ETFと先物取引とで値動きが逆向きになるように設計することで投資信託の値動きを緩やかに
単純にETFと先物取引に投資する比率を決めればよいというわけではない。ETFと先物取引とで、できるだけ値動きが逆の関係となる仕組みにしなければならない。
ウルトラバランス 世界株式で投資しているETFは「iShares Edge MSCIミニマムボラティリティグローバル・ETF」という世界各国の株式に投資するETF。このETFは世界各国の株式から、相対的な値動きが小さくてかつ異なる値動きをする可能性がある銘柄を選び投資している。
一方で先物取引の投資対象は、米国国債先物とフランス国債先物が70%ずつ。日本国債先物と米国金先物が35%ずつで計210%。
一般的に株式と債券は片方の値段が上がればもう片方の値段が下がると言われている。それぞれの値動きの大きさは完全連動しているわけではないが、ある程度は逆に動くので、ETFの価格が下がった場合には、先物の価格が上がる。互いの値動きのリスクヘッジになり、値動きが緩やかになる。
また「金」は「有事の金」と言われているように、金融市場が混乱に陥って価格が下落した際には金融商品から引き揚げた資金の避難先として「金」が選ばれやすいという傾向がある。そのため金先物も債券先物と同じようにリスクヘッジになっている。
ウルトラバランス 世界株式に1999年12月末から2019年6月末まで毎月12,000円ずつ投資すると積み立て金額282万円に対し、約2,005万円の評価額になるという。今から20年後にこのパフォーマンスが出るか定かではないが、投資効率の高さが理解できる。
引用元:ウルトラバランス 世界株式の商品内容説明資料/アストマックス投信投資顧問
ウルトラバランス 世界株式が投資しているETFのリスクとリターンの関係を示した図。世界株式最小分散と表示されているのが投資先のETFのリターン。新興国株式よりリスクの割りに期待できるリターンが大きいことがわかる。
引用元:同上
金融市場の大きな混乱となったリーマンショック時の値動き。水色のラインが金先物価格で国債や株式よりも価格回復が早いことがわかる。価格が連動して下落することもあるが、回復が早い分だけ他の金融商品価格の下落に対するリスクヘッジになっている。
引用元:同上
先物取引を活用した投資信託の特徴は2つ
1)投資する金額の一部を先物取引の証拠金にして実際の投資額より大きな投資とすることで投資効率を上げている
2)現物株式やETFと先物取引とで値動きが逆向きになるように設計し投資信託の値動きが緩やかになっている
リスクヘッジの仕組みがあるものの先物取引に投資している分だけ他の投資信託よりもリスクが大きいといえる。またウルトラバランス 世界株式の場合は為替の値動きに対するリスクヘッジがない。
投資しようと思った資金のすべてをつぎ込むのでなく、分散投資を心掛けたい。
文/久我吉史