仕事を通じて学びを得ている人の特徴とは?
仕事を通じた学びにつながる行動について、選択肢への回答におけるすべての項目で、高適応群が低適応群に比べて有意に高い結果となった。
特に高適応群が高かったのは、差が大きい順に「何事も成長機会と捉えて、目の前の仕事を大切にしている(主体的キャリア形成)」「人に話をすることで、ヒントやアイディアを得ようとすることが多い(アウトプット型の学び)」「仮説検証を意識的に行いながら仕事を進める(リフレクション)」「新しい経験を積める環境、成長できる環境を求めて行動している(ジョブクラフティング)」「自発的にスキル・能力開発に取り組んでいる(主体的キャリア形成)」となった。
→与えられた環境や職務はいつも学びに適しているとは限らないものの、そんな中でも学びを見つけようとしたり、より良い経験を積めるように仕事をアレンジしたり、かつ経験を学びに変えるためのアウトプットやリフレクションをしているのが特徴的だといえる(図表7)。
仕事における“学びの情報収集方法のトレンド”とは?
仕事に関する学びにおいて、新しい領域についての情報収集の方法を尋ねる調査が行われたところ、「ネットで調べる」が最も多く、「ややあてはまる」まで含めると8割以上となった。
次いで「人に聞いてみる」が約7割、「実際に経験してみる」が約6割で、「本で調べる」は半数に満たない結果となった(図表8)。また、この傾向は、年代によっても変わらなかった。
最近よく使うようになった、もしくは効果的だと思っている学びのテクノロジーやその活用法については、「チャットツールによるリアルタイム情報共有」「遠隔会議システムによる対話機会の増加」を挙げる人が多く、社内の人に何か聞きたいことがあったときなどにすぐに確認したり、全国の同じ職種メンバーとナレッジ共有をしたりしているという回答が得られた(図表9)
また、「学習教材のIT化」「情報記録・保管の効率化」という回答も見られたが、記述数は必ずしも多くなく、こうした変化が当たり前になっている職場がある一方で、そうでない職場もまだまだ多く、学びの内容やスピードに差が生じている可能性も感じられた。
「今の会社や職場は成長できる環境だ」と思っているのは約4割
現在の会社や職場が成長できる環境だと思うかという質問に対して「とてもそう思う」「そう思う」と答えたのは全体の41.4%と、半数を割り込んだ。
「現在の学び」「中長期の学び」の高群(学びが「あった」「どちらかといえばあった」を選択)は、低群(学びが「なかった」「どちらかといえばなかった」を選択)と比べ選択率が高かったものの、それぞれ58.6%、61.6%であり、必ずしも高いとはいえない結果となった(図表 10)。
成長できると思う理由として多かったのは「取り組みがいのある仕事」「同僚からの刺激がある」「教育制度がある」「成果主義」などだった。
一方、成長できないと思う理由として多く見られたのは「仕事に変化がない」「評価されない」「学習風土がない」といったものだった(図表11)。
学びにつながる職場風土の特徴は?
学びにつながると思われる職場風土について、成長できる環境だと思う群(高成長環境群)と成長できる環境だと思わない群(低成長環境群)を比べると、回答の差が大きい順に「従業員が仕事を通して成長できることを重視している(成長支援)」「お互いの成長への関心が高い(成長支援)」「お互いの成果への関心が高い(成果・貢献重視)」「互いに切磋琢磨している(成果・貢献重視)」「お互いの仕事の成果やプロセスに率直にフィードバックし合える(成果・貢献重視)」という結果となった。(図表12)
従業員同士が、お互いの仕事の成果と成長の両面に関心をもち、信頼し合い、共に成長していこうという関係性が学びを促進するといえそうだ。
従業員の学びを支援するのは「全員一律ではなく、一人ひとりの状況に合った学びをサポートする制度」
従業員の学びを支援する制度・仕組みの導入割合、役に立っていると回答した割合で、導入割合・役立ち度共に高いものとしては「上司との 1on1 ミーティング」「上司・同僚からのフィードバックサーベイ」「勤務時間・場所の制度」といったように、いずれも全員一律ではなく、一人ひとりの状況に合った学びをサポートする制度が挙げられた。
導入割合がそれほど高くはないものの役立ち度が高いものとしては、「自己学習のための金銭支援」「社内の多様な人との勉強・交流会」「社内外の人と情報交換する場所」「社外副業」「本業以外の仕事機会」などが挙げられた。目の前の業務を少し離れた越境的な学びをサポートする制度は、個人の役立ち度は高いが導入している会社はまだ少ないようだ。(図表13)
出典元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
構成/こじへい