お願いしにくいことをお願いするときの成功ポイント
必殺ワードとテクニックは、それぞれのケースにパターンをあてはめて、有効活用できそうだ。依頼する相手へのお願いを、無事に成功させるためのポイントを廣瀬さんは次のように話す。
「『お願い』は、本来は社内や案件全体を見て業務を円滑に進めるための判断の一つ。しかし、つい『大変だ』などの感情が先走った伝え方になり、個人の都合でお願いされていると誤解されてしまいがちです。感情は言葉ではなく、状況で共感を得ることを意識し、『それは無理だな、大変だな』と“相手に感じてもらうもの”ととらえてください。
これを踏まえると、はじめから『お願いしたいこと』を伝えると逆効果になってしまいます。相手に納得性をもって受け止めてもらうには、まずは双方が目的実現のための『協働関係』となっている前提を持つことが重要です。つまり、その『お願い』を受け止めることによって、リスクヘッジやより良い状況になる、という意図や意義が理解できる、共感できる状況や場をつくることが大切です」
●まず相手の「名前」を呼ぶ
「そのためには、『あの~』などから入らず、まず名前を呼んで声がけを行うことがポイントです。自分の名前は、一番心地の良い言葉であると心理学的に言われているくらいです。まず相手の名前を呼んで声がけをし、共感できる場づくりを行うこと。声がけは飾りではなく、効果を出すために大切な言葉です」
●一気に話さず、一呼吸置く
「名前を呼んだ後も、一気に話さず『ご相談があって』などの後に一呼吸置くなどして、相手が受け止めるための準備の間をつくりましょう」
●「お願い」という表現を使わない
「先にも述べましたが、『お願い』という表現を使わないこともポイント。人が無意識に持っている損得勘定を働かせることなく、最後まで聴いてもらうことができます」
「お願いしにくいことをお願いする」必要のあるシーンは、ビジネスにおいて頻繁に訪れるだろう。そんなとき、これらのパターンを知っておけば、臨機応変に選べる。成功のポイントをよく頭に入れて、快く相手に「お願い」を受け入れてもらおう。
【取材協力】
廣瀬 由美さん
RSET-LIFE合同会社 代表
国家資格キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・伝わる話し方講師・コミュニケーションコーチ。
大手企業にて営業・採用・クリエイティブにおける18年間のマネジメントやのべ10,000名の対面経験をもとに独立。現在はコミュニケーションコーチング・キャリア開発をベースに、研修やセミナー、キャリアコンサルティングを行っている。
RSET-LIFE合同会社
http://www.reset-life.net/
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取材・文/石原亜香利