2020年、3Dプリンターで作られる寿司を提供する店が、東京にオープンするかもしれない。見た目には違和感たっぷりだが、実はこの寿司こそ、食に関する世界規模の課題を解決する、100年先を見越したフードテックの最先端なのだ。
あらゆるモノがデータ化され、インターネットにつながる時代において「フードテックは最後のフロンティア」……。そう話すのは、食のデジタル化を追求するプロジェクト「OPEN MEALS」の電通の榊さん。
「毎日の食事に関して完全に満足している人は、世界中で約5%しかいません。大多数の人が不満に思っているのです。これをフードテックで解決しようと考えています」
同プロジェクトが注目するフードテックのトレンドはサステナビリティー(持続可能性)、パーソナライズ(個人化)、オートメタイズ(自動化)の3つ。これらの視点は榊さんが提供しようとしている〝3Dプリンター寿司〟の構想にも組み込まれている。DNAや腸内細菌からデータ化した「ヘルスID」により、食べる人の体質に合わせて、必要な栄養素、堅さ、食感を〝パーソナライズ〟する。寿司の形状からは、一見ウケ狙いのようにも感じられるが、実は100年先を見据えた予想(下のイラスト)に基づいている。
「素材として寿司を選んだ理由は、SUSHIが世界の共通語であり、最先端のテクノロジーとのギャップがおもしろいからです。実際技術的には寿司ほど3Dプリンティングによる再現が難しい料理はなく、チャレンジのしがいがあります」(榊さん)
近い将来、データ化された料理全体が「SUSHI」と呼ばれる時代が来るかもしれない。
電通 第3CRプランニング局 アート・ディレクター
OPEN MEALSファウンダー
榊 良祐さん
右写真は〝SUSHI SINGULARITY〟と名づけられた3Dプリンターの寿司による新しい食体験のコンセプトモデル。左から、密着培養で細胞を成長させて赤身から大トロまで再現できる「細胞培養マグロ」、コンピュータ制御の6軸CNCで削り出す「イカ城」、噛む方向によって硬さが変化するワッフル構造した「アニソトロピックスティフネス蒸し海老」。