
職場の環境への取り組みにおいて「省電力化」は約5割と進んでいるが、「紙の削減」は約3割にとどまっていることが、エプソン販売株式会社による「ビジネスパーソンの職場における環境問題意識・実態調査」で分かった。
現場では「コピーやプリントは何枚まで」などの紙使用の規制で、かえって仕事効率が下がるという意見もある。果たして解決策は?
オフィス「紙削減」への取り組みは約3割にとどまる
エプソン販売が実施したこの調査は、2019年10月31日~11月1日に従業員500人以上の会社の会社員と、公務員のCSR関連、SDGs関連、オフィスの環境改善関連、経営企画、オフィス機器調達などの実務、意思決定者に対して行われたものだ。
勤務先または事業所で、環境配慮への取り組みに「関心が高まっている」と回答したのは56.8%と高い結果となった。
具体的には、「空調の温度調整(49.8%)」や「照明調整(照明の間引き、LED電球の導入など)(46.0%)」といった「省電力」に多く取り組んでいるようだ。
一方で、「印刷済裏紙への印刷利用(31.8%)」、「コピーやプリントの印刷枚数制限による削減(30.4%)」などの「紙の削減」への取り組みは、約3割にとどまっていた。
紙が削減できない理由とは?
職場での紙の削減は、なかなか難しいのが現状のようだ。一体どうしてなのか?
調査結果では、多くの職場が紙の削減に取り組めていない理由として、48.8%とおよそ半数が「今までの習慣や業務プロセスを変えるのが難しい」と回答している。
次いで、「電子データよりも紙で読む方が読みやすい(30.8%)」、「紙での保管を社内規則で定めているものが多い(24.4%)」と続いた。
現状、紙の削減に対して積極的に取り組めていないのは、日本における既存の商習慣・業務プロセスが関係しているようだ。
また、紙削減のための代表的な取り組みの一つである「コピーやプリントの印刷枚数制限による削減」 によって業務効率が下がることがあるかという質問には、53.7%と半数以上が「効率が下がることがよくある(14.5%)」、「効率が下がることがたまにある(39.2%)」と回答した。まだまだ業務において紙は必要不可欠であり、紙削減はむしろ業務効率低下につながるようだ。
現場をよく知るエプソン販売の担当者は、オフィスの現状を次のように解説する。
「今は、多くのオフィスの中ではデジタル化が進んでいるため、会議は資料を配らずにプロジェクターで投影し、会議後に資料をメール送付するなど、紙を減らす方向で取り組んでいます。しかし資料のデータ量が増えているためか、印刷量は減っておらず、むしろ増えているのが現状です」
業務効率を下げない紙の削減方法
この調査結果を受け、今後、職場で紙の削減による環境配慮への取り組みを浸透させるためには、既存の商習慣・業務プロセスをむやみに変えず、業務効率およびコストを下げる取り組みを実現していく必要があるとエプソン販売は述べる。
やたら紙削減、ペーパーレス化を叫ぶのは、現場に合っていないというわけだ。では対策は何があるか。その一つが、紙の使用に制限をかけず、使った紙をうまく再利用するという方法だ。
エプソン販売は、使用済み用紙から新たな用紙を再生産する「乾式オフィス製紙機」を活用する方法を提案する。これは使用済み用紙を単なるコピー用紙に再生するだけでなく、アップサイクルして、厚紙や色付き紙にすることで、名刺、賞状、ノート、カレンダーなど用途に合わせた多様な紙として再利用するものだ。
「紙は木材、水など多くの資源を使いますが、一方でアイデアを出すため、記憶するために書き留めるため、確実に保管するため等に必要で、まだまだ紙とビジネスは切っても切れないと思います。
そこで我々は、不要な紙は使わずに会議資料はプロジェクターで出す、保管用資料はスキャナーでPDFにするなどの取り組みを進める一方で、必要な場面では、紙を我慢せずに使うことをご提案しています。
エアコンの温度を快適温度にすることで業務効率が上がり、残業が減った、などの実証実験も行われていますが、業務効率を上げるためにも、良いアイデアを出すためにも、またそれらを保存するためにも、重要なところでは気兼ねなく紙を使っていただければと考えています」
紙を気にせず使える環境配慮の仕組みが構築できれば、業務効率を下げずに済む。ペーパーレス、紙削減の一点張りではなく、新たな発想が必要といえる。
取材・文/石原亜香利