WeWork渋谷スクランブルスクエア拠点。共有エリアのデスクスペース。
3500デスク、国内最大の拠点がオープン
新しい渋谷のシンボル、渋谷スクランブルスクエアに12月2日、WeWorkの新拠点がオープンした。
ユニークで洗練されたデザイン、ガラス張りの明るく開放的なスペース。N.Y.生まれのWeWorkは今や世界120以上の都市に約850拠点を構える世界一有名なシェアオフィスだ(2019年12月上旬時点)。日本へは2018年2月に上陸し、現在東京、大阪、福岡など6都市に展開。拠点は年内に26を数える予定だ。
渋谷スクランブルスクエア拠点は5フロアに約3500デスクを有する。オープン時点で国内最大規模になる。渋谷という土地柄、IT系、ベンチャー関係者の入居が多いとみられるが、実際には食品やアパレルを含め多岐にわたる。住友生命保険、そごう・西武、アサヒビール、大日本印刷など大手企業もオープンと同時に入居している。
新たなパートナーとの出会いを求める大手
オフィススペースのミーティングルーム。基本的にWeWorkの部屋はガラス張りで、通路からよく見える。
その大手ひとつ、アサヒビールはマーケティング本部事業推進室チームが入居している。目的は新事業を生み出すきっかけになりそうなパートナー探しだ。今年3月に、一足先にWeWork東急四谷拠点に入居し、WeWork内でイベントを開催するなどして感触を探ってきた。製品を飲んでもらいながら、さまざまな他業種の参加者からアサヒの課題解決のアイデアを募るという趣向だった。
WeWorkでは入居者が主催するイベントも盛んに開かれる。パートナー探しを目的にしたメンバー(入居者)にとってイベントはまさに出会いの場、お見合いの場といってもいい。拠点をまたいだイベントも行われている。
大日本印刷は、デジタルメディア時代にインク需要がシュリンクする中で、ズバリ、“新しい価値設計”を使命にWeWorkにオフィスを構える。こちらも昨年秋、すでに渋谷のもうひとつの拠点であるWeWorkアイスバーグに入居している。「印刷技術にこだわらない新たな技術に主体的に取り組んでいく。それには必ずしも市ヶ谷(本社)にいる必要ない」というわけだ。グローバルな展開を視野に、東京の中でも今注目を集める渋谷のWeWorkで新しいネットワークづくりを目指している。
「オフィスはWeWork」がブランディングツールに
ドリンクコーナーのコーヒーマグ。セルフのコーヒーはフリー。15時からはビールもフリー!
大手が新事業開発のためにマーケティング部門や企画部門を送り込んでくるのに対し、ベンチャー系はWeWorkをブランド力アップのツールとして活用しようとしている。
オンライン商談システムを手がけるベルフェイスは昨年11月に東京スクエアガーデン拠点(京橋)のメンバーになった。その主な目的は採用対策だ。「WeWorkには最先端のイメージがあり、求人に対する応募者数が4倍に増えました」(広報)。
女性のためのファイナンシャルコンサルティングを行うbookee(ブーキー)は、6か所のスタジオがすべて都内のWeWorkだ。このたび渋谷スクランブルスクエア拠点にも入居した理由を、「若い女性に身近な街。その最先端のオフィスでお金の勉強をしたいという女性にアピールできる」(広報)と話す。
サテライトや支部ではなく、はじめからWeWorkに本社を置くベンチャーもいる。フォントメーカーのモリサワからスピンアウトしたブランティング会社ZeBrandは、WeWork丸の内北口拠点に本社を置いている。すでに北米や欧州で事業展開している同社は、WeWorkのグローバルな知名度がそのまま自社の認知度アップにつながると認識。さらに「海外のWeWork拠点が活用できるだけでなく、海外のメンバーが来日時に立ち寄る場所でもあり、出会いの可能性が大きく広がる」と、渋谷スクランブルスクエア拠点へも入居した。
このようにベンチャーにとってWeWorkのメンバーであることが大きな強みになる。新規事業への糸口を見つけたい大手と、もともと新しいアイデアで勝負をかけたいベンチャー。このほかフリースペースには数多の、他業種にわたるフリーランスが出入りしている。イノベーションに飢える日本で、その可能性が今いちばん高いのは、大手、ベンチャー、フリーの三つ巴による化学反応が期待できるWeWorkかもしれない。
取材・文/佐藤恵菜