寺院でのお参りの作法
寺院でのお参りは合掌を基本とし、神社のように拍手を打ってはいけません。崇拝の対象は仏様です。神社の作法とは異なる点があるため注意しましょう。
山門から手水舎まで
一般的に、寺院の入り口には山門があります。神社の鳥居と同様、俗界との境界を意味する場所です。
中に入る際は、山門をくぐる前に、合掌しながら一礼します。帽子を着用している場合は脱ぎましょう。敷居を踏まないように、女性は右足、男性は左足からまたいでくぐります。
手水の手順は、基本的に神社と同じです。手水舎に一礼し、左手・右手・口・左手の順に清めます。口をすすぐ際も、柄杓に直接口をつけないようにしましょう。
参道を歩く際も、神社と同様、真ん中を歩かないようにします。参道の真ん中は、仏様の通り道とされているからです。
お焼香の作法
仏前に着いた後の作法は、以下の手順で行いましょう。
- お賽銭を入れ、合掌しながら一礼する。
- 右手の親指・人差し指・中指の3本でお香をつまみ、軽く左手を下に添えながら額の前に掲げる。
- つまんでいたお香を、香炉へ静かに戻す。お焼香の回数は宗派によって異なりますが、分からない場合は1回のみ行う。
- 合掌しながら祈願し、一礼する。
お香の代わりに線香がある場合は、近くのろうそくなどで火を付けましょう。火を消すときは手であおいで消すのがマナーです。息を吹きかけて消さないようにしましょう。
神社の二礼二拍手一礼は、寺院で行ってはいけません。そもそも、寺院内では拍手が禁忌とされることが多いです。胸の前でしっかりと手を合わせる合掌が基本と心得ましょう。
鐘について
大半の寺院には、『梵鐘(ぼんしょう)』と呼ばれる釣鐘があります。大晦日の除夜の鐘で108回突き鳴らされる鐘のことです。
梵鐘は、『撞木(しゅもく)』と呼ばれる棒で鳴らします。自由に突いてよい寺院の場合は、力を入れずに2~3回、お参りの前に鳴らしましょう。
寺院から去る際に梵鐘を突いてはいけません。お参りをした後に鐘を鳴らすことは、『出鐘』『戻り鐘』といわれ、亡くなった人を送る際の鐘とされて縁起が悪いからです。
自宅や実家での仏壇のお参り
仏壇は、寺院の本尊を自宅でも参拝できるようにしたものであり、合掌などの基本作法は寺院のものと同じです。仏壇でお参りする際のポイントなどを紹介します。
基本的なお参りの作法
自宅や実家で仏壇を拝む際の基本的な作法は以下のとおりです。
- 正面に正座し、本尊に一礼する。お供え物がある場合は、一礼した後に供える。
- ろうそくに火をつけ、その火で線香に火をつける。炎が上がった場合は、線香を持っていない手であおいで消す。
- 香炉に線香を立てる。
- 合掌して鈴(りん)を鳴らし、御経を唱え、終わったら再び鈴を鳴らして合掌する。
- 手であおいでろうそくの火を消し、最後に一礼する。
鈴は、本来読経の際に用いられるものであり、合掌礼拝や焼香でむやみに叩くものではないとされています。
読経をしない場合は鈴を叩かず、焼香後に1回合掌しましょう。
朝夕の2回のお参り
仏壇へのお参りは、毎日朝と就寝前の2回行います。どちらも作法は同じで構いません。水や仏飯などは朝にお供えし、就寝前のお参りでろうそくの火を消した後に下げましょう。
就寝時に仏壇の扉を閉めるべきかどうかについては諸説あり、宗派や地域によっても異なる場合があります。仏壇が家庭に設けられた寺院であるという意味から考えれば、本来は閉めておくべきでしょう。詳しくは菩提寺や地域の仏具店などに相談してみてください。
お供えについて
仏壇にお供えするものは『五供(ごく)』と呼ばれます。香・花・灯燭(とうしょく)・浄水・飲食(おんじき)の五つです。
香は線香、灯燭はろうそくを指します。飲食は自分たちの主食を指し、主にご飯を供えます。浄水は水やお茶を供えますが、浄土真宗の場合は浄水を供えません。
法要・法事やお盆の時期に実家などへお参りに行く場合は、果物やお菓子、お花などをお供えするとよいでしょう。ろうそくや線香などの消耗品もおすすめです。