先月、Twitterでこんなことが話題になった。
河野太郎外務大臣(当時)の腕時計である。
「これは金時計ではないか」という投稿に対し、河野氏自らが「ASEANの式典でもらった竹製腕時計だ」と返答した。それをきっかけに、竹や木でできた腕時計がにわかに注目されることとなった。
そしてこれは詳しく後述するが、河野氏の腕時計は特別高価なものではなく、むしろ「庶民的」とも表現できる価格の製品だ。気軽に購入できるのが、竹製腕時計の魅力でもある。
5000円でお釣りが返ってくる!?
竹製・木製腕時計の利点はふたつある。
まずひとつは、金属アレルギーを持っている人にも使いやすいという点。メタルのバンドを長時間手首に回しているうちに、皮膚が腫れ上がってしまったという話はよく聞く。河野氏も金属製の腕時計ではアトピーを発症してしまうそうだ。それを気にせず日常的に装着できるという点は、確かにありがたい。
もうひとつは、金属製腕時計に比べて、全体的に価格が安いという点だ。
河野氏の腕時計はフィリピンのKAWAYANの製品ではないかと言われている。このKAWAYANの公式サイトを見てみよう。
上の画像の時計は、どれも2299ペソ。日本円で約4760円である。5000円もしない腕時計というと安物扱いされてしまいそうだが、KAWAYANの製品ラインアップを見てみると単なる「安物」とは到底思えない。カラーやデザインが案外豊富で、つい何本も注文してしまいそうなくらいだ。
そしてよく見れば、ムーブメントは日本のMIYOTA製である。腕時計の機能部分の品質は、ムーブメントが決めると言っても過言ではない。安過ぎるのでは? と感じるKAWAYANの腕時計だが、その品質は保証されているようだ。
竹製腕時計と林業
東南アジアではここ数年で、竹製や木製の腕時計を製造するメーカーが増えた。
それには社会的意義も関係している。日本では林業の衰退が叫ばれていて、山林を管理する人がいなくなる問題が発生しているが、それは東南アジアも同じだ。特に竹は繁殖力が極めて高く、放っておけばあっという間に竹林が広がっていく。
竹は保水力に乏しい植物だ。そのため竹林の斜面は土砂崩れを起こしやすいとされる。だが、現代において素材としての竹が利用される機会は多くない。
ほかの木材に関しても、山林を管理している限りは必ず適度な伐採を行わなければならない。人間の髪の毛のようなもので、定期的な散髪が必要なのだ。
ASEANの雄インドネシアにも、木製腕時計を取り扱うメーカーが存在する。ここではMATOAというメーカーを取り上げよう。
このメーカーの製品は、先述のKAWAYANよりも高価だ。とは言っても大半は120万ルピア(約9200円)前後のもので、大人の小遣いの範囲で1本くらいは購入できる。
MATOAが凄いのは、Apple Watch用のバンドも製造しているということだ。こちらも木製のものとなっている。