日本における人手不足への対策として、外国人材の就労を促進すべく、2019年4月より新たな在留資格「特定技能」が始まった。
これは、建設業、宿泊業、介護、外食業など14業種での「相当程度の知識または経験を必要とする技能」と認められる業務に従事する「特定技能1号」と、建設業、造船・船用工業の2つの業種で家族滞在や在留期間更新が可能な「特定技能2号」からなる在留資格だ。
そこで今回、外国人雇用の実態を明らかにすることを目的にした株式会社パーソル総合研究所による「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」の結果を紹介していきたい。
賃金格差と離職
外国人と日本人の賃金格差が明らかに。正社員の場合、日本人と同じ職種であっても、外国人の平均月収は4.6万円安い。技能実習生の場合、同じ職務であっても日本人より低水準の給与と回答した雇用主は46.7%にのぼる。
日本人正社員の離職率に比べて外国人正社員の離職率が高いか低いかで企業群を分けた場合、外国人の離職率の方が高い企業群では、日本人より外国人の方が平均月収で10.6万円安かった。
一方、低い企業群では外国人の方が平均月収で1.9万円の安さにとどまった(全体平均は月給4.6万円の格差)。
外国人雇用の意向
「すでに外国人を雇用している企業」では、外国人雇用をさらに拡大する意向が約7割。雇用形態別にみると、外国人を正社員で雇用する企業で73.7%、パート・アルバイトで雇用する企業で67.4%、技能実習生で雇用する企業で71.9%が拡大する意向。
人材確保のための18の対策を選択肢として挙げ、企業の優先度の割合が高かった選択順にランキング化すると、「すでに外国人を雇用している企業」では41.2%もの企業が「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、ランキング1位となった。
一方、「現在は外国人を雇用しておらず、今後外国人雇用を検討している段階の企業」では9.2%の企業だけが「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、12位にとどまった。
特定技能の雇用
2019年4月の改正入管法施行により、14業種では新しい在留資格「特定技能」で外国人を雇用できるようになった。
しかし、特定技能の雇用について14業種に属する企業に尋ねる調査が行われたところ、「検討していない」45.2%、「よく知らない」18.4%となり、計63.6%の企業が消極的だった。
すでに特定技能で雇用しているのは2.4%。検討しているのは34.0%にとどまる。
分析コメント
■ポイント(1)~外国人雇用の二極化が進み、出遅れている企業は危機感を持つべき~
外国人雇用の優先度を高く考えている企業と、そうではない企業の二極化が進んでいる。
これまで人材の送り出し国であったアジアの国でも高齢化社会に向かう国が増える中、人材確保は年々難しくなっている。介護人材やIT人材を中心としたグローバルな人材獲得競争が激化する中、出遅れている企業は危機感を持つべきだろう。
外国人雇用に取り組まなければ採用や人材定着のノウハウが蓄積されず、将来的に外国人材が必要になった時には、自社が望むレベルの人材を確保できない可能性が高い。すぐに採用まで至らなくとも、手遅れになる前に早く動きだすべきだろう。
■ポイント(2)~外国人活躍のために、賃金格差を解消し、組織的に働きやすい環境を作るべき~
外国人と日本人との賃金格差が明らかとなった。「同じ職種の正社員」という条件での比較であるため、勤続年数などによる差の可能性もあるが、年功賃金的な従来の日本型雇用の枠組みに外国人を組み入れようとすると、せっかく採用した外国人材の離職を招く懸念がある。
賃金に限らず、外国人の働きやすい環境を整備することも同時に必要だ。外国人の離職率が低い企業群(※)では、「外国人材の強みを生かせる部署の配属」や「コミュニケーション機会の創出」、「外国人用のマニュアル・業務資料の準備」などを実施している割合が高かった。
既存の職場環境に外国人を当てはめるのではなく、職場の方を外国人に合わせて変化させている企業が成功している。外国人を単なる現場の人手補強として考えるのではなく、会社や組織ぐるみで働く環境を再構築していくことが求められる。
※正社員の離職率について、日本人と比較する形式で聴取。その回答を元に群を分割した。
以上、コメントは調査担当者(リサーチ部研究員・高月和子)
出典元:パーソルHD
構成/こじへい