先代のウイークポイントだった乗り心地も劇的に改善され、終始フラットで心地良い乗り心地を示してくれる。後席の段差などによる強い突き上げ感ももはやないに等しい。
それでいて、カーブでの姿勢変化、ロールは最小限。ストローク感たっぷりの乗り味を示すN BOXのカスタムターボと比較すれば、圧倒的な安定感と言える。合わせて、クルージング中の静かさ、特にロードノイズの遮断は見事というしかないほどだ。新型N WGNカスタムターボよりカーブでグラグラし、クルージング中に騒々しく感じるコンパクトカーをボクは何台も知っている・・・。
新型N WGN全グレードに備わるCVTのダウンシフト制御も優秀だった。これは約40km/h以上で作動するもので、ブレーキングによってギアが落ちるような減速制御を行ってくれるのだ。坂道、山道、コーナー脱出後の再加速、高速旋回で特に威力を発揮し、ブレーキを2回踏めば、2段ギアが落ちるような賢い減速も制御可能だから、安心感、走りやすさに直結する。もちろん、カスタムターボならパドルシフトを操ることもできる。
高速直進安定性も見事だ。ステアリングのセンター付近の締まり感もあって、制限速度上限でもビシッと直進。基本的な乗り心地、体重でサポートする、シートの上級車さながらのかけ心地の良さ、ACCの性能の高さもあって、長距離、長時間のドライブもストレスフリーのはずである(強風時の高速横風安定性については、ハイトな車高だけにそれなりにあおられる)。
そんな、まさに下克上的な走行性能を発揮する新型N BOXカスタムターボだが、実燃費も文句なく、高速70%、市街地30%、エアコン使用、ECON ONで17.6km/Lを記録。同行程のNAの20.6km/Lとはいかないものの、ハイブリッドカーに迫る数値なのである。
高速道路などまず走らない・・・というなら、標準車、カスタムともにトルキーでスムーズなNAエンジンで不足はないが、高速走行、長距離ドライブをする機会が多いというなら、あるいは一家に一台のファーストカーとして使うのであれば、新型N WGNのカスタムターボは、下手なコンパクトカーをしのぐ、走りやすく、使いやすく、快適で、先進安全支援機能も充実した賢者の選択肢になりうると思えた。
ちなみに、カスタムLターボ ホンダセンシングの価格は、標準車の一番人気のLホンダセンシング(NA)の32万4000円高、Lターボホンダセンシングの16万2000円高、N-BOXカスタムG・L ターボの23万2200円安となる・・・(2019年9月現在)。
ホンダN WGN
https://www.honda.co.jp/N-WGN/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。