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先にある楽しいことをしっかりイメージしよう!行動経済学で考える月曜日の憂鬱を乗り切る方法

2020.03.23

◆高橋晋平の憂鬱な月曜日を楽しくする研究会

日本には、休日明けの月曜が嫌いな人が多すぎる…。その現状を改善するため、本連載では、様々な領域のプロフェッショナルに月曜日の憂鬱を減らす方法を聞いていきます。

今回は、行動経済学の権威であるダン・アリエリーとの対談がまとめられた話題の新刊 『「幸せ」をつかむ戦略』の著者である、プリファード・ネットワークスCMOの富永朋信さんに、月曜イヤイヤ病を改善するヒントを様々なテーマで聞いてきました。今回はその後編です。(前編はこちら

富永朋信さん(記事内では敬称略)

リモートワークは幸福感を増大させるか

高橋:ご著書の中で、夫婦でもずっと一緒にいない方がいいという「距離感」の話がありましたが、人間同士の距離感って仕事の中でも大事だと思うんです。チームビルディング=関係性を密にして仲良くなる、というのは少し違いますよね。

富永:心理学に「転移」という概念があって、例えば会社の人たちに、自分の身近な人間関係を重ね合わせて見ていることがあるわけです。もし私が上司を父親のように思い、上司も私のことを息子のように思っていたら、見方が一致しているので、議論やケンカをしたりしても、スタンスが明確で話がかみ合うわけです。でもこれが、私は上司を友達だと思っていて、上司は私を息子だと思っていたら、アナロジーとして見ている関係性が一致していないので、こじれるんです。だからチームビルディングや仲良くしよう、ということにおいては、この「転移」の整理をして、それぞれの人同士の見方を一致させるというところをやっていく必要があると思うんです。ここを無視して、「とにかく仲良くしようぜ」みたいなことを先に言うと、よくわからないことになっちゃうのかなと思います。

高橋:今、このご時世で、みんな「リモートワークの良さを見直そう!」みたいなことを言い出していますが、リモートワークって、幸せな働き方に貢献できると思いますか?

富永:深い話ですが、まず仕事から得られる幸福感に関して言うと、私個人的には「減衰」すると思っています。人間は社会的な動物で、誰かと協調すると幸福感を得られますが、それは現実に近くで会い、細かい表情や全身によるジェスチャーまで感じ取れるときの方が、画面越しよりもインパクトが大きいわけです。ただこの問題が複雑なのは、人間は仕事だけで生きているわけではなくて、家にいたら幸福感が高まる人もいますし、それによって家族との時間も増えるかもしれません。その観点から言うと、幸福感は増大しますよね。リモートワークが心地いいと思う人はもちろんいますが、それ自体が仕事の幸福感を増大させると一概には言えないと思います。

高橋:僕の場合、リモートワークを中心にして家にいる時間が長くなったら、奥さんがイライラするようになったんです。これも距離感の話ですよね。

富永:自分の意思で自分の行動や状況を決定できることをオートノミーと呼びますが、人間の中ではこれの増減が幸福の増減と連動します。ご主人が家にいて、例えば「自宅のことを手伝ってほしい」と思っているにもかかわらずそれが実現しないとか、家が自分の思い通りに使えない、と言うようなことになると、奥さんのオートノミーが減少してイライラにつながるんですよね。

先にある楽しいことをはっきりとイメージする

高橋:行動経済学の話は、いつもお金のことですごく実感するんです。例えば10万円もらえる仕事がキャンセルになっても「仕方ないか」と思うけど、持っていた10万円を失うことが起きたらすごいショックですもんね。不思議ですよね。

富永:不思議としか言いようがないですよね。あと、「時間による選考の逆転」というのがあって、「今日1万円あげるか、1年後に2万円あげる。どっちがいい?」と言われると、多くの人が今日の1万円を選ぶと言われています。これは明らかに非合理で、金利を考えたら1年後の2万円の方が得なんですが、将来のことって価値を少なく見積もっちゃうんです。これによって起きることが、20年後の肺ガンリスクが高まるかもしれないけど今タバコを吸うとか、効果が出るのが半年以上先なのでダイエットを始めないとか。そういうことも選考の逆転と言えます。

高橋:まさにそうですよね。

富永:これを考えると、次の週末の土日に楽しいことがあるとしても月曜をつらいと思ってしまうなら、土日まで待たないで、もっと近いところに楽しみを設定してみてはどうでしょう。

高橋:月曜の夜は好きなものを食べて良いとか。

富永:土日の楽しみをもっとリアルに想像することも大切です。先のことに価値を感じないのも、想像が働きにくいからです。少し先に楽しい時間が待っているということを、はっきりと具体的にイメージすることは一つのテクニックです。

不確実な将来のことは考えない

高橋:時間の話を深掘りしたいのですが、月曜が憂鬱だと言っている仲間と話すと、10年以上先の将来を心配して、今の苦役から逃げられない人が多いんです。これって、時間による選考の逆転と、反対じゃないですか?

富永:その話でいうと、まず一つの問いがありまして。「人間ドック」って、いいものだと思いますか?

高橋:え⁉ 僕は、病気の早期発見につながるからいいことだと思いますが。

富永:人間ドックで発見される問題には、治療すれば解決するものと、検査検査の繰り返しで、結局「しばらく様子をみましょう」と言うものがありますよね。前者はいわゆる早期発見なのでもちろんいいことなのですが、後者はどうでしょう。これを契機に「自分は病気を抱えているかもしれない」と言う気持ちとともに生活することになり、現在から将来に到る幸せの実感は下がるように思われます。選択した行動とその結果がはっきりしていれば、将来へ向けての幸せは増えますが、そうでなければいつまでも不安を抱えることになるんです。だからと言って、早期発見のメリットは大きいので、人間ドック自体を否定するものではないのですが。

高橋:未来のことを心配するあまり、今がつらいという状態は不健全ですよね。

富永:世界では一人一人が違う行動をしていて、その絡み合いの複雑性は誰の手にもあまるはずで、未来の予測は不可能です。そんな世界なら、今、自分自身がいかに幸せに過ごすかの方が大事です。目の前のやりたいことを全部やった方がいいと思います。

高橋:そうなると、生命保険って、どうなんでしょうね。ちなみに僕は掛け捨て型の保険が嫌いで、奥さんが入らないと不安だから入れ、って言ったので、甘んじて入っている感じです。

富永:これは行動経済学のプロスペクト理論でうまく説明できます。この理論は同じ金額の損失と利得を比較すると、利得の喜びよりも損失の痛みの方が大きく感じられ、それを避ける傾向がある、と言う人間の性向を説明するものです。そして損失が起きる可能性が極めて低いと、一転して人間はリスク選好的になります。だから保険料を払う。保険は行動経済学的にとても買いやすい商品なんです。と、ここまでは論理的なコメントですが、私は結局、損得のものさし、正誤のものさし、幸せのものさしを混同してはいけないと思うんです。金銭的に損したり、論理的に正しくはないとしても、幸せに思えるなら、それが一番いいじゃないですか。だから、保険の話は、奥さんがそれで満足して、その幸福感はご主人にも返ってくるわけで、だから正しい意思決定なんです。何が自分の幸せかを考えるものさしを見失わないことが重要なんです。

高橋:まさに、その通りですね! 保険の話も、本当はもっとちゃんと考えれば得するのかもしれないけど、僕はそのことに時間をかけすぎたり、心配しすぎたりするくらいなら別の事を考えている方が幸せだと思います。そんなふうに、迷わない幸せのものさしを、徐々にはっきりさせていけたらいいんですね。

富永:会社でもそうなんですよね。昇進した役職の大きさを比べるのではなく、自分はどの役割の仕事をするのが一番幸せなのか、というものさしを持つことができれば、月曜も楽しく働けるようになっていくのかもしれませんね。


今回のキーフレーズ
損得のものさし、正誤のものさし、幸せのものさしを混同してはいけない


【富永朋信さんの新刊情報】

書名:「幸せ」をつかむ戦略
定価:(本体1,600円+税)
出版社:日経BP社
Amazon商品ページ https://amzn.to/39Gw5p6

世界的ベストセラー『予想どおりに不合理』でおなじみ、
行動経済学の権威、ダン・アリエリー(デューク大学教授)が語った、前代未聞の衝撃的幸福論!

本当の幸せはお金や地位ではなく、自分の意思で自由に振る舞えることにあるのではーー。
日本を代表するマーケティングのプロ・富永朋信は壮大な問いの答えを求め、アリエリーのもとへ。
消費から夫婦関係、子育て、従業員のモチベーションに至るまで、「幸せ」に関する8つの質問に対し、アリエリーが語った驚くべき回答とは?

・なぜアマゾンが超便利なのに、「本屋に行きたくなる」のか?
・「パートナーとの関係」が年々悪くなるのはなぜ?
・初めて付き合った相手と「結婚」した人と、10人と付き合った末に結婚した人はどっちが幸せ?
・「子育ての辛さ」を軽減し、喜びや幸せをより実感できる方法は?
・消費者や従業員に「愛される企業」になるには?

【今回の話し手プロフィール】

富永 朋信(とみなが・とものぶ)
Preferred Networks執行役員・最高マーケティング責任者。日本コカ・コーラ、西友などでマーケティング関連職務を歴任し、ドミノ・ピザ、西友など4社でマーケティング部門責任者を拝命。社外ではイトーヨーカ堂、セルムの顧問、厚生労働省年金局年金広報検討会構成員、内閣府政府広報室政府広報アドバイザー、駒沢大学非常勤講師などを務める。日経クロストレンドなど、マーケティング関連メディア・カンファレンスなどのアドバイザリー、ボードメンバーなど多数。

【聞き手プロフィール】

高橋晋平(たかはし・しんぺい)
株式会社ウサギ代表取締役、おもちゃクリエーター。あらゆるジャンルを「遊び化」することを考え、月曜日を楽しくする方法の研究もしている。全国で講演活動も。近著に『企画のメモ技』(あさ出版)。Twitter : https://twitter.com/simpeiidea

※月曜を楽しくしたい人のコミュニティ「月曜クラブ(月ク)」が立ち上がりました。ご興味のある方は、Facebook、Twitterをフォローしてみてください。
Facebook 月曜クラブ(月ク) https://www.facebook.com/getsuyouclub/
Twitter 月曜クラブ(月ク) https://twitter.com/getsuyouclub

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