偏と旁の間隔を開けるメリットは大
多くの漢字は、偏(へん)と旁(つくり)があり、その間隔を適度に開けるのが大切だと、小山田さんは説く。例えば、「壮」の字だと以下のようになる。
少しくらいなら、バランスが悪くなってもかまわない(ただし、開けすぎには注意)。こうした書き方から得られるメリットはとても大きく、「包容力が育まれ、オープンで穏やかになる」「知的好奇心旺盛に」「情報・お金・人の流通が良く」なることが期待できるという。
小山田さんのもとに筆跡診断に訪れた、村松さんの例がある。村松さんは、外資系の保険会社のセールス担当で、営業ノルマの達成に苦労していた。
そこで、小山田さんのアドバイスの1つが、「村松」と書く時に偏と旁の間隔は開けるというもの(もう1つのアドバイスは、一画目を左に長く書く)。
こうすることで、「人間関係、とくにお客様の循環が良くなり、契約件数も増える可能性があること」をねらった。
結果として村松さんは、「たったの1か月の間で今までの3倍のペースで契約が取れるようになった」という驚きの成果が。数年後には課長に昇格するなど、出世街道を突き進んでいる。
仕事力や人間関係をダメにしてゆくNG筆跡もある
逆に、仕事の成果が思うように出ず、人間関係もはかばかしくなくなるNGな筆跡も幾つかあるという。小山田さんは、そうした筆跡の代表例を以下のように話す。
「通常では伸びない線を伸ばすなどして、他の線と衝突する書き方を“異常接筆型”と言います。この書き方をする人は、自分の行動をコントロールする自制心が効かず、自己中心的で他人と衝突しやすいタイプ。他の人が感じる違和感をおぼえにくく、周囲の状況に関係なく行動し、トラブルを起こしやすく、犯罪に走る人もいます。その反面、とても鋭い感性を持っているため、芸術面で才能を発揮する可能性もありますが、積極的におススメする書き方ではありません」
筆跡トレーニングは誰でも簡単にできる
筆跡トレーニングを始めるには、高価な万年筆も、特殊な用紙も要らない。小山田さんは、市販の漢字練習帳、それにゼブラの「ジェルボールペン・サラサ1.0」を挙げているが、筆記具は自分が使いやすいものでOKとのこと。
時間は1日数分でよく、かしこまった場でなく、申込用紙や申請書を書くだけでもトレーニングになるという。期間は、深層意識にはっきりと変化が起こる半年が目安で、先の村松さんの例のように、それよりずっと早くに効果を体感することもある。
本書の巻末には、厳選した漢字10個の練習ページがあるので、手始めにこれから行ってゆくとよいだろう。
小山田香代さん プロフィール
東京生まれ、茨城育ち。短大卒業後、OAインストラクターとして大手企業に入社。幾つかの転職を経て、約15年間は職業訓練校講師として従事。ビジネスマナーからキャリアコンサルティングなどを担当し、3千人以上の就職訓練に携わる。職業訓練業務がきっかけで、筆跡診断を知り、筆跡診断士の資格を取得。職業訓練にも筆跡トレーニングを取り入れることで、多数の訓練生を就職につなげることに成功。自身もまた筆跡トレーニングを通して、夢や目標、願いを叶え、夫が昇進、息子が志望大学に入学、娘が精神的に安定して成績が向上、実母が加齢によるメンタルの不安定さが落ち着くなど、家族でも筆跡トレーニング効果を体験する。全国で講演・セミナーを行い、相談者は学生から会社経営者と多岐にわたる。
公式サイト:http://kirakira-akubin.net/
取材・文/鈴木拓也