味と見た目の再現が不可欠な人気商品とのコラボ
『スフレ・プリン』は発売と同時に想定の3倍以上売れるなど、出だしから好調で、勢いは今なお衰えていない。現在までの販売実績について佐藤さんは、「ビックリしています」と率直な感想を明かす。発売から1か月後や2か月後にはリニューアルすることが珍しくないコンビニデザートにあって、発売から1年以上も売れ続けていること自体、異例なこと。1個258円(税抜)とコンビニデザートにしてはやや高めの値段設定なことを考えると、なおさらである。
当初は発売から3か月後あたりでフレーバーの変更を考えていたというが、あまりにも売れ行きが好調のため、フレーバーを追加することにした。まず2019年4月に『スフレ・プリン ストロベリー』、6月に『まっ白ミルクのスフレ・プリン』、9月に『スフレ・プリン ティラミスカフェ』を投入。いずれも終売したが、新フレーバー投入の意味を佐藤さんは「客層やターゲットを少しずらし、カニバリ(=カニバリゼーション:競合する自社の別の商品の売上を落としてしまうこと)を起こすことなく2品目でも売上を上げること」と言う。
『スフレ・プリン』を主に購入しているのは30歳代以降の有職女性。ストロベリーは味わいのわかりやすさから男性ユーザーの獲得が期待できること、ミルクは若い世代で現在人気が高いことから決まった。ティラミスカフェについては、ティラミスがコンビニの定番スイーツとして世代・性別関係なく広く受け入れられるものとして投入された。
2019年4月に発売された『スフレ・プリン ストロベリー』(現在は販売終了)
2019年6月に発売された『まっ白ミルクのスフレ・プリン』(現在は販売終了)
2019年9月に発売された『スフレ・プリン ティラミスカフェ』(現在は販売終了)
そして11月に、現在発売中の『たべる牧場スフレプリン』が発売される。ティラミスカフェと同じく、幅広い世代に支持されるものとして企画されたが、若い世代を意識して20歳代に人気の高い『たべる牧場ミルク』とのコラボレーションを決めた。
2019年11月に発売された『たべる牧場スフレプリン』。スフレには『たべる牧場ミルク』のパッケージに描かれている「うし」が焼印で押されている
人気商品とのコラボレーションはファンの獲得という意味では有効だが、忠実に再現されていないと不評を買ってしまいかねない。アイス以外でアイスの味と見た目を再現するという課題に直面した。
とくにスフレの見た目に関しては、焼き色をつけないでつくらなければならなかったことから、火を直接あてずに間接的な加熱で時間をかけて焼き上げるほどの手間のかけよう。そして完成したものに、『たべる牧場ミルク』の世界観の最重要ポイントである、パッケージの「うし」のイラストの焼印を押した。
味については『たべる牧場ミルク』の特徴である濃厚なミルク味をつくる。ミルクをふんだんに使ったことで、プリンの見た目がまっ白になったが、卵の配合が少ないプリンはさっぱりしすぎてイメージに合わない。黄身まで白いたまごをプリンに使用することで、濃厚かつまっ白な見た目のプリンが実現した。『たべる牧場ミルク』を製造している企業にも試食をお願いし、味の再現具合を確認したほどだ。
取材からわかった『スフレ・プリン』のヒット要因3
1.売場で目立つ
プリンの上にスフレを乗せたので、見た目のインパクト大。売場スペースが限られたコンビニではとにかく目立ち、来店客の目に留まりやすかった。
2.新食感が楽しめる
味わいの良さに加え、スフレのふわふわ、プリンのとろとろ食感が合わさることで生まれるふわとろ食感が楽しめる。味以外の付加価値が提供できた。
3.背徳感をくすぐる
2つのデザートを一度に食べるというのは、欲張りであると同時に後ろめたさを感じる。人の目が気になりできなかったりするものだが、最初から2つのデザートを合体したので、後ろめたさを感じることがない。人間の背徳感をくすぐり購入に結びつけた。
ユーザーの反応としては、味わいの良さに言及するものがある一方で、「癒しの食感」「考えた人、神」など味以外に関する高い評価も目立つ。「開発担当としては、味以外の面も高く評価していただけて嬉しい」と佐藤さん。今後も新フレーバーを適宜発売していくと、ふわとろ食感に魅了される人はこれからも増えることだろう。
製品情報
https://www.family.co.jp/goods/dessert/1940169.html
https://www.family.co.jp/goods/dessert/1940435.html
文/大沢裕司