仕事がデキる人に仕事を頼んだり、何かを話しかけたりすれば、きまって自分にとって嬉しい対応が返ってくる。自分の求めることに的確に応えてくれるからだ。きっと周囲のデキる人は、これらのスキルを兼ね備えているのではないだろうか。
そこで今回は、ビジネスにおける「相手のニーズに応える力」を伸ばす方法を、『話がゼンゼン伝わらない……が消えてなくなる本』などの著書を持つ「伝え方のプロ」、瓜生健一さんに聞いた。
「仕事センス」のある人の共通点~相手のニーズに応える力
産業能率大学総合研究所が、2018年11月、従業員数100人以上の企業に勤務するマネジャーを対象に実施した「仕事センス※に関するアンケート」によれば、「あなたの周りで“仕事センス”を感じる人の行動・エピソードがあれば教えてください。」の問いに対する具体的なエピソードとして挙がっていた内容のうち、次の内容は共通点がある。
※仕事センスとは…「顧客や組織の様々な期待に応えるために、周囲の状況を感じ取り、自分で判断してやり遂げる総合的な力」のこと
・相手の表情や言葉から真意を見抜くのに長けた人がいる。(59歳/男性/製造業)
・相手の求めることを的確に把握し実現する。(43歳/男性/建設業)
・痒(かゆ)い所に手が届くように先回りした答えが返ってきた。(45歳/女性/卸売・小売業)
これらの共通点は、相手の求めていることに的確に応えるスキルといえるのではないだろうか。
相手の求めることを的確に把握し実現するためには?
では、相手の求めることを的確に把握し、それを実現するためには、どのような方法が考えられるだろうか。「報連相」改善セミナーなどを実施し、ビジネスパーソンに効果的な伝え方を教えている瓜生さんは、次のように話す。
「大前提として、相手の言葉を漏らさず、ゆがめず、素直に“聴く”こと。それができた上で、的を射た“質問”をすること。臆せず『一番重要なポイントは?』『何を最も大切にすれば?』などと問えば良いでしょう。
ただしすべてを問うことはできないので、時間をかけて、一を聞いて十を知る“思考力”を磨くことも重要です。相手の一言から『…ということは?』と自問自答を繰り返す訓練をすれば、一から確度の高い十を得られるようになります」
まずは臆せず聴こうとする、知ろうとする姿勢が何よりも重要であるようだ。その上で、思考力がモノを言うことになる。
かゆいところに手が届く答えを出すには?
質問してきた相手に対して、かゆいところに手が届くような答えを出すためにはどうすればいいのか?
「一言で表現するなら『相手と同じ方向、同じ景色を見る』ようにすること。それを実現するためには、次の4つを意識することが重要です。
・視座…相手はどこから見ているのか?
・視点…相手はどこを中心に見ているのか?
・視野…相手はどこまで広く見ているのか?
・視力…相手はどこまで細かく見ているのか?
その上で、相手の『個人メリット』と『手間の軽減』を実現するには何が必要かを考え、実行をコミットすれば『かゆいところに手が届く』と言ってもらえるかもしれません」
自分が見ている方向や景色から、「相手」に切り替えることがまず、重要であるようだ。
「相手のニーズを捉えて実現する」ことができるようになるには、どんな訓練が必要?
普段から、「相手のニーズを捉えて実現する」ことができるようになるには、どんな訓練が必要になるだろうか?
「簡単に『わからない』とあきらめる癖、思考停止する癖を治すことが必要です。言い換えれば、粘り強く考える訓練を積むことが必要ということです。
2~3ヵ月ほど論理思考(ロジカルシンキング)を集中して学ぶのが理想ですが、それが無理なら、状況や行為、自身が使う言葉を『小学生でもわかる言葉や説明』に言い換える訓練を続けるのが良いでしょう。例えば『ビジネスってどういう意味?』という問いの答えを小学生でもわかる言葉を使って説明してみる、ということです。
もし余裕があれば、さらに質問力を身につけるべく、国際コーチ連盟(ICF)準拠のカリキュラムを提供するコーチングスクールをひとつ選び、そこで質問の仕方を学ぶのも良いかもしれません」
とにかくロジカルに考える癖をつける。そのために、あきらめず「小学生でもわかる言葉や説明」を意識する。このトレーニングにより、仕事がデキる、相手のニーズに応えられる人に近付くことができるようだ。
仕事がデキる人が持つ、一つのスキルとして、ぜひこのスキルも会得しておきたい。
【取材協力】
瓜生健一(うりゅうけんいち)さん
株式会社トンパニ代表/GCS認定プロフェッショナルコーチ
コーチング/コンサルティング形式でクライアントの思考や感情の整理を行う。著書に『話がゼンゼン伝わらない……が消えてなくなる本』等がある。
https://tongpanyi.co.jp/
取材・文/石原亜香利