日本でも「スタートアップ」という言葉が浸透してきたものの、依然として「起業のハードルは高い」と感じる方も少なくないだろう。一方、電子国家として知られるエストニアでは、驚くほどそのハードルが低い。
実際に、エストニアで起業を果たした齋藤アレックス剛太さん(blockhive OÜ、本社:エストニア タリン)は今年、日本にいながらしてエストニアで法人設立ができる新サービス「SetGo」を正式にローンチした。同氏に「SetGo」の具体的な仕組みや、エストニアで法人設立をするメリットについて伺った。
齋藤アレックス剛太さん
バックパッカーとして世界を旅したのち、外資系コンサルティングファームでの勤務を始める。2018年5月からエストニアに移住し、オンライン本人確認サービスを提供するスタートアップ企業Veriff(ヴェリフ)で事業開発に従事。その後、オンラインでの法人登記や事業運営をサポートするサービス「SetGo」をブロックチェーン企業blockhive のメンバーファームとして立ち上げる。
Set Goでできること 法人設立までの流れ
――Set Goでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか?
SetGoを一言で言えば、日本国内にいながらしてエストニアに法人を設立できるサービスです。手続きはすべてオンライン上で完結します。SNSのアカウントやブログを開設する感覚で、法人の設立ができてしまうんです。
エストニアで法人を運営する場合、「リーガルアドレス」というエストニア国内の法人住所と、「コンタクトパーソン」という政府からの通達を受ける人間を一人置く必要があるのですが、その部分の代行を行なっています。
SetGoを利用するためには、外国人でもエストニアの”電子住民”になれる「e-Residency(イーレジデンシー)」の取得が必要ですが、e-Residencyカードがあれば法人登記の申請をわずか10分ほどで完了させることができます。僕はテストで何回も試しているので、1分ほどで法人設立ができてしまいますが(笑)
これは、エストニア政府が法人登記局のデータベースをAPIとして開放しているからこそ実現したサービスです。誰でもその情報にアクセスできるわけではなく、僕らは無犯罪証明書を提出した上で、ライセンスを取得しています。
e-Residencyと紐づいているため、入力する項目は「会社名」「事業領域」「資本金」「創設者・役員」の4項目だけです。e-Residencyカードから情報を取得できるため、氏名や生年月日の入力は必要ありません。
――SetGoを使って申請をした後は、どれくらいの期間で法人設立が完了するのでしょうか?
SetGoで申請を行なうと、その裏で「X-road(エックスロード)」という電子政府の情報交換基盤を通じ、政府の法人登記局にデータが転送されます。情報が通達されると、政府がレビューを行ない、数時間程度で返事が来ます。日本で夜に申請すると、翌朝には認証されていることが多いですね。
もちろん、リアルタイムで使用可能な法人名かを確認できるため、申請後に「この法人名は使えませんでした」ということもありません。SNSで言えば、「このアカウント名はすでに使用されています」と表示されるイメージです。
――実際にエストニアに訪れる必要はないのですか?
はい、申請はすべてオンラインで完結します。ただ、銀行口座の開設についてはface to faceの面談が必要になるケースもあるため、必要に応じて個別に支援サービスも提供しています。大規模なビジネスをしたいと考えている方は「現地を視察後、銀行口座を開設して帰る」というケースもありますが、オンラインの送金サービスを活用すれば、それほどビジネスにおいて不便さを感じることもないでしょう。
また、Set Goを介することでエストニア政府が提供するプラットフォームを使った「電子署名」も利用可能です。そのため、国際郵便で書類をやりとりする必要もなく、設立後もスムーズにビジネスを進められます。