楽天経済圏に攻め込んでナンバーワンを勝ち取るためにやらねばならぬこと
楽天の中で金融からショッピングまで完結する「楽天経済圏」。我々の暮らしに関連するサービスが並んでいて、サービスを使えば使うほどポイント還元率が上がる。そのため利用者はますます楽天を利用するようになる。銀行、カード、証券といった金融機関もあるので、消費の入り口と出口をがっちりとおさえている。
楽天経済圏の概念図。楽天市場を中心に1億以上の会員数がいて、暮らしに関連する様々なサービスが利用できる。楽天銀行は800万以上の口座があり、ヤフーグループのジャパンネット銀行の2倍ほどの口座がある計算だ。
引用元:1分で分かる楽天エコシステム(経済圏)/楽天
そんな楽天経済圏にLINEの力を得たヤフーが乗り込んでいくのは言うまでもない。むしろ常に戦いを挑んでいるが勝てていないのが実情だ。
しかしヤフー・LINE陣営が楽天には勝てない理由がある。それが「ブランドの統一感が弱いこと」である。当然ヤフー・LINEもブランドの統一を検討していることだろう。
ヤフーもLINEも楽天もたくさんのサービスがあって、ごちゃごちゃしているイメージがある。
楽天の場合はサービス名が「楽天〇〇」で統一されている一方、ヤフーの場合は、コマースやメディアの一部は「ヤフー〇〇」で統一されているが、それ以外は「ヤフー」が付かないサービスが並んでいる。理由の一つは「ヤフー」という名称を使うと米国のベライゾン社にライセンス料を支払わなければならないこと。
そのためブランドの統一が進んでおらず、利用者を囲い込むための力が楽天に比べてヤフーのほうが弱いのである。逆にいうとブランドを統一して、楽天とは違う切り口で経済圏を形成できれば、ヤフー・LINE陣営の勝機が見えてくる。
ちなみにLINEの場合はサービス名が「LINE〇〇」で統一されていて、ユーザー数もヤフーより多いが、売上高は楽天の6分の1程度しかない。無料で使えるコミュニケーションアプリを中心に展開しているので、ユーザー数こそ多いものの、ヤフーや楽天よりも稼ぎ頭が少ないのが原因だ。
楽天のコア事業は、全て「Rakuten」で統一されている。右下にある「EBATES」とは楽天が海外で展開するショッピングクーポン配布サービスで、「RAKUTEN」にサービス名が変更されている。
引用元:2019年度第3四半期決算発表スライド資料/楽天
ヤフーの場合は、メディアやコンテンツだとヤフーの名称が入っているが、金融の領域では、YJFX!や、Yjam、ジャパンネット銀行という風に、サービス名がばらばらだ。ぱっと見だとLINEのほうが統一感がある。
引用元:経営統合記者会見資料/Zホールディングス
ヤフー・LINEがどのブランドを選ぶのかに注目したい
ヤフーとLINEの経営統合はあくまで対等の関係であると説明されている。そのためブランド統一も全てヤフーが主権を握るというわけではなさそうだ。、
ライセンス料を払ってでもヤフーに統一するのか。ユーザー数の多いLINE統一するのか。QR決済で利用者数の国内シェア2位となっているPayPayや、はたまた奇策を狙ってZOZOに統一するのか。それとも新たなブランドを立ち上げ楽天に戦いを挑むのか。
両社の思惑に対する憶測は尽きない。
文/久我吉史