100円の範囲と中年男の羞恥心
で、メニューを見るとボリュームゾーンは480円。しかし、そんなことはどうでもいい。頼むのは100円のおでんと、入店した時に決まっている。しかし、テーブルに置かれたメニューは夜営業時にも兼用のメニューらしく、どこにも“昼飲み時のサービスの100円おでん”の記載はなかった。
たしか入店する時に見た“おでん100円”の立て看板には、“100円は○○と○○と○○と……”みたいな但し書きがあったような気もした。おでんといえば、全部が全部100円というワケではないらしい。
だがハイボール199円を見た興奮で、それがなんだったかほとんど覚えてない。これはどのおでんが百円か聞いてみないことには……なにしろオレにはその100円が重要なのだ。
頼んだハイボールはすぐテーブルに到着したので、持ってきてくれた例のよくできた女性店員さんに聞いてみた。
「すいません、100円のおでんはどれですか?」
言った瞬間思った。我ながら貧乏臭い質問である、と。
しかし、よくできた店員さんは、にこやかに「ここらへんになります」と、オレがその時手に持っていたメニューを指さしてくれた。その指さした100円の範囲が正直どこからどこまでだ正確にはわからなかったが、ちょっとさっきの質問があまりに貧乏臭かったことをすでに恥じた状態だったので、しつこく、
「え? どこからどこまで?」
と聞くことができず、わかってないのに思わずいった。
「あ〜なるほど」
まぁ、男なんてそんなものである。その女性が離れてからメニューをよく見れば、5品ほど180円のおでんがあって、それがおでんの中では一番安い。指さした位置もそこらへんだ。立て看板に書いてあったおでんのタネの種類も5種くらいだった気がする。
あ〜これはその180円のおでんのみが100円になるんだろう、と勝手に解釈し『厚揚げ』と『玉子』を注文する。そして注文してからさらに恥ずかしい感情にとらわれる。