3.サラダ自動販売機
そして今シカゴで最も勢力を拡大しているのが、サラダの自動販売機である「Farmer’s Refrigerator」。
1週間に1,600kmもの距離を走行するドライバーであった創立者Luke Saundersが、「いつでも、どこでも購入できる新鮮でヘルシーな料理は無いのだろうか?」と考えたことがサラダ自動販売機の始まりだ。
サラダはお洒落なジャーに入っており、このまま食卓に出しても問題ない。現在はサラダだけでなく、ヨーグルトやスーパーフードを使った料理などバラエティ豊かなヘルシーフードが販売されている。
自動販売機で販売されている商品の価格はおよそ7ドル。アメリカで人気No.1のサラダ専門店「Sweetgreen」をはじめとするアメリカで急増中のサラダ専門店と比較すると、その価格は圧倒的に安い。
自動販売機に入っているサラダは新鮮さに欠けるのではないか?という声もでてきそうだが、その心配は必要ない。
サラダ自動販売機は、サラダを作っている厨房とデジタル接続されており、販売データが毎日正確に厨房に届けられる。さらにアルゴリズムによって、次の日にどれだけのサラダが必要かも予測できる。
それらのデータを元に、キッチンで必要な野菜を切り、サラダボウルを作っていくため、無駄な食材をなくすことができる。
また、自動販売機内のサラダは毎日新鮮なものに変えられており、一日の終わりに残ったサラダは寄付されると言う。
「Farmer’s Refrigerator」のターゲットは忙しくランチに十分に時間をかけることができないビジネスパーソン。
新鮮な野菜やフルーツが不足しているビジネスパーソンが、短時間で安くヘルシーな料理を食べられるよう、駅やショッピングセンター、空港、病院などに設置されている
現在は、シカゴのみならずアメリカの各都市に進出しており、その数約170か所。今後も拡大が期待される。
今後飲食店の提供価値は二極化へ
今後テクノロジーが進化していくにつれ、Wow Bowやサラダ自動販売機のようなセルフサービスレストランが増加していくことに違いない。
クオリティの高い料理を提供できる機械が発明されれば、高い人件費が求められる腕の良い料理人は必要なくなるかもしれない。こうなると、機械を調達できる初期資金さえあれば、料理人が存在しない企業でも外食産業に参入することが容易になるかもしれない。
この意味で、飲食店は今後、徹底的にオートメーション化した低価格路線の店と、職人技やホスピタリティを追求したある高価格路線の店の二極化が進むことが予測される。
雰囲気はオシャレだが、味やサービスは普通とったいわゆる「インスタ映え」するような中価格路線の飲食店は、今後淘汰されていくのかもしれない。
文/小松佐保(Foody Style代表)
一橋大学経済学部卒業。
日本&シンガポールのブランドコンサルに勤務した後、独立しアメリカ・ボストンへ。
会社員時代に生活習慣の乱れが原因で体調を崩したこと、ボストニアンの心身共にヘルシーなライフスタイルに感化されたことで、「食×健康」領域に関心を抱くように。
現在はボストンと東京を行き来しながら、食×健康領域に関わる企業のマーケティングコンサルや海外展開サポート、コラムの執筆等を行っている。