2.日本IBMの「日本IBM こがも保育園 ~The Wild Duckling Nursery School~」
日本IBMの中央区日本橋箱崎町にある本社、箱崎ビルの1階には、「日本IBM こがも保育園 ~The Wild Duckling Nursery School~」という企業内保育園がある。
2011年1月に誕生した、日本IBMグループの社員が利用できる保育施設だ。
これまで、出産や育児を理由に離職を考えていた社員が安心して出産・育児と仕事との両立ができるよう、社員のワークライフ支援するための施策の一つだ。
「こがも」の名の由来は、日本IBM社員が“野鴨”の精神をいつまでも忘れず、次世代に伝えていくことを祈念するところからきている。
“野鴨”の精神とは、1952年から1971年までIBMの社長を務めた、トーマス・J・ワトソンJr.が提唱した「野鴨たれ」という言葉からきている。「野鴨を飼いならすことはできるが、飼いならされた鴨を野生に戻すことはできない。IBM社員は飼いならされて飛ぶのを忘れて餌を待つ鴨になるのではなく、自分の考えを持って自由に羽ばたく野生の鴨であってほしい」という、社員の自主独立を奨励する意味がある。
保育園では幼児教育専門ネイティブスピーカーによる英語プログラムや音楽に合わせた表現活動であるリトミック、希望者にはスイミング(外部への施設へ保育園が送迎をしている)など、充実の知育プログラムが用意されている。
その他、保育園で使用する衣類のクリーニングサービスやおむつの販売、20時までの延長保育などの保護者向けサービスもある。
●パパ社員の利用状況とメリット
こがも保育園に子どもを預ける親は、どんなメリットがあるだろうか? 日本IBMの担当者は次のことを挙げる。
「オフィスと預け場所が同じであることから、送り迎えの時間が短縮されます。また、同じビルにいることから、何かあったときにはすぐにかけつけられる安心感があります。
また、ハロウィンでは子どもたちが仮装して社長室を訪問したり、クリスマスには役員がサンタに扮してプレゼントを渡したり、会社の管弦楽団のコンサートを聞いたりなど、企業内保育園であることを活かしてさまざまな行事を行っているため、親子が交流できる機会が多くあるのもメリットだと思います」
送り迎えの利便性のほか、すぐにかけつけられるというメリットも。また行事を通じて、親子が触れ合える機会が多いのも親としては嬉しい。
こがも保育園に子どもを預けているパパ社員は、どのくらいいるのだろうか?
「夫婦共にIBM社員のケースを含め、約7割のお子さんの父親が当社社員です」
多くのパパ社員が利用しているこの保育園。特にパパ社員にとってのメリットは?
「パパ社員にとっても送り迎えしやすいことは大きなメリットです。こがも保育園では、朝夕はパパ社員が送り迎えをしている姿がよく見られます。また、企業内保育園ならではとなる、先に述べた行事の取り組みから、お子さんがパパの会社を身近に感じてくれているようです。冗談で『保育園があるから会社は辞められない』と言うパパ社員もいるほどです。パパ社員のワークライフ支援のみならず、エンゲージメントの向上にもつながっています」
こがも保育園の、今後の展望はどんなことがあるのだろうか?
「事業所内にあるジム『GENKI』で、保育園の園児向け体操教室をはじめる予定です。当社では保育園だけでなく、小学生向けに『こがも学童クラブ』を小学校の長期休暇中に行っています。この学童クラブでは、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics=科学・技術・工学・数学)や英語、IBMのお仕事紹介などを取り入れています。今後も、お子さんを持つ社員が安心して働き続けられるよう、そしてプログラム内にはIBMらしい内容を取り入れ、より一層ワークライフ支援を推進していく予定です」
いずれも、一般の託児所や保育園に引けをとらない、充実の保育や知育が受けられる企業内託児施設という印象。またパパ社員にとってのメリットは、送り迎えの時間短縮や、子どもと日中に触れ合えるというところが大きいようだった。
こうした企業内託児施設は、新卒や中途社員の志望動機になることもあるだろう。今後、各企業で特色のある託児施設づくりの競争が進んでいくかもしれない。
【参考】
楽天株式会社「楽天ゴールデンキッズ」
https://corp.rakuten.co.jp/
日本アイ・ビー・エム株式会社「日本IBM こがも保育園 ~The Wild Duckling Nursery School~」
http://kogamo.jp/
取材・文/石原亜香利