30回以上訪問したからこそわかるインドの主要都市紹介「デリー」編
今年の7月上旬、「カレーハウスCoCo壱番屋が本場インドに進出」というニュースが話題になった。その後、インドにおいて「セブンイレブンが3〜5年以内に500店舗」「住友不動産がオフィスビルに700億円投資」「ユニクロは今年10月に初出店」、そして「JCBカードの発行開始」と身近なニュースが続いている。
さすがに仕事でも話題に上るので「これまでのイメージだけでインドを理解していると出遅れそう。国をひとくくりでなく、どんな都市があるのか具体的に知りたい」という声をよく聞く。ビジネスにも役立ち小ネタにもなるインドの都市について、私が見て体験したことも入れて紹介しよう。今回は、首都デリー(正式名はデリー連邦直轄地)をピックアップ。
首都デリーを中心とした首都圏の人口は2,850万人*で東京に次ぐ世界2位だ。デリーから空路でかかる時間は季節により偏西風の関係で変動があるが、日本まで直行便で約8時間のインド北部に位置している。シンガポールまでは6時間、香港5時間半、ドバイ3時間半、ロンドン9時間半かかり、アメリカ大陸以外の各方面へは満遍なく移動しやすい。
デリーは12世紀に首都と定められ、ムガール帝国の支配で一時は首都ではなくなった。その後再び首都となり、現在は世界第2位の総人口13億人以上という大国インドの中心だ。
グルガオンやノイダの2つの近隣都市を巻き込み、大きな経済圏を持つ首都圏を形成している。日本企業の進出も盛んで、3都市を合わせると日系企業の拠点が860ある(インド大使館:インド進出日系企業リスト-2018)。大手ではインドの自動車シェアを50%以上持つスズキや、社として海外で初の取締役会をデリーで開催した日立製作所を始め、ソニー、パナソニック、ダイキン、NTTデータ、商社系などがインドの本部オフィスを首都圏に構えている。
*国連のWorld’s Cities in 2018
https://www.un.org/en/events/citiesday/assets/pdf/the_worlds_cities_in_2018_data_booklet.pdf
インドの首都デリーは、世界の未来を占うグローバルシティ
デリーに空路で近づくと、窓から見える緑の多さに驚く。実際に市街にも公園が多く、例えば各国大使館のある官庁街近辺の道路には多くの木々が配され、静かで落ち着いた街並みが造られている。
そして、近代的でいわゆるグローバルシティの国際空港へと降り立つ。エレベーターで下ると大きく開けた明るい入国審査場が待っている。「ウェルカム!」と心から歓待されている気分になる、オープンで美しいエリアだ。左の壁にはインド独自の手のジェスチャーを模したオブジェを配し、機能的だが自然光にあふれて落ちついた空間が広がる。
デリーのインディラ・ガンジー国際空港は、インドの伝統と未来を象徴する。年間乗降者数は、約7,000万人(2018年)で世界6番目。2018年の英国のコンサルティング会社Skytraxの調査では、インド・中央アジア地区で最高の空港と称された。(写真:Bharatahs)
デリーとはどのような都市なのか? デリーで生まれ育ち、現在もそこで働く知人に問いかけてみた。「インドの首都であるだけではない、デリーは唯一無二のグローバルシティだ」とマーケティング・PR会社グーテンベルグのハジーブ・シンCEOは言う。「インドは他国とも陸続きで、様々な宗教や文化が出入りしてきた。デリーは英国支配の時代の首都だったために世界への窓口となり、外部からの影響を受ける先鞭となった」。例えば三権分立といった国家統治制度は英国に習い、独立後に民主化を推進し、近年は世界各国との対話に積極的に行われ、インドのグローバルな影響力が増してきた。このように、デリーを起点に国全体が変化してきた。
「デリーは文化、社会、スピリチュアルな分野で古くからの伝統的なインドを現代に受け継いできた。歴史を経る過程で、それらは変化を余儀無くされてきたが、その積み重ねを含めて自分たちのアイデンティティとしてきた。今後、不透明で予測のつかない未来においても、デリーは堂々と変化の荒波を切り抜けて行くだろう」。超大国インドの首都として、揺るぎない。海外での経験も豊富なシンさんの説明には、説得力がある。
デリーにある3つの世界遺産は歴史の証であるだけでなく、未来のデリーの歴史も見守っていくのだろう。
デリー都心に佇む世界遺産『フマユーン廟』。都会にいながらも古からの生命力に触れられる贅沢がある、地元でも人気の場所だ。夕焼けが特に美しい。© moonlink Inc.