新宿から多摩地区を経由して小田原、片瀬江ノ島などを結んでいる小田急電鉄に12年ぶりとなる新型車両「5000形」が登場。これまでのイメージをさらに「一新」したいと意気込む小田急自慢の新型通勤車両の魅力を探ってみよう。
新型車両5000形はこれまでの小田急車両と一線を画す攻めたデザイン
幅広ボディの5000形は開放感バツグン!
2018年の複々線化完成、新型ロマンスカーGSEのデビューなど大きな話題が続いた小田急電鉄だけに、通勤車両の新型車両が12年ぶりの登場というのはやや意外かもしれない。
これまでの通勤車両の最新形式は4000形と呼ばれる車両で、こちらは自社線はもとより、東京メトロ千代田線を経由してJR常磐線まで乗り入れることができる万能車両として活躍している。ただそのために乗り入れ先の各社の仕様に合わせる必要があることから、車両の設計を小田急の都合のみで決定することができなかった。
しかし、今回の5000形は東京メトロへ乗り入れしないことから、より自由な車両設計を行うことが可能に。その中でも最大の特徴が車体の幅だ。
「拡幅車体」と呼ばれる、通常の車両より幅広な設計を行うことで小田急線の中でも最大級の車内空間を確保した。この「拡幅車体」は地下鉄乗り入れを考慮した車両では寸法オーバーとなり採用することができないのだ。
車内空間の広さは5000形の中でもこだわったポイントで、座席端の袖仕切り部分や頭上の荷棚、車両間の仕切り扉の各所に大型強化ガラスを採用することでより開放感ある車内空間を演出している。実際に一歩車内に入るとこれまでの通勤車両と比べて一目で広々とした印象を受けるはずだ。荷棚の透明化は忘れ物防止にも役立ちそう。
ドア上にはデュアルモニターを採用した コストは高いが「欠かせない機能だった」とのこと
車内の照明についてもLEDを採用し省エネ化を図った。形状も以前のような蛍光灯の形状ではなく、天井埋め込み型とすることで天井からの圧迫感をより低減している。床には木目調を採用し、「ご乗車いただいた方に癒しを感じていただければ」という狙いが込められている。
車内全体が温調だがその中でも特に目を引く床面の木目調デザイン
特急車両と違い、日常的に多くの人が利用する通勤車両だけに利用客からの要望も多い。その中でも特に要望の多かった項目をたずねると「座席の座り心地」と「座席横の袖仕切り」の2つだそう。
まず、座席の座り心地については、これまでどちらかというと薄目の座面を採用していたものを深く厚手のものに改善。実際に座ってみるとこれまで以上にしっかりとした座り心地となっており、長時間の乗車でもより負担が少ないように改善されているのを感じることができた。
もう一方の座席横の袖仕切りについては、「特にこだわった」箇所だ。ここはどうしても座席端に座っている人と、ドアそばに立っている人が不意に接触しがちで、お互いに不快となることが多い。しかし、無意識での接触も多く、一言声をかけるのもためらう。おそらく皆さんも似たような経験をしたことがあると思うがこの袖仕切りについては、小田急独自で高さを研究、開発した。
高さにこだわった袖仕切り。確かにここ、いろいろと気になるポイント!
「接触を避けるなら袖仕切りを高くしてしまえばいいのですが、そうすると車内がどうしても閉鎖的になってしまいます。かといって低くするとお客さまのニーズに応えられないので、開放感を演出できる強化ガラスを用いつつ、適切な高さを計算しています」と語るのは5000形の設計に携わった小田急電鉄運転車両部の板垣匡俊さん。
確かにこの袖仕切りには座っている人、立っている人両者にとって「もたれかかりたい」存在。それゆえにトラブルの火種にもなってしまいがちだが、5000形ではそうした利用者の声に寄り添った設計になった。