そして9月26日は、今回の記事の本題である江の島港・島きち丸でのアマダイ釣り。相棒は正林さん。関東では最大クラスの50cm級を、何度も釣っているアマダイ名人だ。正林さんとは10回以上アマダイに行っているが、僕の釣果が上回ったことは一度もない。
この日も平日の木曜日、船はやはりガラガラだ。昨シーズン、僕は僕の一番好きな右舷最前方、正林さんは正林さんが一番好きな左舷最後方に座った。この位置関係ではお互いが見えない。今回は名人に釣り方を教えていただくべく、僕は左舷一番前、その隣(といっても空いているので左舷ほぼ中央)に正林さんという席取りだ。本日も好天・凪で、今度こそ好釣果に恵まれる予感がする。
今期のアマダイ釣りでは、もうひとつ狙いたい魚がある。キダイだ。アマダイ釣りの外道の定番だが、今まではすべて放流してきた。ところが干物にすると、それはそれは美味いという。正林さんにもキダイはキープと念を押し、釣りスタート。早々のアタリでお待ちかねのキダイ一荷が来るが、さすがにこのサイズでは干物にはならず放流。その10分後のもう少し大きいアタリに、鼻タレ(とてもとても小さなアマダイ)かと思うが贋造ヒラメだ。昨シーズン干物にしてみたが、ぶにゅっとしてあまり美味しくない。だが、一応キープ。
キダイの一荷。この日は2人とも干物サイズのキダイは釣れなかった。
贋造ヒラメ。関西では贋造カレイというらしい。干物を食べての身の柔らかさは、ヒラメというよりカレイの印象だ。
以後、忘れた頃にキダイやトラギスが来る程度で、“外道すら来ない”。かたや正林さんは、小型ながら時々本命を釣り上げる。僕には釣り開始4時間経過の11時を過ぎても、アマダイは来ない。正林さんは既に5匹くらい釣ったろうか。アマダイはツヌケ(10匹以上)なら上出来だから、大きさはともかく本日の正林さんは快釣だ。
さて僕を見るに見かねた正林さん、自作の仕掛け“正林スペシャル”を使ってみたらと、分けてくれた。嘘か誠か、正林さんは職場でも仕掛けを作っていたというハマちゃんみたいな人だ。市販の仕掛けより、正林さん自作の方がクォリティーは高いと思う。
では、早速トライ。すると2投目、「これは!」のアタリ。鼻タレだ。鼻タレでもしみったれでも、とにかく仕掛けを変えたら釣れた!!
その後ほどなく正林さんのお隣が、本日最大の50cmを釣る。悔しがる正林さんに、いいアタリが。40cm級だ。そして僕にもサイズアップの30cm級、30cm級、最後に25cm級と続く。仕掛けを変えて3時間弱で4匹、その間の正林さんの釣果は5匹だから遜色ない。“正林スペシャル”、恐るべし。
横で50cmを見てしまうと、このサイズでは物足りないそうだ。僕には羨ましいばかり。
この仕掛け、全長3mの3本バリ。アマダイ仕掛けの定番は、全長2mの2本バリだから、まさに“スペシャル”だ。どういう仕掛けならより釣れるか、論理的に考えに考えて作ったという。僕も何故この仕掛けでこんなに釣れたのかあれこれ推測してみたが、釣り雑誌ではないのでここに書くのは控える。ただ前釣行のハタと違い、この日は釣り人(たぶん)7名で船中46匹という好釣果、釣れる日ではあった。
僕の持ち帰った魚は、自分で釣ったアマダイ4匹に正林さんにもらったアマダイ7匹、そして贋造ヒラメ1匹にもらった6匹、計18匹と“大漁”だ。まあまあサイズのアマダイは塩焼きと昆布締めで、小さなアマダイと贋造ヒラメは干物で食べた。
贋造ヒラメは身が柔らかすぎて、干物にしてもイマイチと思っていた。だが正林さん発案の“塩をたっぷり塗り込んで水気をとり、2日くらい干して乾燥させれば美味いのでは”を実践したら、身にねばりがあり思った以上に美味しかった。
格言「“アマダイ”釣りなら、釣るにも食うにも正林に従え」!
干物は5~10%の塩水に浸すのが常道だが、塩をたっぷり塗り込んだ。
文/斎藤好一(元DIME編集長)