では、カスタムL・ターボ Honda SENSINGとの違いと言えば、9灯LEDヘッドライトを含む内外装はもちろんだが、タイヤが14インチから16インチになると同時に、全車標準のフロントスタビライザーに加え、安定感をより高めるリアスタビライザーが追加されるのが、走り好きな人にとっては、大きな特徴となる。
もちろん、先進運転支援機能も充実している。ホンダセンシングは全グレードに標準装備され、0~135km/hで作動する、渋滞追従型ACC(アダプティブクルーズコントロール)を標準化しているあたりは、ライバルをリードする注目点。日産デイズで同等の高速道路同一車線半自動運転のプロパイロットは設定車のみとなる。
ただし、日産デイズがリードするのは、前後踏み間違いアシストにブレーキ制御まで備わることと(ホンダセンシングは抑制のみ)、ドコモのSIM=専用通信機器による、日産コネクトナビの装着で可能になるオペレーターサービスが利用でき、ヘルプネット=SOSコールまで用意している点だ。N WGNの場合、オペレーターサービスはホンダ・ギャザズの専用ナビ装着で可能にはなるものの、スマホの接続が必須となる(音声機能付きの専用通信機器は未設定)。もっとも、ちょうどいい場所にあるスマホ置き場の奥に、USB充電コンセントがあるのは超便利である。
では、初めて試乗する新型N WGN L・ターボ Honda SENSINGの走りはどうだったかと、1.3L級の動力性能はカスタムターボと変わりなく、高速道路、それこそ山道の登坂路をストレス最小限で走ることができるのは当然として、タイヤがカスタムの15インチに対して、柔らかめの14インチにサイズダウンしたおかげで、乗り心地はより快適。荒れた路面の走行や、段差やマンホール越えでのショックは一段とマイルドになり、ロードノイズも低減。
たしかに、15インチタイヤを履くカスタムターボほどのキビキビした身のこなしや、山道のハイスピードランでの超ハイレベルな安定感こそ得られないものの、スポーティー軽ではなく、フル乗車&ロングドライブに対応する、動力性能に余裕あるミニマムクルーザーとして使うには、こちらのほうが穏やかな走行性能で、むしろ好ましく感じる人が多いと思える。大げさに言えば、“羊の皮をかぶった狼的”キャラクターの持ち主なのである。カスタムL・ターボ Honda SENSINGとの17万2800円の差額を、ホンダ純正インターナビ(10万7800円~20万9000円)やETC2.0車載器などの資金にあてられるメリットもある。
ホンダN WGN
https://www.honda.co.jp/N-WGN/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。