〝パワポ〟職人が評価されない理由
会社の取り組みだけでなく、働く個人の作業も「Why」が重要です。目的を明確にしてから作業に取り組まないと、絶対に成果は出ません。全国各地でパワポ資料の作成講座を開催していますが、多くの受講者は様々な機能を習得しようとしています。中には、作成してきた豪華な資料を自慢してくる強者もいます。そのような〝パワポ〟職人に、「その資料でどれくらいのビジネスを生み出したのですか?」と聞くと、はっきりした回答が返ってこないケースがよくあります。資料作成の目的は「相手を思い通りに動かすこと」ですから、結果が出ているかどうかを振りかえらなければなりません。そうでなければ「その〝パワポがすごい〟」のかどうかの判断がつかないはずです。
正しい〝パワポ〟戦略
どうやって作業を終わらせるかを考える前に、なぜこの作業をやっているのかをはっきりさせて〝腹落ち〟することが必要です。そうしないと作業をしていること自体が目的となってしまい、本来の目的が達成できません。決して、文字いっぱいのPowerPointの資料を夜遅くまで作って、達成感を得てはいけないのです。
今求められているのは、成果を出したことによる達成感です。労働時間の長さや作業時間で、達成感を得てはいけません。例えば提案資料であれば、その提案を相手が受け入れてくれれば成功です。相手がどういう人で、どうすれば決めてくれるのかといった戦略を練ることで、目標達成を近づけます。水が飲みたい相手にホットコーヒーを出してはいけないのと同様に、相手の趣味嗜好を理解しないといけません。800名以上の意思決定者にヒアリングしましたが、コンパクトでわかりやすい資料を好み、重要なことに縛ってある資料が自身の意思決定に影響を与えたそうです。
例えば、スライドの文字数を105文字以内にして重要な点に絞り、3色以内のシンプルなデザインにするだけで、案件の成約率は上がります。クライアント企業8社で2か月に渡り、このルールを浸透させたら同じ提案内容にも関わらず、成約率は平均で22%アップしました。
目的を明確にして、それにつながる行動を見極めて実行することこそが〝最短距離の仕事術〟なのです
文/越川 慎司
株式会社クロスリバー代表。株式会社キャスター執行役員。週休3日でクライアント企業16万人の働き方をスイッチ中。新著「謝罪の極意 頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド」が好評発売中。