高齢者人口の増加と共に、高齢者の四輪免許保有者が増加。それに伴い、アクセルとブレーキペダルの踏み間違いによる事故が社会問題となっている。
加齢が運転能力の低下に影響すると考えられ、その対策が急がれる。
アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故は年齢に関係があるの?
高齢者の四輪免許保有者にアクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故が多いとされるが、その実態はどうなっているのだろうか?
75歳以上の高齢者による踏み間違い事故の比率が高い
交通事故総合分析センターの調査によると、65歳以上で四輪免許を保有する高齢ドライバーの数は、平成18年の9401人に対して、平成28年には1万7063人と約2倍に増加している。
また、アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故が事故全体に対して占める割合を調べたところ、75歳以上の高齢ドライバーによるアクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故が事故全体に対して占める割合は3%を超え、他の年齢層に比べて事故の数が多くなっている。
※交通事故総合分析センター イタルダインフォメーションNo.124より引用
【参考】交通事故総合分析センター
アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故の件数
特殊車とミニカーを除く四輪車が第1当事者になった、アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故の発生件数を、64歳以下の非高齢者と65歳以上の高齢者にわけて交通事故総合分析センターが調査した。その結果、事故発生件数は双方ともに単路が最も多くなっている。そして、高齢者層では駐車場など一般交通の場所で事故件数の増加が顕著だ。
※交通事故総合分析センター イタルダインフォメーションNo.124より引用
アクセルとブレーキの踏み間違い事故は初心者の多い若者も起こしやすい
高齢者に多いとされるアクセルとブレーキの踏み間違い事故だが、24歳以下の四輪免許保有者が第1当事者になる事故が、25〜64歳の年齢層に比べて多いことも判明している。
踏み間違いはマニュアル車よりオートマ車が多い?
オートマチック車はアクセルペダルが右側に、ブレーキペダルが左側に配置されており、その踏み替えで操作する。そして、多くのドライバーは右足だけで操作を行っている。
一方、マニュアル車はクラッチペダルが加わるため、左足の操作も必須になる。
アクセルとブレーキの踏み間違い事故の多くは、ブレーキペダルを踏んだつもりがアクセルペダルを踏んでしまい加速、慌ててパニックにおちいりさらにアクセルペダルを強く踏み込んでしまうケースが多い。
マニュアル車の場合は左足によるクラッチ操作が加わるため、仮にアクセルペダルを強く踏み込んだとしても、クラッチペダルを離さなければ、車両は急加速しない。
アクセルペダル踏み間違い解消装置とは?
高齢者、特に男性高齢ドライバーは両足大腿部を開いたり、右足先を右に傾けてブレーキペダルを踏むケースが多数見られる。加齢と共にアクセルペダルに近い位置でブレーキペダルを踏む傾向があるようだ。
踏み間違いなどしないと思っていても、加齢による体のメカニズムの変化が踏み間違い事故をもたらしている可能性がある以上、車両側で事故を防ぐ対策も必要になってくる。そこで注目されているのが「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」だ。
【参考】国土交通省報道発表資料
国土交通省調べによると、ペダル踏み間違い時加速抑制装置(誤発進抑制機能)の新車乗用車への装着は2012年頃からから始まり、2017年には装着率が65.2%まで増加している。
同省では2020年までに自動ブレーキの新車乗用車搭載率を9割以上にする目標を掲げている。
【参考】国土交通省「高齢運転者による交通事故防止対策について(安全運転サポート車の普及啓発)」
一方、中古車両など、少し前に生産・販売された車両の多くはペダル踏み間違い時加速抑制装置を装着していない。そこで、後付けできるペダル踏み間違い時加速抑システムが注目されている。
後付けできるペダル踏み間違い時加速抑制装置
2019年6月11日に東京都の小池百合子知事が、ペダル踏み間違い時加速抑制装置について、高齢者向けに取り付け費用の9割程度を補助する方針を打ち出した。
また、国土交通省の石井大臣が2019年6月7日、自動車メーカーに後付けでの安全運転支援装置の開発を要請するなど、後付けできるペダル踏み間違い時加速抑制装置の設置をうながす動きが活発化している。
これに前後して、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の後付け製品が、自動車メーカーや部品メーカーから各種発売されている。
トヨタのアクセルペダル踏み間違い解消装置と車種
トヨタは後付けのペダル踏み間違い時加速抑制装置を用意している。
【参考】踏み間違い加速抑制システム
基本構成は超音波センサー、コントローラー、表示器。
前後バンパーに超音波センサーを取り付けて、
コントローラーを設置して配線する。表示器は運転席から見える場所に設置する。
車両前後にある超音波センサーが、前後約3m以内に壁など障害物があると検知して、ブザー音、ランプ表示で注意喚起する。
それでもブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを強く踏み込んだら、加速を制御する。
後退時には障害物を検知しなくても約5km/h以上でアクセルを踏むと加速を抑える。
踏み間違い時加速抑制装置は急加速を抑制するが、自動停止機能ではないので、ドライバーが必ずブレーキペダルを踏んで停止する必要がある。
踏み間違い時加速抑制装置を取り付けできる対象のトヨタ車は、プリウスのほか、アクア、ポルテ、プレミオなど12車種(約458万台相当)になる。
【参考】TOYOTA、後付けの踏み間違い加速抑制システム 対象車種拡大
取り付け工賃の例を挙げよう。平成25年式のプリウスSに踏み間違い加速抑制システムを取り付ける場合、仙台トヨペットでは総額8万5558円となるようだ。
本体・付属品の価格を引いた3万478円が、取り付け工賃となる。
【参考】仙台トヨペット
アクセルペダル踏み間違い解消装置 オートバックスの「ペダルの見張り番」
後付けできるペダル踏み間違い時加速抑制装置システムは、自動車メーカーの純正品以外にも販売されている。
例えば、オートバックスで販売されているのが「ペダルの見張り番」だ。
【参考】【開発秘話】年間販売目標を5日で達成したオートバックスの急発進防止装置『ペダルの見張り番』
トヨタ、レクサス、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スバル、ダイハツ、スズキと、国産メーカーの幅広い車種に対応、全国のオートバックス/スーパーオートバックス店舗で販売・取り付け工事が行われている。
※データは2019年8月上旬時点での編集部調べ。
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文/中馬幹弘