しかし猫カフェにあらず
こう書いていると勘違いされそうだが、猫猫寺は猫カフェではない。猫雑貨ショップ、和室カフェ、アートギャラリーが三位一体となった空間だ。入口で靴を脱いであがって最初に目にするのは、ところせましと陳列されている猫雑貨(と若干の犬雑貨)。これらは、猫猫寺の運営者が、昔から知己のある作り手から仕入れたものが大半だそうで、ここでしか買えないものがほとんど。
カフェスペースは畳敷きの広間で、自家焙煎コーヒーやソフトドリンクなど飲み物のほかに、看板メニューであるカレー(「猫猫寺カレー」と「ベジカレー」)がある。デザートにおすすめなのが、猫型ロールケーキと肉球マシュマロがかわいい「プリンにゃらモード」だ。
写真映えもして人気の「プリンにゃらモード」(コーヒーは別途)
そして、カフェスペースの隣室が「本堂」。ここに、入口ポスターに写っていたご本尊「大日猫来」の像が鎮座する。
店のちらしの裏に説明があり、「この大日猫来様の眼力には秘密があり、ご参拝の皆様がどの位置から拝まれても22方にらみで、しっかりと目を合わし喜びを招いてくださいます」とのこと。「22」は「にゃんにゃん」で、猫猫寺ではありがたい数字とされている。
「22方にらみ」で、斜め横から拝しても、こちらを見つめている…
若き猫絵師の描いたアートに心奪われる
そして、圧巻なのがアートギャラリー。地階の洋間を含め、猫猫寺の室内のいたるところに、猫アートが飾られている。多くは1点ものの絵画だが、なかには襖絵や立体造形もある。
作者は、弱冠二十歳の猫絵師・加悦雅乃(かやみやの)さん。猫猫寺の管長・加悦徹さんの一人息子で、物心ついたときから猫絵を描き始め、十代の間にフランスの国際公募展の「サロン・ドートンヌ展」に最年少で入選するなど、大きな実績を築いている。
父親の徹さんは、この道30年の神社仏閣のベテラン彩色師。全国のお寺や神社に関わるあらゆる彩色を手掛けている。
もともと彩色師一筋であった徹さんが、猫猫寺を立ち上げるきっかけとなったのは、東日本大震災だという。この惨事をきっかけに「自身の生き方を見つめ、自分たちが楽しいと思うことを発信しよう」と家族会議を開いた。そうして家族全員が大の猫好きであることから、猫雑貨の店をオープン。猫猫寺は、さらにそれを多方向へと発展させたコンセプトの店となる。
猫猫寺の界隈には、目立つ観光スポットもなく、「ついでに行ってみる」ような所ではない。それでも、SNSなどの口コミで国内外から多くの人がやってくるのは、猫愛あふれるユニークな店づくりが、人々の関心を惹きつけるからにちがいない。猫好きなら、京都観光の折に立ち寄っておきたい、おすすめスポットだろう。
・猫猫寺公式サイト:https://nyannyanji22.www2.jp/
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)