マイナス思考グセを直すコツは「緩める」こと
マイナス思考グセを直すにはどうすればいいだろうか。
「そもそも、プラス思考が完全に良いとは言えません。プラス思考も行き過ぎると衝動的になることもあります。プラスとマイナスのバランスが大事で、マイナス思考を『直そう』とするのはあまり良くないのです。ですからマイナス思考パターンを『緩めていく』イメージを持つといいでしょう」
●マイナス思考を「緩める」方法
「ではここで、マイナス思考を緩める方法を3つご紹介します」
1.自分の感情を観察する
「まず、一日中、自分の感情を観察することが大事です。人の気持ちというのは、ずっとマイナスではありません。プラスになったり、マイナスになったりします。例えば、誰かと話してるとき、飲んだり食べたりしているときにプラスになります。それをひたすら観察するんです。これをマイナスになったときもやります。観察をしていると、自分の感情の起伏パターンが見えてくるため、自然と思考や感情をコントロールしやすくなります」
2.ノートに一日にやれたことを再体験しながら書き出す
「一日の終わりに、その日にやれたことをノートにピックアップして書き出すのです。このとき、そのできごとを再体験しながら書き出すことが大事です。例えば『部屋の片付けをして、とてもすっきりした』であれば、すっきりしたときのことを思い出しながら書きます。誰かに今日起きたできごとをしゃべるのでもOKです。
これによりマイナスを緩めることができます。思考パターンも徐々に変わってきます。『自分はできるんだ』『なんだかんだ言ってもいいことあるんだ』と気づくなど、効き目が出てきます」
3.マイナスなできごとは自問して仮説を立てる
「マイナスなできごとについては、自問して仮設を立てることで、マイナス思考を緩めることができます。例えば、会社の同僚に嫌われている気がするとしましょう。『今日同僚が、眉間にしわを寄せて嫌そうな顔で自分に話しかけてきた』という事実と感情をノードに書き出してみます。そうしたら、
1)自問
『それは事実なのか?』と自問してみます。
2)仮説を立てる
次に、仮設を立てます。例えば、『同僚はあのときお腹が痛かっただけかもしれない』『元々そういう顔なんだ』『他の人と話してるときもああいう顔をしてるかも』など、いろんな仮説を出します。そうすると『自分は同僚に嫌われている』という自分の思い込みの強さが弱まるんです。こうして思考を揺らすのです。すると、『同僚に嫌われているというのは違うのかもしれない』と思ってきます。
例えば、LINEでメッセージを送った相手から何日も返事もらえないとイライラすることはありませんか? そんなときも『もしかしたら相手は今、海外に行っているのかもしれない』と思ったら少し気持ちが楽になりますよね。それと同じなのです。
100%マイナスなできことでも、必ずしも100%ではない可能性というのは、考えると結構あるものです」
マイナス思考グセのある人が生まれ変わった!
大坂谷さんは、クライアントの中でかなりのマイナス思考グセのある人がプラス思考に転じ、生まれ変わった人がいたという。
「かつて、すごく悲観的で否定的な考え方をする会社員の方がいました。失敗を恐れて何もできない状態で、とにかくマイナス思考ばかりの人でした。その人がこのマイナス思考を緩める方法を、3ヶ月間、やり続けたんです。その結果、営業成績トップになり、営業マネージャーになり、ダブルワークで事業を始められたんです。
その方がノートに書き出していたプラスなことは、本当に小さなことでした。『会社でお礼を言えた』とか『ずっと返せなかったメールを返せた』とか『姿勢よく仕事ができた』とか『元気よく挨拶できた』とか。そういうとても小さいことだったんですが。それを積み重ねることにより自信がついたようです」
マイナス思考がクセづいている人は、無理にプラス思考になろうとするのではなく、これらの方法を試して、その思考グセを揺らしてみるのが先決と言えるのかもしれない。
【取材協力】
大坂谷 勇輝さん
SFA、ABA、NLP、アドラー心理学をベースに、キャリアコーチング(働くことを起点とし、生き方そのものをサポート)を行う。会社員時代はMGR、人事部、人事戦略室、社長室を経験し、2014年に立ち上げた人材開発事業にて2018年に独立起業。現在では年間数百人のビジネスパーソンのキャリア形成を支援。
https://reeed.jp/
取材・文/石原亜香利