目次
オーディオを納得のサウンドで楽しむには、いくつかの気にするべき点があります。インピーダンス(Ω)も大切な要素の一つです。耳に馴染みがない言葉かも知れませんが、音質に与える影響が大きいインピーダンスについて、理解を深めておきましょう。
インピーダンスとは何?
より良いサウンドを手に入れるために、スピーカー選びを慎重に行う人は多いものです。種類によって、スピーカーとしての働きも異なります。
スピーカーのタイプを表すものに、その数値を『Ω(オーム)』で示す『インピーダンス』があります。カタログや商品紹介サイトでスペックを調べていると、目にしたことがあるでしょう。
このインピーダンスについては、やや専門的に思え、分かりにくいと感じられる部分がありますよね。インピーダンスとは、どのようなものなのでしょうか。
スピーカー内部の電気抵抗を指す
スピーカーにおけるインピーダンスとは、『電気信号がスピーカー内部の回路を流れるときの電気抵抗』のことです。そう説明しても、まだ分かりにくい所があります。
インピーダンスの数値は、高いほど抵抗が大きく、反対に低ければ小さな抵抗になります。これを言い替えると、低いと電気信号が流れやすくなり、高ければ流れにくくなるのです。
音質・音量との関係性
インピーダンスは、スピーカー選びに大切な要素です。そのため、音質と関係があるように考える人もいます。しかし、インピーダンスと音質には関連性はありません。
Ω(オーム)の高低は、高音域が美しい・重低音に迫力があることとは無関係です。それよりも、音量の大小と関係してくるものなのです。
アンプが同じだとすると、インピーダンスの低いスピーカーだと大きな音量が出やすくなります。なぜなら、電気信号の抵抗が小さいので、信号が流れやすくなるからです。
その結果、大きなパワーを獲得できます。そこで得たパワーによって、音量が大きくなるという仕組みです。
インピーダンスを選ぶ際の基準
インピーダンスは、電気信号に対する抵抗、つまり電気信号の流れやすさを示す数値です。前述の通り、インピーダンスは音質には直接影響を与えません。
しかし、スピーカー選びでインピーダンスを考慮しなくてよいということにはなりません。なぜスピーカー選びにインピーダンスの確認が大切なのでしょうか。
ステレオとサラウンドの違いは?おさえておくべき性能の項目は?意外と知らないスピーカーの選び方
手持ちのアンプに対応するか
スピーカー選びの際に注意したいことは、アンプとの兼ね合いです。インピーダンスの数値は、スピーカーだけでなくアンプにも記載されています。
スピーカーとアンプ、それぞれのインピーダンス値を把握することが大切です。アンプが既にある、今までのアンプを使用するという場合は、新たなスピーカーが対応するかしっかり確認しましょう。
後述しますが、アンプとスピーカーそれぞれのインピーダンス値の組み合わせによって、スピーカーが果たす役割が違ってきます。そのため、お互いの数値を理解しておくことが重要になるのです。
数値が低い場合のメリット
インピーダンスが低いスピーカーでは、どのようなメリットがあるのでしょうか?最大の利点は、アンプの出力が弱い場合でも、大きな音量が出せる点にあります。
例えば、カーオーディオなどでは小型で設計することが求められます。併せて、インピーダンス・出力ともに低いアンプを使用するケースが多くなるでしょう。
そのアンプにインピーダンスの低いスピーカーをマッチングさせることによって、アンプの性能と比較して、大きな音量を出すことを可能にします。
先述した、『アンプのインピーダンス値との組み合わせでスピーカーの果たす役割が変わる』とは、このような意味です。
数値が高い場合のメリット
一方で、インピーダンスが高いスピーカーのメリットを考察します。その代表的な利点は、限られた電力において、たくさんのスピーカーで同時に音を鳴らす場合などに有効な点でしょう。
盆踊りや屋外でのイベントなどをイメージしてください。ふんだんに電力を使用することが難しい環境で、しかしたくさんのスピーカーを設置しなければなりません。
インピーダンスが高いということは、抵抗力が大きいことを指します。それは、インピーダンス値の高いスピーカーには抵抗力が働き、少しの電力しか流れないことになるのです。
従って、電力が限られた環境で、貴重な電力をムダにすることなく、多くのスピーカーに電流を行き渡らすことができます。
測定・特性分析を自分でするのは難しい?
インピーダンス値は、スピーカーのカタログなどに記載されています。しかし、中には自分で測定したり、その特性分析をしたいと考える人もいます。その方法とは、どのようなものでしょうか。
段階を踏んで学んでいこう
インピーダンスは、測定器によって計ります。インピーダンスは複素量といわれ、二つの量を測定する必要があるため、直列モードと並列モードそれぞれの回路測定をしなければなりません。
また、その測定方法や特性の分析方法はいくつかあります。代表的なインピーダンスの測定方法には、ブリッジ法、共振法、Ⅰ‐Ⅴ法、反射係数法、自動平衡ブリッジ法、そしてRF I-V法などがあげられます。
インピーダンスの測定に関しては、学術書も数多く出版されています。専門的な分野ですが、興味がある人は、段階を踏んで一つ一つ学んでいきましょう。
特性分析よりもつなぎ方から覚えて
特性分析などを行うための理論や技術は、蓄えておいてムダにはなりません。しかし、まずはつなぎ方から覚えることが肝要です。
スピーカーとアンプの接続によく用いられるものが、ハイインピーダンス方式とローインピーダンス方式です。
『ローインピーダンス接続』では、スピーカーのインピーダンスはアンプの最大インピーダンス以上にします。そして、複数のスピーカーを接続する場合、トラブル発生への注意が必要です。
なぜなら、抵抗力が小さいため、一部に電流が行かなくなるとその分が他方に流れ込み、許容量オーバーとなったスピーカーが破損する恐れなどがあるからです。
『ハイインピーダンス接続』だと、たくさんのスピーカー全てを並列につないでも、事故の可能性は極めて低いと言えます。それが、イベントなどの環境設定において重宝される理由です。
文/編集部