人の心理を見抜くための知識は「信号機」のようなもの
この仕草や表情で人の心理を見抜く知識は、現在、ビジネスシーンで大いに役立っているそうだ。
「初対面の方とお話しする際、特に新規の会社と大事な取引を開始するときなどは、相手の非言語コミュニケーションに注目します。もちろん言葉にも耳を傾けますが、注意すべきは言っていることと非言語コミュニケーションの相違です。非言語で違ったサインを出している場合には注意して話を進めます。
例えば、自信満々に目を見ながら答えていた担当者に対して『〇〇のケースの場合はどうなりますか?』と質問した際、目を反らしつつ、顔を赤くしながら『それは…大丈夫です。』と答えたとします。これは明らかに言語と非言語に矛盾信号が出ています。
そうなると、“本当は大丈夫ではないのか? よくわかっていないから自信なさげに答えたのか? わかったふりをして答えたのか?”など色々な捉え方が出てきます。そうした場合、質問を再度繰り返すなり、深堀質問して真偽を確かめていくことになります。
ビジネスにおいては何事も選択の連続です。その時々の相手が出す情報によって前に進むのか、止まるのか、後退するのかを判断します。その情報を正しいと捉えられたら前進すればいいのですが、間違った情報を正しいと判断して前進すればだまされることになります。ですから相手の心理を読むということは、自分の中で『信号機』のような働きをしていると思っています」
相手の真意を知りたい。大きな損失をあらかじめ回避したい。ビジネスパーソンであれば誰もが持つこれらの思いの助けとなり、赤信号を示してくれるのがこの「人間心理の見抜き方」の知識といえそうだ。
【取材協力】
森 透匡(もり ゆきまさ)さん
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事
(経営者の「人の悩み」解決コンサルタント)
警察の元警部。詐欺、横領、贈収賄事件等を扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年経験。 東日本大震災を契機に独立し、刑事が職務上体得したスキル、知識を用いてビジネスの発展と社会生活の向上に寄与することを目的とし、一般社団法人日本刑事技術協会を設立、現在は代表理事として「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180か所以上で講演・企業研修を行い、これまで6万人以上が聴講、「究極の心理学だ!」「おもしろい!」と人気を博している。
TBS「ビビット」、日本テレビ「月曜から夜ふかし」、読売新聞、日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。著書に「元刑事が教えるウソと心理の見抜き方(明日香出版社)」がある。
http://j-keiji.org/
取材・文/石原亜香利