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バルセロナ市が目指す持続可能なスマートシティーのあり方と取り組み

2020.02.25

環境やエネルギー、人口問題などの都市を取り巻く社会課題を、新しい技術やアイデアで解決する次世代の街づくりを目指す「スマートシティ」への取り組みが、いま世界で拡がりを見せています。日本でもスマートシティの拡大と高度化のための貢献を目的とした団体「一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(Smart City Institute Japan)」が日本経済新聞社と三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)によって設立され、1月20日に特別シンポジウム「日本・バルセロナ スマートシティフォーラム」が開催されました。ここではプログラムの中から、スマートシティ先進モデルとして世界から注目される、スペインのバルセロナ市の取り組みを取り上げて紹介します。

スマートシティ・インスティテュートの特別シンポジウム「日本・バルセロナ スマートシティフォーラム」が東京で開催された。(Photo:主催者より提供)

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不満と失敗から市民中心の計画へと変革

フォーラム基調講演の冒頭でスマートシティ・インスティテュート代表理事の柳川範之氏は世界各地でスマートシティへの取り組みが進められているが、その目的は町で生活する人たちの利便性を高め、豊かにすることにあると説明しています。重要なのは、IoTの発展などにより町から自動的に得られたデータを分析し、積極的に利活用して人々の活動や新しいサービスの提供、事業展開を促進することであり、そのためには行政のデジタル化が必要になるとしています。

スマートシティ・インスティテュート代表理事の柳川範之氏。(Photo:主催者より提供)

日本でもデジタル・ガバメントの取り組みは以前から進められていますが、バルセロナ市は世界でも早い時期からスマートシティの取り組みを進めており、都市の持続可能性をテーマに、モビリティ、エネルギーなど都市計画に関わる様々なプロジェクトを実施する公共コンソーシアム「都市生態学庁(BCNecologia)」を2000年から運営しています。都市生態学庁でディレクターを勤めるジョゼップ・ボイガス氏は「スマートシチズンが創造する都市モデル」というプログラムの中で、「バルセロナ市の都市計画は、住宅計画やインフラ、モビリティといったすべてが市民を中心に考えられている」と紹介しています。

バルセロナ市都市生態学庁ディレクターのジョゼップ・ボイガス氏。(Photo:主催者より提供)

バルセロナ市は首都マドリード市に次ぐスペイン第2の都市で、アントニオ・ガウディが設計したサグラダ・ファミリア教会やピカソ美術館などがある有名な観光地として知られていますが、世界に知られるようになったのは1992年のバルセロナオリンピック開催がきっかけでした。続いて、2004年に開催される万国文化フォーラムに向けて都市改革が進み、スマートシティに向けた取り組みが始まります。ただし、当時はインバウンド優先だったため地域住民の間に不満が広がり、2012年のスペイン金融経済危機をきっかけに、行政と市民が一緒に社会課題の解決に取り組むスマートシティを目指すという現在の方針へ、大きく見直されました。

大きく2つあるプロジェクトのうち「スーパーブロック」は、格子状に張り巡らされた都心部の道路を見直し、自動車の乗り入れや流れをコントロールして歩行者専用道路と新しい公共スペースを作る計画で、標識とルールを変えるだけという低コストな方法で実施することができました。市民が率先して空き地を活用するようになり、自然と人が集まって中心地が活気を取り戻したそうです。

スーパーブロックは中心地の道路を歩行者優先で自動車の流入を減らし、公共スペースを作ることで快適性を高めた。(日経チャンネルより引用)

中心地に市民の憩いの空間が形成された。(日経チャンネルより引用)

もう一つの「リングロード」も、最初はオリンピックの時に建設された環状道路の中へ自動車の乗り入れを制限するというのが目的で設けられましたが、山と海に囲まれた地形を活かすために地域を大きく4つに分けて再定義するという見直しが行われました。単なる快適さだけでなく世界で議論されている気候変動の課題の解決も視野に入れ、自然と共生する緑の回廊都市を作ろうと議論が重ねられています。各エリアで市民が環境を活かした様々な体験ができるよう、市民の憩いの場になるウォーターフロント開発なども進められ、結果的に80%の道路が市民に開放され、ヒートアイランドと騒音を減らし、生物多様性の維持も進んでいます。

「リングロード」はオリンピックで建設された環状道路を有効活用し、自然と共生する都市計画が行われている。(日経チャンネルより引用)

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