清貧という名だけを心の支えに呑む
100円のおでんを注文した直後に思った。
きっとあの女性店員さんも思ってるだろうなぁ〜。
「あの客、100円のおでんはどれか? って聞いてきたと思ったら、本当に100円のしか頼まないでやんの! それも2ツだけ!」
そうとう貧乏臭いと思われたろう……とその時思ったが、今思えば、そうではないかもしれない…。
「貧乏臭いっていうか、ずばり貧乏!」
致し方のない話ではございます。
でも別にいいわ! その女と付き合うワケでもないし…。とはいいつつ、貧乏臭くても清貧な礼儀正しい男だとは思っていただきたいという深層心理があるんで、その頼んだおでんを運んできてくれた時なんか、いつも以上にしっかりした声と笑顔で、
「ありがとうございますッ!」
なんていったりしてね。まぁ、しつこいようだが、男なんてそんなモンである。これが男の店員だったら、
「あ〜どうもすっ!」
くらいなのにね。
まぁその後、ハイボールを2杯ほどおかわりする時も、いちいち、
「たびたびすみませんねェ〜」
なんていったりしましたよ。なにしろオツマミは最初のおでん2ツ以上頼む気なんぞまったく持ってないからね。せめて清貧感だけばあげておかないと。
だけどそこまでしても、今となってはすでに向こうの店員さんには、オレの記憶すらないだろう。男なんてそういうモン……というかオヤジなんてそういうもんである。
都合ハイボール三杯とオデン2ツだけで会計してもらう。予想価格800円と見ていたら、なぜか千円超えていた……その時は「ボラれた!」と思ったんだが、今この原稿を書きながら、呑んでる時にメモ替わりに撮っていたスマホの画面を見て気付いた。メニューの隅にはこうあった。
『価格は税別 席代380円』
まぁ洒落た店なんてそういうモンだよな…。
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。