調べを進めると、『ザ・ウォール』は合計数が小さくステッカー付きとなると、3万円級に跳ね上がるようだ。そこで思い当たった。悪状態でも合計数大でもいいから、とにかくステッカー付きはないものか? あった! “2333”で4000円! ジャケットは相当傷んでいるようだが気にしない。この二つを合体すれば“2312”でステッカー付き、11500円で3万円級購入となる。ただしこれも実物を見ないことには、絵に描いた餅に終わる可能性有りだ。それでも、アドレナリン出まくり状態は続く。
『恐怖の頭脳改革』UK盤マト1。ややこしいがUK盤マト1には先に発売されたUSプレスと、後に発売されたUKプレスがある。どちらも所有するが、これはジャケットの状態がいいUKプレス。音質はUSプレスの圧勝。
この勢いで、所有している盤まで買ってしまった。まずはエマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革』だ。僕のUK盤マト1のジャケット(アメリカ印刷)は、あちこちが折れていてずっといやだったので、2500円ほどの状態概ね良しを購入した。レコードを聴き比べて、音のいい方を状態概ね良しのジャケットに入れるつもりだ。
そしてジェネシスの、『フォクストロット』UK盤マト1。ジャケット内側に若干のはげがあるものの、気になるレベルではない。だが状態概ね良しが約4700円であったのだ。日本で買えば1万円級、してやったり!
さらにマト1という世界を知った時から気になっていた学生時代の愛聴盤、フリーの『ファイアー&ウォーター』もついに購入。マト1入門当初は4000円ほどで気軽に買えたが、録音はよくないという定評(?)があり手を出さなかった。その後値上がりして今や状態がいいと1万円に近づくが、状態概ね良しで5500円という出物を見つけたのだ。ただし頭から、音には期待していない。
フリーの名盤『ハートブレイカー』UK盤マト1は、2000円くらいで購入。定評通り(?)、音質には不満あり。
一般にフリーやバッド・カンパニー(つまり、ポール・ロジャース)は、音はよくないとされる。だが唯一、驚きの高音質録音盤がある。1991年にリリースされた『ザ・ベスト・オブ・フリー』で、CD時代ながらアナログ盤も出ている。実はこれ、名エンジニア、ボブ・クリアマウンテンによるリミックス作品だ。クリアマウンテンというくらいだから抜けのいいサウンドが特徴で、ブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザUSA』のミキサーだといえばピンとくる人もいるだろう。僕もCDを聴いて、嘘のように明るく爽快なサウンドに驚いた記憶がある。そのUKアナログ盤・未開封を、2000円で買えた。ただし決してお買い得ではない。状態相当良しで1000円以下の出品も少なからずあるからだ。アナログ盤なら、CD以上に気持ちのいい音を聴けると期待している。
最後はドアーズのデビュー作、『ハートに火をつけて』のUKモノラル盤のマト1だ。僕はドアーズが大好きで、『ハートに火をつけて』『まぼろしの世界』『太陽を待ちながら』の初期3作品のUSマト1をモノラルとステレオで所有し、その比較試聴記事を@DIMEで書いた。マト1の世界ではアメリカのアーチストはアメリカ盤のマト1、イギリスのアーチストはUK盤のマト1がいい音というのが“常識”で、『ハートに火をつけて』もUS盤のほうがいい音と確信している。
だが稀少性ゆえか、アメリカのアーチストでもUK盤マト1のほうがかなり値が張る傾向がある。そんな盤を買うのはお金の無駄だと思っているが、状態概ね良しなら20000円級のUKモノラル盤マト1、約10000円也を見つけてしまった。いよいよアドレナリン出まくりなので、“この耳で比較試聴をせねば、USが勝るとは断定できない”、と自らの折伏に成功した。以上、短期間にいくら使ったのか、恐ろしくて足し算する気になれない。
なお上述の値段は、送料別だ。今回はすべてイギリスからの購入で、送料は2000円くらいかかる。だから送料込みとなると、さほどお買い得ではない盤もある。だがそれは承知の上でのこと。手に入れたものの音に不満で中古買い取りに出し、価格+送料より高く売れることも稀にはある世界なので、送料にはあまり拘らないことにしている。ただしアメリカからレコード1枚を買って、送料5000円超(=最も保証が強力な送り方)には驚いた。
長々と書き連ねたが、この散財の火付け役は冒頭に述べたように、クイーンの試聴イベントだ。当日は、フリーも聴く。このイベント「レコードの達人」は、『FMレコパル』編集部在籍時の80年代前半から今日まで、僕のロックとオーディオの師匠たる音楽プロデューサー・岩田由記夫さんと僕で、2か月ごとに開催している。クイーンの比較試聴会は4月18日13時半~、場所は東京・大岡山のライブハウス「グッドストック東京」だ。ライブハウスならではの大音響で名録音が聴けるのもイベントの目玉の一つだが、こういう状況なので躊躇する方もいるだろうし、延期になるかもしれない。ご興味をもたれた方は、「グッドストック東京」のサイトをご注視あれ。
最後にひと言。今回購入したお買い得レコード群、“捕らぬ狸だったか、掘り出し物だったか”は、改めてご報告するつもりだ。
文/斎藤好一(元DIME編集長)