款や招集通知などをチェックして、代理人の資格に制限がないか確認しておきましょう。
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代理人は株主のみと指定する企業もある
上場企業の大半は、その会社の株主のみを代理人として認めています。誰でも代理人になれるようにしてしまうと、株主総会がかく乱されて会社が不利益を被る恐れがあるからです。
会社を陥れようとしている人がいないとも限らないため、警戒するのは当然です。代理人の資格を株主に限定するのは合理的な理由として、過去の判例でも有効とされています。周囲に代理人に指名できる株主がいない場合は、書面または電子投票で議決に参加してもよいでしょう。
白紙(空欄)提出も可能
自分の意見が特にない場合、白紙で委任状を提出する人もいます。委任状を白紙で提出するのは、法的に問題ありません。
白紙で提出する際に理解しておきたいのが「誰に委任されるのか」という点です。定款などで白紙委任状に関する事項が定められている場合もありますが、一般的には株主総会の『招集権利者』に受任者を選ぶ権利が委ねられます。
肩書はさまざまですが、会長や理事長が招集権利者に当たります。株主総会では会社側と株主側の意見が対立した際に、委任状の争奪戦が繰り広げられることも珍しくありません。
委任状を出さないと議決権の代理行使はできない
株主総会で議決権を代理人に行使させるためには、必ず委任状を提出する必要があります。委任状を出さないまま株主総会に出席しても、代理人による議決権の行使は認められません。
また、委任状を提出せずに総会を欠席した場合も、議決権行使の機会を失ってしまいます。つまり、委任状を提出しない限りは株主本人が自ら議決権を行使しなければならないのです。なお、特定の場合に限り委任状なしでも議決権行使が認められるケースもあります。
株主総会の委任状の作成方法
株主総会で提出する委任状には、記載しなくてはならない項目があります。会社から送られてくる招集通知に同封されている場合もありますが、自分で作成する際には不備がないかしっかり見直しましょう。
委任状とは
委任状とは、本来なら自分が行うことを誰かに代わってもらうときに作成する書類を指します。株主総会で代理人を立てる際に委任状などの書類の提出が求められるのは、株主の議決権が会社の命運を大きく左右することがあるためです。
株主総会に訪れた人が正真正銘の代理人であったとしても、それを証明できなくては会社側も議決権を行使させるわけにはいきません。議決権を行使する権限を代理人に与えたことを書類で明らかにすることで、代理人が認められるというわけです。
委任状の書き方や内容は?
委任状を自分で作成する際は、いくつかの要件を満たす必要があります。欠かせないのが「私は○○を代理人と定め、以下の権限を委任します」など、権利を代理人に委任することが分かる一文です。
次に「令和○年○月○日に開催される株式会社○○の第○回定時株主総会に出席し、議決権を行使する権利を委任します」といった風に、代理人を立てる株主総会と、委任する権利も明確にしましょう。株主本人の住所・氏名・生年月日・捺印、代理人の住所・氏名・生年月日、委任年月日も必須です。
招集通知に同封されている場合もある
会社側の方針で、株主総会の収集通知に委任状が同封されているケースもあります。株主本人が総会に出席できなくても、委任状があれば出席数にカウントされるからです。
株主総会では『定足数』が定められています。定足数とは、最低限出席しなくてはならない人数のことです。定足数が満たない場合は、株主総会を開催できなかったり、決議が成立しなかったりと、会社側に不利益が生じる可能性があります。
会社側が成立させたい決議がある場合に、委任状を同封して可決を狙う『委任状勧誘』が行われることもしばしばです。
ひな形やテンプレートがダウンロードできるサイトもある
委任状を作成する際、初めての方にとっては書き方に迷うこともあるでしょう。そんなときには、インターネット上でダウンロードできる委任状のひな形やテンプレートを活用するのが便利です。
これらのテンプレートは、必要事項があらかじめ記載されているため、簡単に作成することができます。また、法的な要件を満たした内容が多く安心して利用できます。公式サイトや専門の書類作成サービスなどで入手できることが多いためチェックしてみましょう。
委任状は株主総会ごとに作成が必要
今後も株主総会に出席する予定がない人も、株主総会の度に委任状の提出が必要です。以前に委任状を提出したことがあるからといって、委任状の提出が免除されることはありません。
委任状でも「○年○月○日に開催される株式会社○○の第○回定時株主総会」と具体的に明記しなくてはならないのは、株主総会ごとに代理権を証明する決まりがあるからです。ひとくくりに「株主総会において」などと記載しただけでは、委任状として認めてもらえない恐れがあります。
構成/編集部