突然、営業先やプレゼン等で予想外の質問をされたとき、飲みの場で「ひと言どうぞ」と急に振られたとき、自分の専門分野以外のことを聞かれたときなど、準備のない状況で突然話さなければならないシーンに、詰まってしまった経験はないだろうか。
そんな突然の振りに対して、咄嗟にうまく的確に答えられるスキルを「咄嗟力」と命名したのが、テレビやラジオのアナウンサーの経験を持ち、現在は話し方の研修を行うコミュニケーション・スピーチトレーナーの加藤あやさんだ。咄嗟力が今、ビジネスパーソンに必要とされる背景や鍛え方を聞いた。
「咄嗟力」とは何か
「咄嗟力とは、『その瞬間にその場に相応しい対応ができる力』です。準備をしていなかったことに対してその瞬間にパッと頭の中で話を組み立て、それをその場や相手に合わせた話し方で伝える力です。瞬発力やアドリブ力と言い換えることもできると思います。
倒れそうになった花瓶をキャッチする、お笑い番組を見てつい大笑いするなどの“つい、咄嗟に”反応するものとは異なり、言葉の引き出しを増やし、それを組み立てる速度を上げる練習を積むことで、どんな人でも身に付く力です」
加藤さんがこの「咄嗟力」を取り上げたのにはどんな背景があるのか。
「周りのビジネスパーソンの方々から『急に話を振られたときに上手に答えられない』『話をパッとまとめて伝えるのが苦手』というお悩みをよく聞くようになったのがきっかけで、咄嗟力を取り扱う必要性を感じました。上手く答えられなかったり、まとめて伝えられなかったりしたせいで焦ってしまい、自分が思うような結果を出すことができない方がいらっしゃり、非常にもったいないと感じました。
私自身のアナウンサー時代の生放送出演経験が、そのような方々のお役に立てることができればと思い、この咄嗟力に力を入れ始めました」
咄嗟力が役立つシーン
加藤さんによれば、ビジネスの現場ではこんなシーンで咄嗟力が役立つという。
「社内ですと、『報連相』の際や、会議での発言等で役に立ちます。瞬時に話を組み立て簡潔に分かりやすく伝えることで、伝達の円滑化や時間短縮につながります。
社外ですと、営業先でのコミュニケーションやプレゼンテーション等で役に立ちます。予想外の質問やあまり詳しくない分野の話がされたときに、瞬時に臨機応変に対応することで、その場を上手に切り抜けることができます。
また、飲みの場で『ちょっとひと言どうぞ』と振られたときに咄嗟力があると、周りの人たちに『さすが!』と思われる挨拶ができ、評価が上がることも期待できます」