泊まった数は300軒超！愛好家がおすすめする「いつか泊まりたいボロ宿」5選

「最上屋旅館」（山形県酒田市）

上明戸さん「大正末期の木造三階建て。ネットで画像を見てからどうしても泊まりたいと思い続けていた宿です。北前船で栄えた当時から市内の中心街に建つ商人宿で、館内は雰囲気たっぷり。凝った造りの欄間や廊下のあちこちにも風情があります。ご主人に頼んで三階の二間続きの四畳半に泊まらせてもらいました。刺身や鍋が付いた夕食は豪華で、朝食もボリューム満点。特に地元産のお米が美味く、他の宿泊客もお替わりをしていました」

昭和初期のままの造りという屋根裏部屋のような二間続きの四畳半

かなり手の込んだしつらえの欄間の細工

【基本情報】
住所：山形県酒田市中町２丁目2-16
電話：0234-22-7533
アクセス：中町の繁華街にあり酒田駅から車で５分。　山形自動車道酒田ICからは6.5km

「旭屋旅館」（鹿児島県井出市）

上明戸さん「駅から車で20分なのに携帯電話は通じず、トイレはくみ取り式。おまけに、館内は散らかり、部屋の障子が破れているなど正真正銘の“ボロ宿”です。しかし、周辺は山に囲まれ、窓の外からは聞こえるのは渓流のせせらぎだけ。そんな、ひっそりとした佇まいが気に入りました。何より､白木河内温泉と名付けられた自家源泉のかけ流しが良質で、少し硫黄の匂いのするお湯が肌に吸い付いてきます。そして料理も値段からすれば期待以上です」

浴槽の底から透き通ったお湯が自噴する源泉かけ流し

２食付き５千円で夕食がこのボリューム

【基本情報】
住所：鹿児島県出水市上大川内5002
電話：0996-68-2812
アクセス：JR出水駅より車でおよそ20分.

「井出野屋旅館」（長野県佐久市）

上明戸さん「市川崑監督の金田一シリーズには、嬉しくなるような古い宿がいくつも出て来ます。そのうちのひとつが、映画『犬神家の一族』（76年）で金田一耕助が逗留する那須ホテルのロケ地、井出野屋旅館です。宿のある旧中山道・望月宿は宿場町として有名ですが、戦前までは花町として繁栄し、ここも芸娘を置いていたそうです。どうりで外観をはじめ館内のあちこちに洒脱な雰囲気が感じられるのも納得です。贅沢な気分にしてくれる宿です。」

創業85年、大正の面影をそのまま残す貴重な建物

木村拓哉主演の「君を忘れない」（95年）のロケ地でもあった

部屋出しの夕食は地元名産の鯉料理がメイン

【基本情報】
住所：長野県佐久市望月254
電話：0267-53-2016
アクセス：自動車なら、佐久ICより諏訪方面の道路案内板にて約25分。公共交通機関なら、佐久平駅より佐久市内巡回バスないしは千曲バスで30分、望月宿下車徒歩１分。
公式サイト

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上明戸さんは、こうした歴史ある「ボロ宿」は、廃業の危機を迎えているところが少なくないとも話す。存続を応援するためにも、旅先で心惹かれる「ボロ宿」を見つけたら、積極的に泊まってみるのも一興だろう。

上明戸聡さん プロフィール
1960年、青森県十和田市生まれ。フリーライターとして、ビジネス系専門誌を中心に執筆活動中。そのかたわら、貧乏くさいもの、古いものが好きな偏屈な性格ゆえか、いつの頃からかボロ宿に惹かれて日本各地を歩き回るように。旅のリポートを内容とするブログ「日本ボロ宿紀行」が2011年と2013年に書籍化（後に文庫化）、2019年にはテレビ東京でドラマ化される。

取材／鈴木拓也（フリーライター兼ボードゲーム制作者）