さあ、釣り開始。1投目からあたるも、定番外道のキダイ。大きければ干物にすると美味いらしいが、8cmほどの小型でリリース。その後も小キダイ、トラギス、ヒメギス等、投入の度に釣れるが本命は来ない。スタート約1時間後、仕掛けを上げてくると海面近くをシイラが泳いでいる。針に餌が残っていると嫌だなと思いつつ巻き上げると、案の定シイラが食いつく。釣れてしまった。シイラを持ち帰る人もいるので一概には言えないが、僕はシイラの食味はちょっと……。しかもシイラの抵抗で、仕掛けがパーマ(糸が螺旋状になり、真っ直ぐに戻らない)だ。正林さんにも本命は来ないがいい型のマサバを釣り、のんきに「松輪鯖(=高級魚)だ」などと言っている。そんなわけないのだが……。
潮が流れているわりに釣果は低調で、時折「アマダイの顔を見ましたよ」、つまり大きくないアマダイが釣れたという船長のアナウンスが流れる程度だ。その後46cmが上がるが、僕たちに本命は来ない。船長はポイント移動を繰り返すも開始当初と違い、どこに行っても「潮がほとんど流れていません」と嘆く。
この間、錘のカラーチェンジを試みた。まずは赤からスタート。1時間ほど使ったが、外道しか来ないので白に替える。潮が動かなくなった時刻と重なったせいか、白ではまったくあたらない。20分ほどで緑に交替。やはり潮が動かない時間帯ながら、緑にはポツポツと外道が来る。当面、錘は緑にしよう。仕掛けは2mのままだ。というのも、お隣の名人にもアマダイは来ない。来れば、すかさず3mに替えるつもりだ。
前回までの釣法は大まかに言って、錘を底から1m上げて止める、そこからさらに1m上げて止める、そしてゆっくり底まで落とす。この繰り返し。つまり底から上2mまでを探ったが、今回は底から1mまでとした。仕掛けが3mなら前回までのやり方がベターだろうが、2mなら底上1mまででいいのではと、この日は特に明快な理屈なく思ったのだ。
さて本日というか、本原稿のハイライト。新たなポイントに移り船長が、「ここも潮は動いていませんね」とアナウンスした10時過ぎ、錘を1m上げてスーッと下げると強いアタリ、合わせるとガツンと手応えが有りグイグイ引く。これはいいサイズだと電動オン、本命かつ40cmオーバーを確信する。ただし3年前の49cmほどの引きや重量感はない。あのときは電動ではバラすかもと手で巻き上げたが、今回は電動巻き上げに不安感はない。40cm台前半くらいかと思っていたが、釣り上げて船長が測ると47cmの大型だ。久しぶりの快挙、正林名人もニッコリと微笑んでいる。大型、自力で釣りました! 改めて魚体を見ると、スマートだ。長さはあっても、重さは長さ相応よりは軽いだろう。
納竿まで約4時間あってこのサイズを釣っていれば、残り時間は余裕で釣りができる。アタリが全然なくても、平気の平左だ。そこでダメ元で、船最前方で釣る超名人の竿操作を真似してみた。いくら竿の動かし方を真似ても、仕掛けが違うのだから無意味かもしれないが……。超名人、とにかく竿をさまざまなパターンで動かす。言い方は悪いが、“落ち着きがなく、じっとしていられない人釣法”だ。アマダイ釣りの基本は“オキアミを動かして食欲を誘う”だが、ここまで餌を動かすとは驚きで、僕には新しい釣法の発見だった。そして真似すること約5分、明確なアタリがきた。アマダイかどうかは確信が持てない。だが残り水深30mほどでオマツリ(他の人の仕掛けと絡むこと)し、魚はばれてしまった。
以後は元の釣り方に戻るが、持ち帰る(食べる)魚としては11時過ぎにメバルが釣れただけ。僕も正林さんも、たまに外道が来るという釣況が続く。そして2時前、「まもなく納竿です」というアナウンス。その直後に右舷と左舷がオマツリし、船長が絡んだ仕掛けをほどきに行ったので、ロスタイムが生まれた。と、アタリが。本日2匹目の本命は小ぶりの干物サイズだが、ロスタイムにゲットは得した気分だ。
実はこのサイズ、いつもなら刺身か塩焼きだが、この日は余裕で干物サイズ。
本日の釣果は僕が大小2匹、正林さんはゼロ。アマダイ初勝利だ、バンザイ! しかし冷静に考えてみた。正林さんは、釣りは運だという。だが運なら、僕のアマダイ連敗街道ひた走りは解せない。逆に鬼カサゴでは、正林さんは連戦連敗だ。
そこで、推論ながら結論。船全体によく釣れる日は腕がモノを言い、今日のように渋い日は運次第、ということではないだろうか。いかがでしょうか、正林=元名人!?
文/斎藤好一(元DIME編集長)