■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は話題の2画面スマホについて議論します。
Surface Duoと折りたたみスマホは由来が違う
房野氏:みなさん、2画面スマホは「Galaxy Fold」が始めてですか?
石川氏:何をもって2画面スマホというか。「MEDIAS W」まで遡れば使っていましたが。
房野氏:あ、確かにかつてもありましたね。2019年からの流れとしての2画面のこととでお話ください。
法林氏:Galaxy Foldは、2019年2月末のMWC Barcelonaで見た時は、「ふーん。こんな感じね」ぐらいにしか感動しなかったけれど、9月のIFAの時に初めて実機に触れて、これは触っていると面白い、ずっと触っていたい、アレもしたい、コレもしたいと思って、結構本気で買おうかと思っていた。二十数万円だから、1万円の24回払いで買えるかと思っていたんだけど、10月2日に「あれ」を見て以来、完全に思考停止しましたね。
石川氏:あー。
房野氏:Microsoftの新製品ですね。
法林氏:まったく考えなくなりましたね。全然、何とも思わなくなった。「Surface Neo」「Surface Duo」を見ちゃうと、Galaxy Foldに関しては何も感じなくなっちゃった。
房野氏:Galaxy Foldとはどう違いますか?
石川氏:自分が感じたのは、MEDIAS Wでもドコモの「M」(ZTEの「AXON M」)でもそうなんだけど、今までの2画面端末は、スマホが2画面になって動画コンテンツが楽しいよねっていうアプローチ。Surface Neo/Duoは、仕事の道具として2画面は便利だよね、というスタンスなんですよ。例えば、MicrosoftのOffice 365とかTeamsとかで、1つの画面ではビデオチャットしながら、もう1つの画面でみんなでPowerPointのスライドを作りましょう、とかっていう時の2画面という提案。仕事をする道具として、まさにウインドウが2つもあるっていうロジックでの2画面端末。
石野氏:Windowsですね。
石川氏:これだったら仕事がはかどりそうっていう感じでの可能性は感じました。
法林氏:Microsoftの発表会に行った人とも話したけれど、有機ELという曲がるデバイスがあるから曲げた端末を作ってみるというアプローチがGalaxy FoldでありMate X。Surface Neo/Duoは、仕事をする上で、「このサイズ大きいよね。これ半分にできる?」みたいなところでやっている。やりたいことが元々あって、それに対して必要なデバイスを導き出している。やりたいことは何なのかというと、それは人間が考えていること。人間を真ん中にしている感じが強い。担当者のパノス・パネイの話でも、人がメインという考え方がすごく強い。そのために作ったデバイス。「これをするためには、こういう形でどうですか?」という感じの提案をしている。
石川氏:しかも、モバイルで使うなら、やっぱりAndroidかな、とかね(Surface DuoはAndroidを採用)。潔い。
法林氏:あの潔さはすごかったね。びっくり。
石川氏:感動した。
法林氏:タッチ&トライ会場で最初、NeoがWindowsで、Duoは恐らくWindows 10のバーチャルマシンで動いているんじゃないかと思ったんだよね。で、聞いたら、いやAndroidだと。えっ、Androidが普通に載っているの? バーチャルマシンで載っているんじゃないの? って聞いたら、いや、普通のAndroidだってことだったので、これはすごいやと。その潔さ、思い切りの良さに驚いた。アプローチが違うというか、意気込みから違うなと感じたところ。
石川氏:有機ELを折り曲げましたというのはメーカーのエゴでしかないというか。こんなに曲げてすごいだろって。結果として、価格が高くなるという欠点もある。でもDuoは液晶の2画面なので、たぶん価格はそんなに高くならない、手の届きやすい端末になると思います。
房野氏:価格はいくらくらいなんですか?
石野氏:まだわからない。
法林氏:僕らは、ほかの製品同様1000ドルあたりを狙ってくるんじゃないのかなと話していました。
石野氏:僕はGalaxy Foldが欲しかったんですよね……
房野氏:買ってくださいよ。
石野氏:でもFeliCaが搭載されていないのは、2019年に買う最新のモバイル端末としてはないなと思って。
石川氏:QRコード決済があるじゃん(笑)
石野氏:いやいや、電車に乗れないですよ。
石川氏:iPhoneがあるじゃん。
石野氏:まぁ、ほかの端末を持っているからいいっていう考え方もあるんですけど、うーん、やっぱりメインでガツガツ使いたいと思った時にFeliCaがないと厳しいなと。でも、今回は仕方がないですよ、FeliCaどころじゃなかった。
石川氏:とにかく日本に導入するためにがんばった。
石野氏:日本に納入するので精一杯だったらしいので、FeliCaなんてとても載せている余裕がなかったと。仕方がないので次に期待しつつ、こうなるとペンが欲しいですね。でも、今のようなプラスチック有機ELだとできないかなと。その解決策も今、考えているっぽいです。Noteシリーズに統合していくようなことをDJコー(サムスンのモバイル部門のトップ)は言っていたので、そうなった時には本当に欲しいと思っています。あの形こそ本当にノートじゃないですか。あれこそGalaxy Noteですよ。
石川氏:その時いくらになるか、だよね。
石野氏:そうですね。
石川氏:たくさん作れるようになったら安くなるという言い方をしているので。
石野氏:18万円とか15万円くらいに価格がこなれてくれると買いやすいなって感じですね。
法林氏:いっそあきらめて、有機EL2枚にして……
石川・石野氏:えー!
法林氏:継ぎ目のある“Galaxy Fold2”にして生産すれば、相当歩留まりが良くなるはず。
石野氏:“Galaxy Fold lite”(笑)
房野氏:私は法林さんに賛成です。Mの時も、真ん中の継ぎ目はそれほど気にならなかったです。見えない場所はちょっとズラせばいいし。
石野氏:えー、気になりますよ。動画を表示した時に真ん中にパカッと継ぎ目があるんですよ。
房野氏:動画はまぁ、そうですね。
法林氏:Surface Duoの2画面を広げた状態で動画を見るかなと考えると、たぶん片側の画面で見ると思う。
石野氏:Surfaceはディスプレイの比率がそうじゃないですか。PCっぽく設計されている。Galaxy Foldはやっぱりスマホなので。開くとタブレットって感じなので。
法林氏:どちらの比率になるかな。プロダクトムービーを見て思ったけど、意外にSurface Duoのサイズであの比率はアリかなと思った。逆にGalaxy Foldの閉じた時の、スリムなんだけど広げると……なんだろう、この不思議なサイズ感って。
房野氏:Surface Duoは電子手帳みたいだなと思って懐かしい気持ちになりました。「ザウルス」みたいだなと。
法林氏:縦横の比率も含めて考えると、もしかしてちょっと考え直さなきゃいけないのかなと。
石川氏:Surface Duoは電話というポジションを捨てていますよね。パノス・パネイが、あくまでコミュニケーションデバイスだという言い方をしている。
石野氏:Galaxy Foldは耳に当てて電話をすることを前提にしている。
石川氏:Foldは電話由来。
法林氏:でも、Surface Duoもそうやって電話していたけどね。
石野氏:それは「ロボホン」で電話ができるというのと同じですよ(笑)
法林氏:現実的には、手を空けるためにBluetoothイヤホンを使うんですよね。
石川氏:Surface Duoで電話しようとすると、ディスプレイを360度回転させないといけないので、ちょっと現実的じゃない。
石野氏:そういう意味でGalaxy Foldとかとは違う端末なんですよ。
石川氏:Duoはコミュニケーションデバイス。
石野氏:Foldは電話の発展系。
法林氏:Foldは値段のことがなかったら、もうちょっと考えたかもしれないけど、いかんせん、24万円は安易に出せない。
石野氏:しかもコストカットできそうな箇所がたくさんある。カメラは6個もいらないだろとか。
房野氏:いたずらにハイスペックなんですね。
石野氏:そこまではいらないだろってものがある。ストレージが512GBなんですけど、128GBにしてもっと安くしてよって。12GBのメモリは必要かな。
法林氏:複数のアプリが必要なメモリを展開するからね。
石野氏:そう、必要なんですけど、それでも12GBもいるかって疑問がちょっとあったり。仕様をギリギリまで削れば20万円を切ることもできそう。まぁ、今回は曲がるディスプレイを使って最高の端末を作りたかったというサムスンの思いがわかるんですけど、24万円でFeliCaもないし、普通にパカパカするだけで……。
房野氏:価格はいくらくらいだったら買ったと思いますか?
石野氏:僕は18万円くらいで……いや、今の値段でもFeliCaが載っていたら買おうと思っていたんですよ。なんですけど、FeliCaがなかったのでズコーッとなってしまい。
房野氏:FeliCaがなくても15万円くらいだったら買いました?
石野氏:そのくらいだったら買っていますね。やっぱりずっとパカパカやっていたい気持ちになりますよ。
法林氏:やっぱり2桁万円超えちゃいかんよ。
石野氏:まぁまぁまぁ(笑)