相鉄の存在を知らしめる〝走る広告塔〟12000系
相鉄・JR直通線の成否を握るのが、新型車両12000系電車だ。これは相鉄が2013年から進める「デザインブランドアッププロジェクト」を象徴する車両で、横浜の海を表現した車体色の「YOKOHAMA NAVYBLUE」や、能面の獅子口をモチーフとした斬新なデザインが特徴。
「最近の電車はコスト的に有利なラッピングが主流ですが、深みのある色合いを表現するため、あえて手間のかかる塗装を選択しました。溶接の跡を見えなくする最新の技術も投入し、上質な車体を実現しています。今後数年かけて、当社の全車両をこのイメージで統一していく予定です」(運輸車両部・蜂谷良一さん)
似たような車両が多い東京の駅に12000系がやってくると、多くの人が「あの電車は何だ?」と注目し、「相鉄」という電車の存在を知る。やがてマイホームの購入を検討する時に、「都心に直通する相鉄って電車があったな」と相鉄沿線を候補に加えてもらう。そして、便利でリーズナブル、自然も豊かな沿線の魅力を知り、最終的に住む場所として選んでもらうーー。それが、相鉄の描くストーリーだ。
相鉄・JR直通線の開業は、相鉄が横浜限定の地域路線から東京・横浜直結の新たな都市間鉄道に進化する、「新・相鉄劇場」第2幕のスタートでもあるのだ。
車両デザイン
有料特急と見まごうハイクオリティーなデザイン
JRと同じステンレス製とは思えない、深みのある「YOKOHAMA NAVYBLUE」には、自動車にも用いられる雲母を配合して輝きを持たせたマイカ塗装が使われている。前頭部のデザインは、公共交通として「信頼のある顔」を目指し、文殊菩薩の乗り物である能面の「獅子口」をモチーフに。優先席の一部には座面を高く、浅くして腰掛けやすくしたユニバーサルデザインのシートを採用。室内灯は、朝・昼・晩で色が変わる。朝は爽やかな白色、夜は温かみのある電球色。数十秒かけて徐々に変化する。各車両の端に小さな鏡があるのは相鉄車両の伝統。もともとは「横浜の町に出かける前にちょっと身だしなみを」というコンセプトだった。
デザインからつり革の形まで
相鉄のこだわりが詰まった新車両は直通運転のシンボルです
車両担当
相模鉄道 運輸車両部 車両課 課長代理
蜂谷良一さん
相鉄・JR直通線はココがスゴい!
【1】新宿・渋谷だけでなく朝には大宮・川越まで駆け抜ける
【2】新型車両は運転席の後ろからの眺望も抜群!
【3】鶴見から羽沢横浜国大駅へのワープにワクワク!
フォトライター KURIHARA’S EYE
相鉄12000系は、運転台のガラスが大きく、客室から前方の見晴らしがJRのE233系より良好です。東海道新幹線や京急との並走、旅客列車がほとんど通らない貨物線区間、横浜の丘陵地帯を走る相鉄線内など、車窓もバラエティーに富んでいます。
取材・文/栗原 景 撮影/吉田 真、田中一矢、栗原 景、相鉄グループ