毛(ウール)100%。毛玉に対する注意書きもある(フラッシュ使用で色に赤みがあるが、他の画像と同じ生地)。
次はウール100%、昨秋購入の薄手セーターだ。数回しか着ていないのに、やはり前側左下エリアに毛玉群発生。毛玉は小さく、モコモコセーターのように生地上に飛び出していないので、ハサミでは刈れない。はたしてこのブラシなら、毛玉を刈り取れるのか?
結果はなんと、“毛玉取り”能わず。だが画像をご覧あれ。呪縛から解き放たれたかのように、毛玉の“塊はほどけて消えた”のだ。老舗浅草専門メーカー、あっぱれなり。
綿100%。セーターは毛羽が丸まって毛玉になるが、このマシュマロガーゼ生地は毛羽が毛玉だけではなく、撚った紐状にもなるので、メーカーは毛羽落ちと表記していると思われる。話をシンプルにするために、本文ではすべて毛玉と呼ぶ。
最後は、パジャマだ。創業70年超、創立記念日が小学館と同じ8月8日という老舗タオルメーカー、内野(株)の自信作で、綿100%、特許取得のマシュマロガーゼ生地だ。まさにマシュマロ感覚。肌触りはふわふわほんわか、ボリューム感があるのに軽くて暖かい。この矛盾した言い回しは、着た人でないと理解できないだろう。セーターならカシミア級の、暖かくて軽くて肌触りのいい生地だ。ただし値段もカシミアクラス、パジャマながら2万円前後となる。1着しか持っていないので他のパジャマも着るが、その着心地は雲泥の差だ。
それはさておき、このマシュマロガーゼパジャマ、とにかく毛玉が出る。ふわふわガーゼ生地なので、摩擦は苦手なのだろう。初めて洗濯する際、何も考えずに洗濯機に入れた。洗濯終了、干して乾いたその姿は、驚き桃の木、毛玉の木。他の洗濯物との摩擦で、毛玉が大量発生してしまったか。洗濯ネットを使えば防げたと思うが、今さら元には戻るまいと、以後もネットは使っていない。よって洗うたびに、毛玉があちこちに生じる。時たま気になり指ではぎとるが、ウールと違い簡単に取れるので、ちょっとした愉楽になってしまった。
では、このガーゼ生地をブラシで擦る。その取れようは、モコモコセーターの比ではない。労せず見事に表面はフラットになったが、あまりにも取れてすり減りそう。不安になって、一部エリアだけで作業中止とした。人に見られるわけでもなし、パジャマ全体をフラットにする必要はない。ガーゼ生地ゆえ、本来なら常に洗濯ネットを使用すべきだろう。それでも着用による摩擦で毛玉が生じるはず。そこでこのブラシで軽く擦るというのが、この生地の賢いメインテナンス方法ではないだろうか。
ブラシクリーナーで本体から毛玉を取り除く作業は、意外と手間がかかる。
ところで毛玉取りブラシをネット検索すると、1000円ほどの商品もある。謳い文句通りなら、その利便性はこの商品と大差ないかもしれない。価格は6対1と段違いだ。1000円でガッカリなら諦めもつくが、6000円で落胆は心外だろう。だから買うも買わぬも、どっちを買うかも、人それぞれ。要は、「“老舗”“専門メーカー”“浅草”という3大オーラをどう捉えるか!?」「テレ朝テレビ通販の説得力に乗るか、その手は食わぬと引くか!?」だ。
さて最後にひと言。実は現役時の50代前半に、某イタリア高級ブランドのカシミアセータを買ったものの、毛玉が心配で一度も着ていない。上記3種の生地トライで、このブラシならカシミア毛玉もどんと来い、の心境になった。暖冬から春の入り口の今、セーターおろしは控えるが、来冬は10年の沈黙(=宝の持ち腐れ)を破ることにしよう。
文/斎藤好一(元DIME編集長)