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冬の京都の旅は石庭巡りがおすすめ!作庭家・重森千靑さんがガイドする奥深き石庭の世界

2020.01.09

曼殊院オリジナル石庭スイーツづくり

「曼殊院門跡」で執事長から枯山水の魅力を聞いた後、人気の和洋菓子店「一乗寺中谷」の協力で石庭スイーツづくり体験を行う。拝観料、呈茶代、石庭スイーツ材料費込みで税込4500円。2020年3月8日(日)、14日(土)実施。

〇曼殊院門跡

 門跡寺院とは、天皇、親王などの皇族関係者が出家して住職を務めた寺のこと。曼殊院は延暦年間(782~806年)、伝教大師最澄により、鎮護国家の道場として比叡の地に創建。947年、当時の住持・是算国師が菅原家の出生であったことから、初代別当職に補され、以後明治維新まで900年間、曼殊院は北野別当職を歴任した。明暦二年(1656年)、桂離宮を創始した八条宮智仁親王の第二皇子・良尚法親王が入寺、現在の地に堂宇を移し造営された。

 曼殊院の大書院、小書院は「桂離宮の新御殿」や「西本願寺の黒書院」と並んで数奇屋風書院の代表的な遺構とされている。また、書院の釘隠しや引き手、欄間などが桂離宮と共通した意匠がみられ、同じ系列の工房で作られており、曼殊院は“小さな桂離宮”ともいわれる。

 曼殊院には後水尾上皇や霊元天皇、近年では皇太子殿下(現、今上陛下)、秋篠宮両殿下 、常陸宮両殿下、平成24年には天皇皇后両陛下(現、上皇、上皇后陛下)が行幸啓されている。

 書院庭園は武家の庭や寺院の庭と異なる、いわゆる公家好みの庭。司馬遼太郎は「街道をゆく」の中で、「公家文化は豊臣期・桃山期に育成され、江戸初期に開花した。桂離宮と曼殊院は桃山の美意識の成熟と終焉を示している」と書いている。

「桂離宮と曼殊院は古今和歌集を表現したものとされ、庭は古今和歌集のリズムで造られたと言われている。石が立っているところが滝を表し、小川から流れ出て大海へ出るという仏教の教えと重ねている。小高い山になっているところは悟りを開いた方々が住む蓬莱山でこちらが娑婆世界。この船に乗って修行しながら悟りの世界へ行きましょうという庭の造りになっている。

 仏教は生きている間に仏になる“成仏”を目指していく。石、草、木も修行をすれば成仏できる、生命はみんな一緒という考え方であり、生きて修行をすればどんなものでも仏になれるということをこの庭で表現している。

 庭の美意識が生まれたのは室町時代で、禅僧でありながら作庭も行った夢窓国師が始まり。(宗教学者の)山折哲雄先生が仰っていたのは、京都の寺に来ると仏様を拝むよりも外の庭を眺めている時間が長いのは、外の世界に神様の気配を感じているのではないか、日本人は信じる宗教ではなく感じる宗教を持っていると。庭もそうした生命を感じる場所であると思う」(執事長 松景 崇誓氏)

 庭と共に楽しみたいのが数寄屋風書院の建物。茶室風の書院で、茶人たちの“形あるものはいつか無くなる”という諸行無常の思想を基に造られた、華美な装飾を一切排した軽やかさが特徴だ。

 重要文化財の虎と豹の襖絵は狩野永徳の作で、京都御所にあったものを移築。実物を見たことのない永徳は想像で描いたとされ、当時は虎がオスで豹がメスだと思われていた。

〇石庭スイーツづくり

 曼殊院から徒歩10分ほどのところにある「一乗寺中谷」は、宮本武蔵決闘の地といわれる一乗寺下り松の近くにある和洋菓子の店。江戸時代からこの地域に伝わる「でっち羊羹」が代表銘菓で、三代目の中林英昭さんと、妻でパティシエの恵子さんによる和と洋のテイストを生かした菓子づくりが特色だ。イベントでは曼殊院内で一乗寺中谷考案の「石庭スイーツづくり」を体験する。(※イベント時は、箱のサイズが画像にあるものとは若干異なる)

 看板商品である「絹ごし緑茶てぃらみす」をベースに、イベント用のオリジナル石庭スイーツを中林夫妻が考案。イベントでは夫妻のどちらかが講師を担当する。

「『絹ごし緑茶てぃらみす』は枯山水をイメージして作ったスイーツ。白い土台の上に小豆、黒豆、うぐいす豆が全部で9つのっている。今回はさらにリアルな石庭ができるようなトッピング素材を作った」(英昭さん)

「岩や小石の素材は試行錯誤した。岩は羊羹で作り、白は白胡麻、薄い色は竹炭、黒岩は黒胡麻でそれぞれ違う味に仕上げた。小石は五色豆の製法で砂糖衣と、炒ったアーモンドダイスでこちらも竹炭で着色。苔のような素材もアーモンドダイスを使って砂糖衣に抹茶を混ぜている。いずれも天然色素を使ったもので、日本の庭園に近い色が出せたのではないかと」(恵子さん)

【AJの読み】知れば知るほど奥深い、石と砂で表現した小宇宙

 社寺めぐりで庭を見るのは大好きで、石と砂で構成された静謐な空間は心が癒される。重森先生の明快な解説は素人でも非常にわかりやすく、室町時代の建物に溶け込む現代庭園を心ゆくまで楽しむことができた。京都通にもぜひおすすめしたいイベントだ。

 石庭スイーツづくりは思った以上に難しかった。スケッチ画を元にフォークで砂紋の線を入れる。ゆるい角度でそっと撫でるように描くと良いそうだが、つい力が入ってしまい、きれいに線が引けず何度も描き直しているうちに、下にある抹茶スポンジが露出。豆が沈んだり、小石に見立てた素材を盛り過ぎてしまったりと、やればやるほどドツボにはまっていく。結果、イノシシに荒らされた石庭となってしまった。

 見かけはひどいが味は最高。抑えた甘さの軽やかな味わいであっという間に石庭をペロリ。メディアでも紹介され、通販では8か月待ちという「絹ごし緑茶てぃらみす」が食べられただけで良しとしよう。自分の作品はとても公開できないので、中林ご夫妻のお手本を掲載しておく。

 この日の夕食は、「南禅寺 順正」にて、「ゆどうふ会席」(6500円・税込)をいただく。学問所であった「順正書院」(国の登録有形文化財)を店舗に転用した、歴史を感じる佇まいの中で食事が楽しめる。

 国産大豆とミネラル分の少ない京都の軟水で作った豆腐で、ミネラルは豆腐を固める作用があるが、少ない場合は固まる速度が遅く、きめ細やかな豆腐ができるそうだ。

 コースメニューは時季の食材の仕入れにより内容が変更するが、初冬の前菜盛合わせ(雲子のポン酢がけ、鯛の煮こごりのお寿司、くわいのチップス、黄金松風、海老と大徳寺麩と千社唐の串刺し)や、名物 ゆどうふなどに舌鼓。きめ細かな豆腐ということで、絹ごし豆腐のようなやわらかい豆腐を想像していたが、実際は重量感のあるしっかりとした豆腐で、ボリューム感もありお腹も満たされる。

文/阿部 純子

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