歴史的スペクタクルが今、酒場で!
普通、ホッピーなんかでナカを頼む時は、空になったジョッキなりタンブラーなりをお店の人に渡して、そこに焼酎を入れてもらうじゃない? でもこの店は、タンブラーは卓上に置いたままで、注文ごとにコップに入った焼酎がやってくるんだけど、このやってくるスピードが尋常じゃない。
どんなシステムなのか? 3杯目となる次のお代わりの時に、よ〜く観察してみた。
そしたら、すでに焼酎が定量入ったコップが店の片隅に何十杯も……いやいや百杯近くあるのかな……そのくらいの焼酎がすでに用意されて、客の注文を待ってるの! で、その用意されたコップの集合体がなんともカッコイイ!
直径50cmくらいの銀盆があって、その上に焼酎の入ったコップが隙間なく円状に置いてある。で、その上にまた銀盆が重ねてあって、そこにもコップが隙間なく並べてあって、さらに銀盆が重ねてあって、その上にまたコップがあって、また銀盆があってその上にさらにコップ。
ようするにシャンパンタワーならぬ、焼酎タワーが店に建ってるんですよ!
それもシャンパンタワーって上に行くにしたがって細くなってるけど、上から下まで同じ太さの円柱状のタワーだからさ、なにやらバベルの塔といってもいい偉容!!
それが焼酎の注文が入るたびに上から少しずつ小さくなっていく姿は、なにやらバベルの塔が崩壊していく様を見せられているように、なんなんだ、このちょっとしたスペクタクルは!? と目を奪われましたよ、本当に。
3杯目が終わる頃、豚スジ煮も段々と少なくなってきたんだけど、皿の下の方にたまった煮汁がまたうまいんだ、堪らないほど。豚スジ肉のゼラチンが大量に溶けているからか、冷めてくると段々とネバネバしてきてね、その煮汁が。
粘度があるから、皿持って口に流し込むなんてことはできないから、もう皿の底に付着したヤツを舌を使ってペロペロと犬のように舐めたい衝動にすらかられるも、さすがにそれはできないだろうと、ハシでこそぐようにすくっては、そのネバネバが付着したハシをペロリと舐めるのがまたたまらない。
で、そのネバネバの中に肉繊維の破片がちょっと混ざってたりして、それもまたたまらない。
で、気付くと、その繊維が歯と歯の間に挟まってたりしてさ。グィ〜ッなんてつってサワーを流し込んでも取れなくて、それを舌で取ろうと口の中でモゴモゴやっても、なかなか取れなくて、でもいつしかポロッなんて取れて、それを大事に噛みしめると、久しぶりにお宝にありつけたような嬉しさを感じたりして、ン〜、なんか全てが有り難い!!
そうこうしてるウチに、店は、このコロナ騒ぎにも関わらず、やっぱり満席になってきた。
イイ店は、こんな騒ぎ関係ないのか……と思い、店を出で、駅に向かう途中で客が一人もいない居酒屋があったので、そこに入ったまた3杯ほど呑んで帰った。以上!
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。