どんな会社にも一人はいる、同期の中で仕事の覚えが早く、瞬く間に重要な役職に抜擢されていくデキる社員。
同じタイミングに入社しているにもかかわらず、差がつくのには仕事を通して多くの学びを得ていることが関係していると思われるが、では、そういった人たちにはどのような特徴があるのだろうか?
今回、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが従業員規模 300名以上の企業に勤める正社員457名を対象にして行った「職場での個人の学びに関する実態調査」により、「仕事を通じて学びを多く得ている人の特徴」をはじめ、「学びのテクノロジーの活用の実態」「学びにつながる職場風土の特徴、学びを支援する制度・仕組み」などが明らかになったので、紹介していきたい。
ハイパフォーマンス・ハイコミットメント層は約8割の人が新しく学びを得ている
過去1年において、「現在携わっている仕事に直結する新しい学び(以下、現在の学び)」と「中長期的に自分のキャリア形成に役立つ新しい学び(以下、中長期の学び)」があったかどうかついての調査において、「現在の学び」は全体の 59.7%、「中長期の学び」は 50.1%が「あった」「どちらかといえばあった」と回答した(図表2)。
学びの有無と仕事におけるパフォーマンスやコミットメントの関係について、適応感に関する7項目(「期待どおりの成果を上げている」「今の仕事にやりがいを感じる」など、「1:まったくあてはまらない~6:とてもあてはまる」で回答)が尺度化された。
そのうえで、ハイパフォーマンス・ハイコミットメントしている高適応群(上位49.9%)と、低適応群(下位 50.1%)の2群に分けて分析が行われたところ、高適応群は学びが「あった」「どちらかといえばあった」の割合が「現在の学び」で78.9%、「中長期の学び」で67.6%と、低適応群に比べて大幅に高いことが分かった。
ここから、学びは仕事や組織への適応感を高めると同時に、適応感が次の学びを促進すると考えられる。
「環境変化」「職務特性」「キャリアへの考え方」が学びの有無に影響
どのような要因があるときに学びが得られるのかについて、今回の調査では、「環境変化(大きな環境変化にさらされている、市場の変化が速いなど4項目)」「職務の重要度・自律度(自分で判断し主体的に進めることが求められるなど7項目)」「キャリア見通し(自分がどうなりたいのかはっきりしているなど4項目)」「専門職志向(今の職務・専門分野でキャリアを追求したいなど6項目)」について検証が行われたところ、いずれも高・低群で学びの有無に有意な差が見られた。
一方、年代別(20代~50代)の「学びの有無」については統計的な差は見られず、また、役職・学歴による差も見られなかった。
→新しい学びがあるかどうかは、年齢などの個人属性よりも、学びが必要とされる環境や職務があること、キャリア見通しや専門職志向が育まれていることに影響を受けることが示唆される。
労働時間の短縮は必ずしも学びにつながらない
労働時間と学びの関係について、「現在の学び」「中長期の学び」共に、月間労働時間群と学びの有無に統計的に有意な差は見られなかったが、「現在の学び」「中長期の学び」共に、「あった」「どちらかといえばあった」が最も多いのは、月間240時間以上の群だった(図表3)。
過去1年の「労働時間の変化(増減)」と「学びの量の変化(増減)」の関係を見たところ、「現在の学び」「中長期の学び」共に、労働時間が増えた群の方が、学びの量が増えた人の割合が統計的有意で多いという結果となった。
→労働時間の増減には、異なるさまざまな要因が考えられるため解釈は難しいものの、今回の結果からは少なくとも、労働時間が短いことと学びの多さ、労働時間が減少することと学びの増加に関係が見られなかった。
学びを業務時間外のインプット活動と見るか、今回のように仕事を通した学びも含めて考えるかによっても結果は異なると考察できる。
「自分の得意な学び方がある」人は約5割
自分にとって得意な学び方について、「ある」と回答した人は全体の11.2%で、「なんとなくある(39.8%)」を含めると約5割であり、「ない(49.0%)」と約半数ずつの結果となった(図表4)。
また、「得意な学び方がある」群は、「現在の学び」「中長期の学び」共に、学びが「あった」「どちらかといえばあった」と回答した人が全体の8割を超えており、「なんとなくある」「特にない」群より大幅に高い割合となった(図表5)。
ここから、得意な学び方がある人はそうでない人に比べ、より多く学んでいることが分かる。
得意な学び方がある人はどのような学び方が自分にとって有効だと考えているのか、具体的内容の自由記述回答の中で比較的多く見られたのは、「経験から学ぶ」「人と学ぶ」「仮説・想をもつ」「言語化・アウトプットする」に関するものだった(図表6)。
これらはいずれも、正解のない時代に仕事を通じてより多くの学びを得るための有効な方法だと考えられる。