ロールオーバーの方法
具体的に、ロールオーバーの方法について見てみましょう。なお、例示は(一般)NISAの投資枠120万円で考えており、ジュニアNISAの場合だと投資枠は80万円になります。
■ロールオーバー資金がNISA投資可能枠より少ないとき
【NISA投資可能枠120万円】−【ロールオーバー資金50万円】=70万円
2014年にNISA口座で投資して、2019年末期限の資金を2020年のNISA投資可能枠を使用する場合、2020年は残りの70万円の枠内で新たにNISA口座での投資が可能です。
■ロールオーバー資金がNISA投資可能枠より大きいとき
2014年NISA口座で投資して、2019年末に150万円となり2020年のNISA投資可能枠を使用する場合、120万円を超えていても全額ロールオーバーすることができますが、2020年のNISA投資可能枠で新たに新規投資することはできません。
では、次にロールオーバーはどのような時に使うべきなのかをご紹介します。
どんなときにロールオーバーするべき?
■非課税期間終了時評価損→値上がりする可能性があると考えるとき
NISA口座で買付した金融商品が評価損の場合、課税口座に移した後値上がりして元本に戻ったとき、その戻った分にも課税されてしまいます。
(例)評価損でロールオーバーせずに課税口座に移管すると…
2017年A株式を時価100万円で買付
→2022年NISA非課税期間終了時時価80万円(-20万円の評価損)
→売却せずに課税口座に移管(時価80万円で買付したとして移管される)
→その後、A株が時価100万円になり売却
【(100万円-80万円)×20.315%=40,630円】の課税がされます。
このように、含み損をしてNISA非課税期間が終了し値上がりを待つ場合、ロールオーバーをしないと、NISAで買付した価格で売却しても課税されてしまいます。
■評価益でまだまだ値上がりしそうと考えている
(例)評価益で課税口座に移管した場合
NISA口座でA株式を時価100万円で買付
→NISA非課税期間終了時、時価120万円(+20万円の評価益)
→A株式を120万円で買付したとして課税口座に移管
→A株式が時価140万円とさらに値上がりした場合、【(140万円-120万円)×20.315%=40,630円】の課税とされます。
したがって、株価がさらに上昇すると考える場合はロールオーバーするのがおすすめです。また、配当や株主優待目的で長期で保有したい場合もロールオーバーをすると良いでしょう。
「(一般)NISAの投資可能期間は2023年まで」ロールオーバーはできるの?
株式や投資信託などへの投資で得た、配当金・分配金や売却益などの利益が非課税になるNISAですが、(一般)NISAについては、2023年に終了予定となっています。
ロールオーバーは、非課税期間終了時の翌年のNISAの新規投資枠を利用するため、2019年からの新規投資においては非課税期間終了時が2023年の(一般)NISAの制度自体が終了する予定となっているため、ロールオーバーが利用できません。
しかし、政府・与党は現行のNISAに変更を加えて、「新NISA制度」をつくる予定となっています。新NISAは、投資可能期間を2028年までとし、現行が120万円の投資枠だったのに対し、リスクの低い投資信託に限定した積立をした人(年20万円まで)だけが現行の株式や限定されていない投資信託などに年102万円まで投資できる制度になるようです。つみたてNISAと現行(一般)NISAのハイブリッドのような制度になる予定で、ロールオーバーについてはまだ確定していませんが、2024年以降も制度が続くため、2019年以降の投資についても、ロールオーバーできる可能性が高くなっています。
なお、ジュニアNISAについては投資期限の2023年は延長されませんが、もともとジュニアNISAは非課税期間の5年間を過ぎても、売却しない限り口座開設者が20歳になるまでロールオーバーすることができます。
(参考)日本経済新聞 2019年12月7日朝刊
文/大堀貴子