今回、そんな新型ハスラーのトップグレードでもある、鮮烈なバーミリオンオレンジ×ガンメタリック2トーンに塗られたHYBRID Xターボ4WDで、東京~軽井沢のロングラン試乗を試みた。
運転席に着座し、まず感動したのは、セパレートタイプに改められたシートのかけ心地の良さだ。厚みのあるふんわりとしたクッション感が心地よく、まるでリビングの上等なソファに座っているようなのである。お尻が沈み込むことで、着座姿勢が乱れにくいのも好印象。東京~軽井沢間、高速走行と山道走行を含む約170キロのドライブも、想定外に快適、というか、ストレスフリーだったのだから、驚かされる。ちなみに、運転席、助手席シートヒーターは全グレードに標準装備。この季節にはありがたい。
東京~軽井沢間を新型ハスラーのHYBRID Xターボ4WDが、ストレスフリーで走ることができた理由は、前席のかけ心地の良さだけではない。そう、絶品と言える、質の高い乗り心地である。それはもう、上級車さながらで、いや、下手なコンパクトカーを凌駕する快適さなのである。具体的には、終始フラットライドに徹し、路面の継ぎ目、段差などを乗り越えても、上記のボディー剛性の高さ、しっかりとした足回り、乗り心地に特化したスペシャルタイヤなどにより、不快なショック、音、振動、突き上げ感とは無縁。それは前席だけでなく、後席でも実感できるものだった。
操縦性も文句なしである。重心に配慮した穏やかな操縦感覚ではあるものの、カーブでの安定感、姿勢変化の少なさは、軽自動車らしからぬレベルにある。カーブを勢いよく曲がっても、限りなく水平感覚を保ったままクリアしてしまうのだから、安心・安全だ。このあたりも、先代から大きく進化した部分と言える(先代で勢いよくカーブを曲がると、車体が倒れ込みそうな挙動を示すこともあったのだ)。
関越自動車道、上信越道での高速クルージングも快適そのものだ。直進安定性は見事で、ビシリと直進し、運転にかかわるストレスに直結する、無意識のうちに行っているステアリングの微修正も必要なし。そして車内は軽自動車らしからぬ静かさに包まれる。言い変えれば、もっとずっと大きい上級のクルマに乗っているような感覚だった。
さらに、新型ハスラーのターボモデルには、スズキ軽初採用のACC(全車速域対応のアダプティブクルーズコントロール)が装備され、頻繁なペダル操作から解放される、ACCの再加速性能にも満足できるドライブが可能になったのである。今回、高速道路での渋滞には遭遇しなかったものの、0km/hから作動する渋滞追従機能付きのACCだから、渋滞時も万全である。
マイルドハイブリッド仕様となるターボモデルの動力性能はスムーズかつトルキーに発揮され、高速クルージングはもちろん、上信越道・碓井軽井沢ICからプリンス通りに至る山道の上り坂を苦も無く駆け上がってくれたのだから、恐れ入る。例え、エンジンを高回転まで回すシーンでも、不快なノイズとは無縁。
これならフル乗車、荷物満載のロングドライブもストレスフリーでこなせるに違いないと実感。一家に一台のファーストカーとして見事に応えてくれる、遊び心満載の、上級車を脅かすほどのスモールモビリティーそのものと言っていい。
最後にさらに充実したスズキ・セーフティサポートと呼ばれる先進安全運転支援機能について触れると、デュアルカメラによる自動ブレーキはもちろん、前後誤発進抑制機能のほか、後退時のブレーキ制御まであるのだから心強い。さらに標識認識機能では、スズキ軽として初めて三角形の標識=一時停止の標識も認識できるようになり、走行中、一時停止の標識に遭遇すると、チャイムとナビ画面上での標識表示で教えてくれるのだから、うっかり一時停止を見落とす心配もなくなるというわけだ。
新型ハスラーは、デザイン、機能、装備、使い勝手、先進安全運転支援機能の進化の大きさもさることながら、前後席の乗り心地の素晴らしさは、繰り返すが、軽自動車最上級どころではない、感動に値するレベルにあった。先代以上に大ヒットすることは間違いなく、今回、暖冬で軽井沢に雪がなかったため、雪道走行は試せなかったが、悪路、雪道の走破性、オールロード性能も抜群のはずである。お薦めは2トーンカラーのボディー。遊べる軽としての魅力、存在感が、デザイン的にも増幅するからだ。
尚、新型ハスラーの車中泊も可能な多彩なシートアレンジ性については、別途、NA FFモデルの試乗記にてお届けしたい。
撮影 雪岡直樹
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。